あらすじ
15年ぶりのクラス会にキツネ面の男が乱入し、散弾銃を発砲した。SATにより射殺された犯人は、なんと恩師だった。幹事の有馬に託されたメッセージは「ごんぎつねの夢を広めてくれ」。次第に見えてくる恩師の過去、名作「ごんぎつね」にまつわる哀しい史実、消えたかつての同級生の秘密……。探索の果て、周到な計画と謎の原稿に隠された真相が明らかになる。切なさと希望に満ちたミステリー。(解説・伊与原新)
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同窓会に散弾銃を持って乱入してきたキツネの面の男。警察に射殺された男は、同窓会の幹事だった有馬にとって、特別な恩師だった。かつて女生徒を妊娠させた、というトラブルで職を追われた教師が遺した言葉、『埋もれている「ごんぎつねの夢」を広めてくれ』という言葉の謎をめぐって、有馬は新美南吉の、そして先生の人生を辿っていく――。
ということで、童話『ごんぎつね』をめぐるミステリは二転三転しつつ、最後はしみじみとした余韻とともに幕を閉じていきました。前作の『聖乳歯の迷宮』でも思ったのですが、まったく別々のところにあったふたつの点が綺麗に結ばれて、強い余韻が残るのが魅力的であり、印象的でした。ネタバレの問題もあり、すこしぼかした言い方にはなりますが、〈読者〉だけが見る未来に夢や想いを馳せたくなるような、そんな作品でした。
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クラス会に散弾銃を持った狐面の男が乱入してきた! SATによって射殺されたその男の正体は、なんとクラス会を欠席すると返信してきたはずの元担任、長門だった。
長門から「ごんぎつねの夢を広めてくれ」というメッセージを受け取った教え子の有馬は、その真意に迫ろうとする……というお話。
刺激の強い出だしとは打って変わって、全体を通して渋めなお話。文体がやや古いこともあり、想像していたよりは淡々としていたが、最後まで面白く読めた。
現在有名になっている「ごんぎつね」のお話は、鈴木三重吉がかなり手直しをしたもので、新美南吉自身が書いていた結末とは異なるのだそうだ。
私自身は、「ごんぎつね」がむやみに残酷だとは思ったことも、あの結末に不満を持ったこともないので、長門や主人公の有馬にはあんまり共感できなかったんだけど、作中登場する「ごんぎつねの夢」もそんなに悪くはないと思った。ただし作品の完成度は下がって、平凡な童話になるだろうという気もした。
ちょっと面白いなと思ったのは、宮沢賢治と新美南吉の情景描写の比較で、宮沢賢治は描写はすごく凝っているがゆえに読者にも想像力を要求するが新美南吉はシンプルな描写で誰でもスッと心に入ってくる、というくだりだった。
宮沢賢治についての言及はまさに先日まで読んでいた飛浩隆の『零號琴』に感じたことで、SF的なもの、空想世界にしかないものを描こうとするとどうしてもそうなっちゃうんだよな、などと思ったり。
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誰もが読んだことのある「ごんぎつね」をモチーフに
新美南吉を調べに調べ
愛を持って描かれた作品だと思う
私は宮沢賢治ファンなので
同時代の新美南吉に
がぜん興味が湧いたし
「赤い鳥」についても
そういう経緯があったこと
とても興味深かった
最近
原作と脚本と実写化の問題があったので
改稿することの是非について
とても考えさせられた
鈴木三重吉の改稿がなければ
「ごんぎつね」はもっと違っていたし
ここまで心に残る作品になっていなかったかもしれないし
でもそれは新美南吉にとっては
不本意だったかもしれないし
ファンからしたら
なおさらかもそれない
ifを膨らませた作品という感じ
物語というより
新美南吉に再会させてくれたことに
感謝
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ミステリーでありながら、人の心の様々な面が表されていて、非常に興味深い小説。
本岡類さんの他の本も読んでみたくなる、不思議な読後感を感じてます。
ありがとうございます。
Posted by ブクログ
ごんぎつね のフレーズが懐かしくて、思わず手に取りました。
本当に、こんな背景があったんじゃないかと思えておもしろかった。
子どもの頃、すごく悲しかった結末。ごんぎつねの夢の結末だったら、少し救われて良いなぁ
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衝撃的な事件を起こした恩師が残した謎を追う物語。
主人公が取材として恩師の過去を追っていく中で、話がどんどん繋がっていく感じが面白く、すらすらと読めた。
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ごんぎつね、懐かしい…
ストーリーも面白かったです。
犯人は原稿の中に隠れていた!という帯が最高です。
読み終えて表紙の奥深さが分かりますね。
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本岡類『ごんぎつねの夢』新潮文庫。
先に読んだ『聖乳歯の迷宮』が面白かったので、新刊の本作も読んでみることにした。
新美南吉の童話『ごんぎつね』を題材に展開されるミステリー。新美南吉が書いたとされる、もう一つの『ごんぎつね』の結末。当時は見えなかった過去の真実が現代に蘇る。
なかなか手の混んだミステリーである。児童文学史の謎と人質立て篭もり事件の犯人の大いなる謎とが巧く融合し、読者に思いも寄らぬ結末を見せてくれる。
15年振りに開催された中学校のクラス会。その会場にきつねの面を被り、散弾銃を持った男が乱入し、同窓生を人質に立て籠もる。駆け付けたSATに射殺された男は中学校の恩師、長門文彦だった。
長門は教え子を妊娠させるスキャンダルを起こし、中学校を辞めて、塾の講師を務めていた。
人質になったクラス会幹事の有馬直人は長門から「ごんぎつねの夢を広めてくれ」という謎のメッセージを託していた。フリーライターの有馬は長門が事件を起こした背景を調べ始める。
次第に見えて来る長門の過去、新美南吉の『ごんぎつね』にまつわる史実、行方不明となったままのかつての同級生が抱える秘密。その全てが繋がり、最後の真実が明らかになる。
本体価格710円
★★★★
Posted by ブクログ
ごんぎつねのお話が切なくて心に残っていたので、このお話を深掘りしていくのが面白かった。硬い論評ではなく、この小説のストーリー展開に沿って掘っていくので無理なく辿っていけました。
長門先生の目的に対する手段が、小説とはいえあまりに極端で、はた迷惑で残念な読後感。
Posted by ブクログ
新美南吉に心酔する元教師が、テロを企て倒れるが、その教え子が残されたメッセージから謎を探っていく物語。少し伏線の張り方がぎこちないかなと思った。
Posted by ブクログ
同窓会に狐の面を被り散弾銃を持った男が現れるという、衝撃的な始まり。
ただその後の「ごんぎつね」の童話をめぐる謎解きが遅々として進まず、ちょっと後半がダレ気味に。
最後まで読めばなるほど!となり、モヤモヤは一気に晴れやかに。
Posted by ブクログ
あの「ごんぎつね」にアナザーバージョンがある、あるはずだという導入部は掴みとして充分。読者に衝撃を与えることに100%振り切ったような、あのラストに救いがないのは確かで、しかもそれは新美南吉のオリジナルではなく、鈴木三重吉によるものだと言われれば、南吉ヴァージョンがあってもおかしくないなと言う気が確かにしてくる。主人公のライターによる探索行はリアル。ただ、その分ミステリ的なケレンには乏しい。情報の方からライターの方へやってくる感じで、もう少し自力で謎を解く的な過程が欲しいかな。