国際的なNGOプランが展開する"Because I am a girl"キャンペーン。
女の子だと言うだけで教育が受けられなかったり、虐待を受けたり、売春の道へ進まざるを得なかったり。
そんな目をそむけたくなるような現実が発展途上国には溢れている。
そんな女の子たちを支援し生きる力をつけさせるのが活
...続きを読む動の主旨。
本書はこのキャンペーンに賛同した7人の作家たちが実際に現地を訪れて、小説だったりルポだったりと形は違えどそれぞれの思いを綴りアンソロジーにまとめたものである。
アフリカの貧しい国々での惨状は私の想像が及ぶ範囲でもあった。
ろくな教育も受けず、一日一食があたりまえ。
通学路でさえいつレイプされるか分からない。
学校のトイレさえ整備されておらず、教師は低賃金にやる気を失う。
イニシエーションと称して女性器切除の慣習が残る地域すらある。
おまけにアフリカの女性達は従順だ。
家父長制度を重んじ、自分の意見を述べることすらはばかられる。
これは本当に同世代に住む女性達の姿なのだろうか。
アフリカだけはない。
サッカーワールドカップが開催され、次はいよいよオリンピックという経済成長目覚ましいブラジル。
スラムに住む女の子達、そしてその母親たちの生きざまを読むと胸が締め付けられるようだった。
下水も整わない家の中では汚物があふれかえり悪臭が漂う。
不衛生な環境で皮膚病に罹る子供たち。
こんなひどい状況で10代のうちに何人も子供を産まざるを得ない現状。
母親を必要としている少女のうちに自らも母親となってしまう。
その悪循環の繰り返し。
父親などもちろん存在しない。
オリンピックの開催資金だけで一体何人もの子供たちが救えるのだろうか。
気が遠くなる。
これが世界の現実。
日本でももちろん男女差別は残っているし、悲惨な境遇で育つ子供達もいるだろう。
しかしその比ではない。
彼らに選択肢などないのだ。
この本の翻訳は角田光代さん。
角田さんはどうやらボランティアでこの本の翻訳を引き受けたようだ。
彼女の小説には独特の女性ならではの視点があって、女性性についての違和感や憤りの描写も多い。
でも彼女自身の強い主義主張と言うのは正直感じられなかった。
ところがどうしたことだろう。
この本の前書きを角田さんは書いているのだがこれほどまでに彼女の強い思いを感じた事は今までなかった。
『私は非力だ。けれど、なんとかしたいと思うところからしか、ものごとは動かない。』
まずは現状を知ること。そして自分に何ができるか考えることから始めたって良い。
まずは一人でも多くにこの本を読んでもらいたい、と私は思った。