あらすじ
私たちが「政治」と言うとき、イメージされているものとは何か。権力者の裏取引、市民の参加活動、見えない抑圧、華やかな外交交渉――そのいずれもが「政治」ではあるが、何を念頭におくかで、その姿は変わってしまう。日常生活の視点から出発して、さまざまな「政治」の現象を貫く糸をたぐりよせ、その内実を解き明かす。
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Posted by ブクログ
岩波出版のヒューマニティーズ・シリーズの政治学編は、東京大学法学部(政治思想史)の苅部直(1965-)の執筆。
【構成】
1.日常性と政治-政治学は役に立つのか
2.政治の空間-政治学のこれまで
3.権力と自由-政治学のこれから
4.政治的リアリズムとは何か-戦後日本の論争から
5.政治学を学ぶために-読んでおきたい本
このシリーズは、高校生や大学1・2年生向けということもあり、非常に読みやすい。
ただ、高校生が読むにしてはやや抽象性の高い部分がある。
そうはいっても、オーウェルの寓話からはじまり、坂口安吾、見田宗介、司馬遼太郎、そして丸山眞男と福田恆在の論争と、引用される話は読者を引き込ませるに十分である。
特に4章のメインとナル丸山・福田の論争は、戦後政治学の主要な命題を抱えながら、「演技」と「偽善」という大きな政治に重要な要素の必要性を示している。
「政治学」というより「政治」一般についての、入門書と言ってもいいかもしれない。
Posted by ブクログ
高校の「政治経済」と大学の「政治学」の授業を橋渡しするという意図で書かれた本で、政治学のなかから読者の興味を引くトピックをとりあげ、著者自身の観点からなにが問題になっているのかということがわかりやすく解説されています。
「ヒューマニティーズ」シリーズでは、政治思想を専門とする小野紀明が「古典を読む」という巻を執筆しており、本書を日本思想史が専門の苅部が執筆していることに、すこし奇異な感をいだきつつ本書を手にとったのですが、政治に対してある種の不信感をいだきがちな一般的な日本人の感覚から出発し、それを掘り下げていくことで政治学の重要な問題にいたる道筋がたどられていて、興味深く読みました。