タナダユキのレビュー一覧
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とても美しい小説だと思う。
〝物作り〟に置いても〝恋愛〟に置いても。
てつおとそのこ。
出会い恋に落ちる。ささやかでも幸せな結婚式。甘い新婚生活は、やがて煩わしさを伴いはじめ、別れる理由はないにしても気持ちはどうしようもなく外へと向かう。恋愛小説にはありきの…秘密、後ろめたさ、息苦しさ、疑い、虚しさ、絶望。
狂気にも思える〝物作り〟への執着。それは今の世界のひとつひとつが誰かの情熱によって作り出した物であると言うこと。
起承転結がはっきりとして、スラスラと読みやすい。ありふれたエピソードと言う人もいるだろう。だけど読めば読むほど色濃く深い。切ない。悔しい。儚い。と私は思う。
『僕』側からだけで -
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ラブドール職人の、妻との出会いから別れまで約10年にわたる結婚生活と、その後を描いた小説。
妻に出会ってすぐに夢中になった時期もあれば、結婚後間もなくして、妻への興味を無くし、家庭を顧みず他の女性に走る時期も描かれている。
クズ男としてトコトン情けない主人公なのだが、夫婦の形を取り戻していく様子や、妻に先立たれた後、狂ったように仕事に打ち込む姿は、クリエイターとしての爆発力と推進力を感じた。
そして、悩みを孤独に抱え、自分に興味を失った夫を待ち続ける妻が美しすぎる。冒頭の一文で、読者は妻の運命を知ることになるのだが、美しく薄幸なイメージを抱いたまま読んでしまった。でも、このような夫婦の修復とい -
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人の命を奪った。
その事実をどうやったら忘れることが出来るのだろうか。
それとも、忘れてしまえるような人間だから人を殺すことが出来たのだろうか。
償いとは何だろう。
許しとは何だろう。
大切な家族を失っても生きていかなければならない。
憎しみも悲しみも、時間が解決してくれるようなことではないだろう。
せめて犯人も、罪の重さを感じながら一生苦しんでほしい。
そう願うことは間違っているのだろうか。
失われた命は何があっても戻ってこない。
取り返しのつかないことがこの世にはあるのだと、何故犯人は気づかなかったのだろう。
答えの出ない問題を突きつけられたような、後味の悪さともどかしさを感じた物語だった -
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ネタバレイッキ読みでした。
中井先生のパートの「です・ます」調の淡々とした語り口が、わざと感情を押し殺しているようで、ゾワッしました。
舞子のご両親は出所後の亮一を甘やかせすぎちゃったのかな。心を鬼にして自立させるの、無理だったのかな?犯罪者は普通に生活するのは並大抵ではないと思う。でもこんな調子では・・・何だかスッキリしない。
服役したことで償いは終わったという亮一の言葉には「勝手なこといってんじゃない!」と思う反面、謝罪を口にすればいい?自ら命を絶てばいい? たぶん何をされても被害者家族には許せない。犯人がこの世に存在していても、存在しなくなっても許せないままだと思った。可能なら時間を巻き戻して -
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酒鬼薔薇聖斗事件を彷彿させます。とても嫌な、けれど良質な小説です。
それぞれ異なる殺人事件の被害者の家族と加害者の家族が教師と生徒という関係で関わるなんとも複雑なもの。
被害者の家族である「橋本晃希」。は、そっくりな双子だった。あるささいなことをきっかけに入れ替わりを余儀無くされ、本当の自分である家族橋本祐也」が葬られ、死んだ弟として生きて行くことになった。さらなる悲劇として犯人は15歳の少年だった。
そしてもう一人の語り手は兄が殺人を犯した教師。
うまくかけないなー。
双子の入れ替わりか、なんか聞いたことある話だな、と思って読み進めるととにかく繊細。嫌な小説。でも読んで良かったなって思 -
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先に映画のDVDを観て、原作があるんだ、と思って文庫を発見して購入。驚くほどに忠実に映画化されてる、、、!と思ったら、それもそのはず、映画の監督さんが蒼井さん主演で映画を一本取るために、アテ書きをしたお話しなのだとか。なるほど。それは知らなかったので、映画化に際してはしょられたところとか、もしかして違うエンディングだったりとか?という、期待した内容は無かったんですが、小説ならではの細かい心理描写とか説明はなるほどなるほど、という感じで面白かったです。自分にも通ずるところがあるなぁ、、、などと思ったり。人づきあいが苦手でわずらわしく、そんなつもりはないのに人との行き違いで前科が付いてしまった佐藤