苅部直のレビュー一覧
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本書は、かつてWebちくまに掲載されていた筆者による思想史上の名著(後述)のレビューを一冊にまとめた本です。元々ネットに発表されたものであるため、解説自体はかなり入門的に留まっており詳しい解説はなされていません。
【こんな人におすすめ】
思想史の入門書を探している人
昔の人の思想に触れてみたいけど、いきなり思想書を読むのは難しいと思っている人
日本思想の概要を知りたい人
【目次】
古事記
憲法十七条
日本霊異記
愚管抄
歎異抄
立正安国論
神皇正統記
大和小学
西洋紀聞
童子問
政談
葉隠
夢の代
稽古談
くず花
霊の真柱
新論
国是三論
文明論之概略
三酔人経綸問答
将来の日本
教育勅語 -
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著者はあえて「19世紀日本」という言い方を選び、「徳川時代後期・明治時代」と書かなかったのには、1868年の断絶にだけ目を向けず、19世紀日本が自らの文明観を育んできたからだという。そして、荻生徂徠、本居宣長、山片蟠桃、頼山陽、福沢諭吉、竹越與三郎らの思想家たちを通観していく。
個人的には最近読んだいくつかの論文のテーマがまさに重ねっており、興味深いものがあった。近世に萌芽する近代思想という視角は目新しいものではないが、本書のように非常に整理されていると改めて勉強になる。もちろん渡辺浩先生などの重要な先行研究が下敷きになっていることは強調するまでもないのだが。
その渡辺浩先生の今年6月に出 -
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岩波出版のヒューマニティーズ・シリーズの政治学編は、東京大学法学部(政治思想史)の苅部直(1965-)の執筆。
【構成】
1.日常性と政治-政治学は役に立つのか
2.政治の空間-政治学のこれまで
3.権力と自由-政治学のこれから
4.政治的リアリズムとは何か-戦後日本の論争から
5.政治学を学ぶために-読んでおきたい本
このシリーズは、高校生や大学1・2年生向けということもあり、非常に読みやすい。
ただ、高校生が読むにしてはやや抽象性の高い部分がある。
そうはいっても、オーウェルの寓話からはじまり、坂口安吾、見田宗介、司馬遼太郎、そして丸山眞男と福田恆在の論争と、引用される話は読者を引き -
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小林秀雄の作品はよく読む、同じものを何度も読むことがある。彼の思考を尽くした文章は鋭く本質を突き鮮やかな表現で脳に沁みる。感性・洞察・表現に卓越した小林の作品に政治思想史学者・苅部直がどう対峙するのか興味を持って読み始める。
小林をよく知る著名人の引用が多く、小林の論理なのか引用者のものか、はたまた苅部の理解なのか、迷う書き方である。評論家を対象にする論考の難しさもあるが作者の思索の踏み込みが甘く、練り不足での入稿の故かもしれない。
以下、論点を列挙する。
作者は小林秀雄の評論とりわけ『考えるヒント』が1950〜60年頃から大学受験の国語の試験によく出るのは何故かという問題意識から始める。
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1.この本を一言で表すと?
・思想の歴史をたどることで、鎖国によって長年閉じられていた日本がどのように「開化」したのかを明らかにしている本。
2.よかった点を3〜5つ
・「和魂洋才」の罠(p22)
→なぜ「洋才」を欲したのか、富国強兵を目指したからというだけではなく別の理由があったというのは面白い。
・「民衆不在」の罠(p28)
→文明開化のただ中にいた大勢の人々は、文明開化を楽しみ、徳川の時代には抑え込まれていた欲望を発散していたという話は初めて聞いて面白い。
・現代人は学校で無理やりやらされる「お勉強」にあまりにも慣れすぎているので、人間の素朴な興味が学問に向かうという事態を想像 -
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高校の「政治経済」と大学の「政治学」の授業を橋渡しするという意図で書かれた本で、政治学のなかから読者の興味を引くトピックをとりあげ、著者自身の観点からなにが問題になっているのかということがわかりやすく解説されています。
「ヒューマニティーズ」シリーズでは、政治思想を専門とする小野紀明が「古典を読む」という巻を執筆しており、本書を日本思想史が専門の苅部が執筆していることに、すこし奇異な感をいだきつつ本書を手にとったのですが、政治に対してある種の不信感をいだきがちな一般的な日本人の感覚から出発し、それを掘り下げていくことで政治学の重要な問題にいたる道筋がたどられていて、興味深く読みました。