とても美しい小説だと思う。
〝物作り〟に置いても〝恋愛〟に置いても。
てつおとそのこ。
出会い恋に落ちる。ささやかでも幸せな結婚式。甘い新婚生活は、やがて煩わしさを伴いはじめ、別れる理由はないにしても気持ちはどうしようもなく外へと向かう。恋愛小説にはありきの…秘密、後ろめたさ、息苦しさ、疑い、虚しさ
...続きを読む、絶望。
狂気にも思える〝物作り〟への執着。それは今の世界のひとつひとつが誰かの情熱によって作り出した物であると言うこと。
起承転結がはっきりとして、スラスラと読みやすい。ありふれたエピソードと言う人もいるだろう。だけど読めば読むほど色濃く深い。切ない。悔しい。儚い。と私は思う。
『僕』側からだけで描いているのに、園子の心の揺らぎも哀しみも我慢も同性として、もの凄く分かる。
人は結局、失う時にしか大切なものに気がつけないものなのかもしれない。
疑似恋愛を生業としながら、本物の愛に気が付いた僕。
最後のひと言で涙腺決壊。
今年の6冊目
2020.3.17