スマートとはいえない風貌に「鈍牛」「アーウー」と渾名された訥弁。だが遺した言葉は「環太平洋連帯」「文化の時代」「地域の自主性」等、21世紀の日本を見通していた。青年期から、大蔵官僚として戦後日本の復興に尽くした壮年期、総理大臣の座につくも権力闘争の波に翻弄され壮絶な最期を遂げるまでを描いた長篇小説。
Posted by ブクログ 2014年09月25日
あまり取り上げられることのない第68・69代内閣総理大臣:大平正芳の伝記。とかく、地味で「ア~ウ~宰相」「鈍牛」といった印象ばかりがマスコミによって誇張されていたが、本書には大平正芳の生い立ち、心情、人となり、一貫した政治理念などが著されている。苦学の末、大蔵省官僚、のちに池田勇人氏に請われて政界入...続きを読む
Posted by ブクログ 2013年02月23日
大平正芳は、あーうーしか言わない、パッとしない政治家だと思っていたが、意外に褒める人が多い。この本を読んでみて、成程と思った。大蔵省の官僚出身であるものの、若い頃に貧乏した経験もあり、思考に柔軟性もあり、見識も優れている。政治家らしくない政治家であり、田中角栄と親しかったにもかかわらず、クリーンであ...続きを読む
Posted by ブクログ 2016年04月26日
辻井喬さんは西武グループ総帥である堤清二さんのペンネーム。
大平さんは三木武夫の後に総理大臣になった人で、任期中の参院選途中で亡くなった。
幼い頃からの生い立ちや総理大臣になる前からなった後の苦悩などがよく理解できた。
中国でとても評価されているとは、今の状況を思えば、奇跡に近い。
辻井喬さんの著作...続きを読む
Posted by ブクログ 2013年03月18日
大平総理が東南アジアを歴訪したとき、相手国の代表が総理の人格に感銘を受けたとのコメントを新聞で読んだことがある。「ア~ウ~宰相」「鈍牛」とか、テレビや新聞は明瞭でない物言いばかりを馬鹿にするような記事が多かった。その小さなニュースに国内のマスコミは首相の人となりをちゃんと伝えていないのかな、と思った...続きを読む
Posted by ブクログ 2018年10月14日
堤清二こと辻井喬による伝記風の「小説」である。ノンフィクション作家による「ノンフィクション」ではない。辻井としては、大平の果たした役割についての評価を事実・真実のシーケンスの提示で読者に委ねるという手法ではなく、終戦後に保守・自由主義で日本を再建するという歴史の文脈の中で、たまたま政治家となった「善...続きを読む