本岡類のレビュー一覧
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同窓会に散弾銃を持って乱入してきたキツネの面の男。警察に射殺された男は、同窓会の幹事だった有馬にとって、特別な恩師だった。かつて女生徒を妊娠させた、というトラブルで職を追われた教師が遺した言葉、『埋もれている「ごんぎつねの夢」を広めてくれ』という言葉の謎をめぐって、有馬は新美南吉の、そして先生の人生を辿っていく――。
ということで、童話『ごんぎつね』をめぐるミステリは二転三転しつつ、最後はしみじみとした余韻とともに幕を閉じていきました。前作の『聖乳歯の迷宮』でも思ったのですが、まったく別々のところにあったふたつの点が綺麗に結ばれて、強い余韻が残るのが魅力的であり、印象的でした。ネタバレの問題もあり、すこしぼかした言い方にはなりますが、〈読者〉だけが見る未来に夢や想いを馳せたくなるような、そんな作品でした。 -
Posted by ブクログ
イスラエルで遺跡を発掘していた夏原は、羊皮紙に包まれた子供の歯を発見する。その歯は、西暦1年前後のものと見られ、DNA解析から現代人とも類人猿とも違う事が判明した。歯は神の生まれ変わりのキリストのものとされ、キリスト教徒たちが熱狂した。一方で夏原の同期で日本の科学誌を執筆する小田切は疑問を持つが、同時に八丈島近くの青島で転落死した同じく同期の沼の足取りの謎を追い始める…。
考古学物というか、かなり科学に寄ったミステリ。全く違う2つのストーリーが交わっていくというもので、表紙の(サムネイルとは異なる)島が何故?というところも見どころ。
「聖乳歯」とまた新しい言葉を作ったもので、とにかくそれがとっつきにくさを演出してしまっているのはマイナス。また、表紙がごちゃごちゃして迷宮というくらいだからミステリなのか?それとも遺跡などのめんどくさいやつ?と悩ましいのも。普通に歯のイラストで良かったのではないかと思う。
内容的には、科学系の知識多めの内田康夫という感じで、きっかけでありモチベーションといった部分がわかりやすいし、夏原?小田切?という最初の迷いの部分以外は、人物の描き方もしっかりとしていて良かった。
結局、最終的に解決しない謎というものもあるため、気持ち悪さを感じる人もいるかも知れない。でも、描き下ろしでここまで完成度が高い小説も、そうないんじゃない? -
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ネタバレクラス会に散弾銃を持った狐面の男が乱入してきた! SATによって射殺されたその男の正体は、なんとクラス会を欠席すると返信してきたはずの元担任、長門だった。
長門から「ごんぎつねの夢を広めてくれ」というメッセージを受け取った教え子の有馬は、その真意に迫ろうとする……というお話。
刺激の強い出だしとは打って変わって、全体を通して渋めなお話。文体がやや古いこともあり、想像していたよりは淡々としていたが、最後まで面白く読めた。
現在有名になっている「ごんぎつね」のお話は、鈴木三重吉がかなり手直しをしたもので、新美南吉自身が書いていた結末とは異なるのだそうだ。
私自身は、「ごんぎつね」がむやみに残酷だとは思ったことも、あの結末に不満を持ったこともないので、長門や主人公の有馬にはあんまり共感できなかったんだけど、作中登場する「ごんぎつねの夢」もそんなに悪くはないと思った。ただし作品の完成度は下がって、平凡な童話になるだろうという気もした。
ちょっと面白いなと思ったのは、宮沢賢治と新美南吉の情景描写の比較で、宮沢賢治は描写はすごく凝っているがゆえに読者にも想像力を要求するが新美南吉はシンプルな描写で誰でもスッと心に入ってくる、というくだりだった。
宮沢賢治についての言及はまさに先日まで読んでいた飛浩隆の『零號琴』に感じたことで、SF的なもの、空想世界にしかないものを描こうとするとどうしてもそうなっちゃうんだよな、などと思ったり。 -
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現生人類とは異なるDNAを持つイエス・キリストのものとみられる乳歯の発掘と、東京の南360キロの絶海に浮かぶ鬼伝説のある青ヶ島での一アマチュア考古学徒の変死という2つの出来事についての謎をめぐるミステリ小説。
日本版「ダ・ヴィンチ・コード」と称されるのももっともな、科学や考古学の知見を織り交ぜた良質のミステリ小説だった。キリスト教や青ヶ島などについても勉強になった。結局否定されることにはなったが「神人類」仮説というのも興味深かった。
途中までの盛り上がりに比べ、結末に賛否両論あるようだが、自分は最後の種明かしまで真相にたどりつけず、意表を突かれるラストで面白かった。
ただ、自分は学生時代に考古学を専攻していたのだが、教授が「発見のためには根性でもっと掘れ」といった発言をする(遺物発見のために地層や遺構を無視して掘り進めることは考えにくい)など、ちょっと考古学に対する理解不足は感じた。 -
Posted by ブクログ
誰もが読んだことのある「ごんぎつね」をモチーフに
新美南吉を調べに調べ
愛を持って描かれた作品だと思う
私は宮沢賢治ファンなので
同時代の新美南吉に
がぜん興味が湧いたし
「赤い鳥」についても
そういう経緯があったこと
とても興味深かった
最近
原作と脚本と実写化の問題があったので
改稿することの是非について
とても考えさせられた
鈴木三重吉の改稿がなければ
「ごんぎつね」はもっと違っていたし
ここまで心に残る作品になっていなかったかもしれないし
でもそれは新美南吉にとっては
不本意だったかもしれないし
ファンからしたら
なおさらかもそれない
ifを膨らませた作品という感じ
物語というより
新美南吉に再会させてくれたことに
感謝 -
Posted by ブクログ
ネタバレイスラエル、ナザレ近郊。日本人考古学者・夏原圭介はキリスト生誕のその地で<キリストの乳歯>と思われるものを発掘した。その歯からは、ホモサピエンスとは異なるDNAが検出され、神の存在が証明されたとして宗教ブームが湧きおこる。
一方、東京の青ヶ島では、源為朝の鬼退治伝説を調べていた男が、青ヶ島で調査中に死亡する事故が起こっていて……。
科学と宗教が融合する人類史ミステリ。
イエス・キリストの生誕の地で発見された、ホモサピエンスとは異なる遺伝子を持った乳歯。果たしてそれは本当にキリストの、神の物なのか?
その検証の途中で出てくる説も興味深く、特にキリストはとてつもなく優秀な別人類からの養子ではないのか、というくだりは特に心惹かれました。ブッダの生誕における母親の脇の下から生まれたという話が何らかのイレギュラーな出産をさしているのでは? という説がある様に、聖母マリアの処女懐胎も何らかのメタファーであってもおかしくないのでは、とよぎってしまいました。
考古学ってやっぱりロマン。科学という理論的なものが介入しても、宗教という形ない物が関わっても全く色あせない魅力があります。
「キリストの乳歯」の謎と同時に進行する、全く関係ないように見える東京・青ヶ島での事故との関係など、まさに想像力の飛躍という感じで、科学と宗教を軸に広がっていく神秘的かつロジカルなストーリーはか最後まで飽きずに楽しめました。
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ホモサピエンスとは異なるDNAをもつ別種の人類が関係するミステリはこんなのも。
『隠蔽人類』(鳥飼否宇/光文社文庫)