本岡類のレビュー一覧
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同窓会に散弾銃を持って乱入してきたキツネの面の男。警察に射殺された男は、同窓会の幹事だった有馬にとって、特別な恩師だった。かつて女生徒を妊娠させた、というトラブルで職を追われた教師が遺した言葉、『埋もれている「ごんぎつねの夢」を広めてくれ』という言葉の謎をめぐって、有馬は新美南吉の、そして先生の人生を辿っていく――。
ということで、童話『ごんぎつね』をめぐるミステリは二転三転しつつ、最後はしみじみとした余韻とともに幕を閉じていきました。前作の『聖乳歯の迷宮』でも思ったのですが、まったく別々のところにあったふたつの点が綺麗に結ばれて、強い余韻が残るのが魅力的であり、印象的でした。ネタバレの問 -
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本岡類『聖乳歯の迷宮』文春文庫。
目を引く派手な文字が踊るオーバーカバーに書かれた本の紹介を読むと面白そうなので、読んでみることにした。
文庫書下ろし作品。日本版『ダ・ヴィンチ・コード』と言うよりも、マイクル・コーディの『イエスの遺伝子』の方が近いだろうか。
空想科学サスペンス・歴史ミステリー・エンタメ冒険小説とも言うべき、非常に面白い作品だった。
考古学者の夏原圭介は、イエス・キリスト生誕の地であるイスラエルのナザレの古い教会の下にある洞窟住居跡から『イエスの乳歯』と思われる歯を発掘した。その歯からはホモ・サピエンスとは異なるDNAが検出された。
『イエスの乳歯』発見のニュースは -
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イスラエルで遺跡を発掘していた夏原は、羊皮紙に包まれた子供の歯を発見する。その歯は、西暦1年前後のものと見られ、DNA解析から現代人とも類人猿とも違う事が判明した。歯は神の生まれ変わりのキリストのものとされ、キリスト教徒たちが熱狂した。一方で夏原の同期で日本の科学誌を執筆する小田切は疑問を持つが、同時に八丈島近くの青島で転落死した同じく同期の沼の足取りの謎を追い始める…。
考古学物というか、かなり科学に寄ったミステリ。全く違う2つのストーリーが交わっていくというもので、表紙の(サムネイルとは異なる)島が何故?というところも見どころ。
「聖乳歯」とまた新しい言葉を作ったもので、とにかくそれが -
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ネタバレクラス会に散弾銃を持った狐面の男が乱入してきた! SATによって射殺されたその男の正体は、なんとクラス会を欠席すると返信してきたはずの元担任、長門だった。
長門から「ごんぎつねの夢を広めてくれ」というメッセージを受け取った教え子の有馬は、その真意に迫ろうとする……というお話。
刺激の強い出だしとは打って変わって、全体を通して渋めなお話。文体がやや古いこともあり、想像していたよりは淡々としていたが、最後まで面白く読めた。
現在有名になっている「ごんぎつね」のお話は、鈴木三重吉がかなり手直しをしたもので、新美南吉自身が書いていた結末とは異なるのだそうだ。
私自身は、「ごんぎつね」がむやみに残酷 -
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現生人類とは異なるDNAを持つイエス・キリストのものとみられる乳歯の発掘と、東京の南360キロの絶海に浮かぶ鬼伝説のある青ヶ島での一アマチュア考古学徒の変死という2つの出来事についての謎をめぐるミステリ小説。
日本版「ダ・ヴィンチ・コード」と称されるのももっともな、科学や考古学の知見を織り交ぜた良質のミステリ小説だった。キリスト教や青ヶ島などについても勉強になった。結局否定されることにはなったが「神人類」仮説というのも興味深かった。
途中までの盛り上がりに比べ、結末に賛否両論あるようだが、自分は最後の種明かしまで真相にたどりつけず、意表を突かれるラストで面白かった。
ただ、自分は学生時代に考古 -
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誰もが読んだことのある「ごんぎつね」をモチーフに
新美南吉を調べに調べ
愛を持って描かれた作品だと思う
私は宮沢賢治ファンなので
同時代の新美南吉に
がぜん興味が湧いたし
「赤い鳥」についても
そういう経緯があったこと
とても興味深かった
最近
原作と脚本と実写化の問題があったので
改稿することの是非について
とても考えさせられた
鈴木三重吉の改稿がなければ
「ごんぎつね」はもっと違っていたし
ここまで心に残る作品になっていなかったかもしれないし
でもそれは新美南吉にとっては
不本意だったかもしれないし
ファンからしたら
なおさらかもそれない
ifを膨らませた作品という感じ
物語 -
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本岡類『ごんぎつねの夢』新潮文庫。
先に読んだ『聖乳歯の迷宮』が面白かったので、新刊の本作も読んでみることにした。
新美南吉の童話『ごんぎつね』を題材に展開されるミステリー。新美南吉が書いたとされる、もう一つの『ごんぎつね』の結末。当時は見えなかった過去の真実が現代に蘇る。
なかなか手の混んだミステリーである。児童文学史の謎と人質立て篭もり事件の犯人の大いなる謎とが巧く融合し、読者に思いも寄らぬ結末を見せてくれる。
15年振りに開催された中学校のクラス会。その会場にきつねの面を被り、散弾銃を持った男が乱入し、同窓生を人質に立て籠もる。駆け付けたSATに射殺された男は中学校の恩師、長門 -
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ネタバレイスラエル、ナザレ近郊。日本人考古学者・夏原圭介はキリスト生誕のその地で<キリストの乳歯>と思われるものを発掘した。その歯からは、ホモサピエンスとは異なるDNAが検出され、神の存在が証明されたとして宗教ブームが湧きおこる。
一方、東京の青ヶ島では、源為朝の鬼退治伝説を調べていた男が、青ヶ島で調査中に死亡する事故が起こっていて……。
科学と宗教が融合する人類史ミステリ。
イエス・キリストの生誕の地で発見された、ホモサピエンスとは異なる遺伝子を持った乳歯。果たしてそれは本当にキリストの、神の物なのか?
その検証の途中で出てくる説も興味深く、特にキリストはとてつもなく優秀な別人類からの養子では