片田敏孝のレビュー一覧
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伊勢湾台風の2年後の1961年に施行された災害対策基本法によって、行政による防災対策が進み、年に数千人規模の災害死者数が100人前後に激減した。しかし、そのため国民の中に、防災に関する行政依存の体質が染み付いてしまった。
行政が100年に一度の災害を想定して防災対策を行った結果、災害は激減した。しかし、想定にとらわれて、想定外の災害に対処できなくなってしまった。避難勧告が出なければ非難しないような行政依存の体質になってしまった。
しかし、東日本大震災を機に自助・共助の重要性が叫ばれるようになり、市民の意識改革も進んできた。
今後の行政の課題は、自助の意識を高め、共助のサポートをすることだ。情報 -
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「危険をしっかりと伝えれば、人間は逃げる」というのは嘘、と言い切る。人は自分が死ぬことを考えるのが苦手であり、「今がその時」であってもそれほど大した問題ではないと思いたがる。周りの人たちも同じように考え、認知的不協和や同調圧力も手伝って、「この間も大丈夫だったし周りも騒いでいないから大丈夫」と正当化して自分自身を納得させてしまう。元来、逃げようとしない傾向をもつ人間を、「率先して逃げる住民」にするために何が必要かを説く。
避難は3つに分類できるが(緊急避難(evacuation)・滞在避難(sheltering)・難民避難(refuge))、行政が対応できるのは滞在避難・難民避難の2つだけ。津 -
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東日本大震災の前から、防災のニュースなどを聞いていて、何か違和感を感じることが多かったのだが、その違和感の正体を、この本が明らかにしてくれたように思う。結局、「自分の命は自分で守る」しかないのだ。災害が起こったら行政が何とかすべきだとか、行政がなんとかしてくれなかったときは、行政の責任を追及すべきだとか、東日本大震災から3年、また元の木阿弥になってはいないか。あの大災害からの教訓を、自らの生活にきちんと反映していかなければならないと強く思った。
3月11日、あの日の釜石の子供たちの行動が詳細に記述されている箇所には、本当に言葉が出ない。経験している人たちにしかわからない重みがすごく詰まってる。 -
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心に残ったところのメモ。
■想定にとらわれるな。
ハザードマップも、浸水予測地域も、想定によるもの。災害は想定通りに起こるとは限らない。
■自分の命をどうやって守るかを自分で考える。
逃げろと言われるまで逃げないのはおかしい。
災害時に助けてもらう事を期待するのもおかしい。
どうやったら自分と家族を守れるのか、という視点で用意するしかない。
■避難シミュレーションの活用
情報伝達の時間と、避難の意思決定の時間がある。
しかし、情報はちゃんと伝わるとは限らない。時間もかかる。
迷っていては、間に合わない事が有る。
発災から意思決定まで20分なのか、10分なのか、0分なのか。
シミュレーショ -
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なんとなく、復興計画を考える際に、これで人が死なないようになるのかという視点が薄いような気がしている。
職場の本屋でなんとなく買った本は、釜石市の小中学校で防災教育をしていて、生存率99.8%を実現した片田先生の講演録だった。
やはり、先生がいうように、被災した方々を支援することと同時に、これからは災害で人が死なないようにどうするのかという観点が復興計画には大事だと思う。
(1)例えば、浸水深2mで一応盛り土高さとか居住可能地域を決めているが、現実には、浸水深2mでも人はなくなっている。2mというのは目安であって、今回の津波で浸水した地域は、避難訓練などの避難の方法をセットで考える -
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・「この次の津波がきたとき、君たちはきっと逃げるだろう。でも、君たちのお父さんやお母さんはどうすると思う?」
子どもたちの顔が、一斉に曇ります。なぜかわかりますか。
「お父さんやお母さんは、僕を迎えにくると思う」
迎えに来るとどうなるか、というところに子どもたちの思いは及ぶわけです。そこで私は、不安そうな子どもたちにこう語りかけます。
「今日、家に帰ったら、お父さんとお母さんに『僕は絶対に避難するから、お父さん、お母さんも必ず避難してね』と伝えなさい。お父さんやお母さんは、君たちが逃げることを信用してくれないと、迎えに来てしまう。だから『僕は絶対に逃げるから』と信じてもらうまで言うんだよ」