あらすじ
イエス・キリストの正体とは?
先端科学の知識と作家的想像力を駆使し緻密に組み立てられ傑作ミステリ。
日本版「ダ・ヴィンチ・コード」登場!
日本人考古学者・夏原圭介はキリスト生誕の地・イスラエルのナザレで、
〈イエスの乳歯〉と思われる歯を発掘した。
しかも、その乳歯からはホモサピエンスとは異なるDNAが検出された。
イエス・キリストは現生人類とは異なる〈人類〉だったのか?
イエスの乳歯はセンセーショナルな話題を呼び、
神の実在が証明されたとして世界中でキリスト教をはじめとした
宗教ブームが湧き起こる。
夏原の旧友で新聞記者の小田切秀樹は夏原のインタビューに
成功する一方で、妻の夕海が勢いを増した新興宗教に
取り込まれてしまい苦悩する。
そんな折、夏原と同じく大学の同じサークルだった
沼修司が亡くなったとの知らせが届く。教師のかたわら、
源為朝の鬼退治伝説を調べていた沼は、
青ヶ島で調査中に事故死を遂げたらしい。
沼の妹から兄の遺品整理をして欲しいと頼まれた小田切は、
彼ら三人の恩師の娘で、やはり同級生だった秦野牧と一緒に
青ヶ島へ赴くが、そこで思いがけない事態に陥るのだった。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
一気読み。面白かった。
大袈裟な帯に釣られて手に取ったが、正解だった。
読んでて、どこまで史実・現実か分かんなくなるくらい没入。
オチは賛否ありそう。個人的には最終辻褄が合ったし良かったと思う。
若干ミスリードもあり、残りページ少ないけど結論たどり着くの!?ってハラハラしながら読めた。
忘れた頃にもう一回読もう。
Posted by ブクログ
ナザレで発見されたイエスのものと思しき乳歯。それを炭素年代測定法及びDNA鑑定をしたところ、イエス時代のものであるとともにホモ・サピエンスとは違ったDNA構造であることが判明した。この乳歯は本当にイエスのものであり、彼は神だったのか、を追いかけていく本作。
乳歯に隠されたトリックなど面白かった。ミステリーならではの最後のトリックの種明かしが良かった。
所々で出てくる日本の離島の話や伝説もちゃんと絡んでおり、そこも興味深かった。伝説の中に隠されている本当のことを見出していく考古学の楽しさがわかる作品だった。
Posted by ブクログ
現生人類とは異なるDNAを持つイエス・キリストのものとみられる乳歯の発掘と、東京の南360キロの絶海に浮かぶ鬼伝説のある青ヶ島での一アマチュア考古学徒の変死という2つの出来事についての謎をめぐるミステリ小説。
日本版「ダ・ヴィンチ・コード」と称されるのももっともな、科学や考古学の知見を織り交ぜた良質のミステリ小説だった。キリスト教や青ヶ島などについても勉強になった。結局否定されることにはなったが「神人類」仮説というのも興味深かった。
途中までの盛り上がりに比べ、結末に賛否両論あるようだが、自分は最後の種明かしまで真相にたどりつけず、意表を突かれるラストで面白かった。
ただ、自分は学生時代に考古学を専攻していたのだが、教授が「発見のためには根性でもっと掘れ」といった発言をする(遺物発見のために地層や遺構を無視して掘り進めることは考えにくい)など、ちょっと考古学に対する理解不足は感じた。
Posted by ブクログ
イスラエル、ナザレ近郊。日本人考古学者・夏原圭介はキリスト生誕のその地で<キリストの乳歯>と思われるものを発掘した。その歯からは、ホモサピエンスとは異なるDNAが検出され、神の存在が証明されたとして宗教ブームが湧きおこる。
一方、東京の青ヶ島では、源為朝の鬼退治伝説を調べていた男が、青ヶ島で調査中に死亡する事故が起こっていて……。
科学と宗教が融合する人類史ミステリ。
イエス・キリストの生誕の地で発見された、ホモサピエンスとは異なる遺伝子を持った乳歯。果たしてそれは本当にキリストの、神の物なのか?
その検証の途中で出てくる説も興味深く、特にキリストはとてつもなく優秀な別人類からの養子ではないのか、というくだりは特に心惹かれました。ブッダの生誕における母親の脇の下から生まれたという話が何らかのイレギュラーな出産をさしているのでは? という説がある様に、聖母マリアの処女懐胎も何らかのメタファーであってもおかしくないのでは、とよぎってしまいました。
考古学ってやっぱりロマン。科学という理論的なものが介入しても、宗教という形ない物が関わっても全く色あせない魅力があります。
「キリストの乳歯」の謎と同時に進行する、全く関係ないように見える東京・青ヶ島での事故との関係など、まさに想像力の飛躍という感じで、科学と宗教を軸に広がっていく神秘的かつロジカルなストーリーはか最後まで飽きずに楽しめました。
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ホモサピエンスとは異なるDNAをもつ別種の人類が関係するミステリはこんなのも。
『隠蔽人類』(鳥飼否宇/光文社文庫)