満薗勇のレビュー一覧
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「消費者」という概念を「利益」「権利」「責任」という3つの観点から整理し、戦後日本経済史を見直すという非常に野心的な試みであり、面白く読んだ。
第1章「消費者主権の実現に向けて」ではは高度成長期、大量生産と大量消費によって「消費者の利益」が実現されると信じられていた時代を、ダイエーの中内や松下の経営哲学にも検討を加えつつ論じられている。個人的には生産性向上運動と「消費者主権」を結び付けて論じられている箇所(pp.21-35)がとくに興味深かった。
第2章「オルタナティブの模索と生活者」は石油危機後からバブル直前までの時期が扱われている。私は著者の満薗さんより20歳も年上なので、この時代の雰 -
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消費者の現代史、というありそうでなかった視点に引き込まれました。一昨年、貞包英之「サブカルチャーを消費する」に出会ってから彼の著作「消費は誘惑する」「消費社会を問いなおす」と読み継ぎ、「消費社会論」にも刮目していたのですが、今回は社会論、というより現代史、という違いが隣接しているけれど被り無し、ということで新鮮にページを手繰れました。著者の満園勇にも注目です。消費者という存在の台頭した1960年代から70年代初頭、消費者から生活者という捉え方へのシフトが進んだ70年代半ばから80年代半ばまで、消費者を顧客満足という視点でお客様と呼ぶようになる80年代後半から2000年代まで、そして押し活やエシ
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あとがきに「本書は、現代日本における消費者の歴史を綴ったものである。」とあるように、現代歴史の本です。
第二次世界大戦後の日本で、消費者と呼ばれていた存在が、生活者と呼ばれるようになり、そしてお客様と呼ばれるようになった歴史を、当時の新聞、雑誌などから綴っています。
とても昔の新聞や雑誌などから、情報を集めていて凄いと思いました。
個人的に一番衝撃だったのは、「セブンイレブンのオーナーは、過労死ラインの危険を感じる中央省庁の人の八倍も命の危険があり、国家公務員の九倍以上も病気やケガをしていることになる」という記述です。
最近流行りのESG投資の観点から、運用会社の皆様は、このことをぜひ、株主 -
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ちょっと挑発的?なタイトルに興味を持って読んでみたのですが、中身は近代日本の流通史を、とてもわかりやすくまとめた本でした。
流通史系の文献はいままでいくつも読んできましたが、これは、その中でもかなり読みやすく、しかも内容の濃い、参考書としても優れた本だと思います。
表題の商店街に関してだけでなく、デパート、スーパー、コンビニなど、現代の日本の小売業界すべてに関して広く触れて、今後消費者の利益のみでなく、生産者、地域、そういったあらゆる人を含め、どのように生活環境を変えてゆくべきか、という問題を投げかけてくれています。
そのような中で、今日の商店街活性化論に関しては、妙に感情的になるのではな -
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戦後の消費革命の流れを紐解く通史。
西武グループの影響下にある地域に住まい、セゾン文化の残滓・後続企業の現状に個人的興味を持っている自分としては、堤清二がこの新書の帯の紹介文に登場するだけで読まないでいられなかった。
消費者→生活者→お客様という表現とニュアンスの変遷を、高度経済成長と消費革命、価格決定権問題(ダイエーと松下電器)、石油危機・環境問題、有機農業運動、マージナル産業論(堤清二)、バブル崩壊、長期経済停滞、SDGsといった経済的・文化的視点から歴史に沿ってみていく形。
自分や自身の親世代の辿ってきたこれまでの人生のいろいろな場面に思いを巡らせながら読むことができ、これはそういう -
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タイトルから商店街の現状、およびどうすべきかについて議論したものかと思ったが、実際には歴史にややウェイトを置いた小売業に関する解説書である。小売業について学ぶためのテキストブックとしても十分耐えられる。
本書は専ら小売業についてのみ言及していて、卸売業、流通チャネル、流通システム、流通構造については全く触れていない。したがって流通論のテキストしては使用できない。
しかし流通論を学ぶ際の副読本として本書を読むことには大いに意義がある。小売業について、流通論のテキストブックでは触れていないところまで詳しく書かれている。特に関スパ方式については、重要でありながら特に経緯について詳しく書かれている -
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小売という視点で1900年頃から現代までの大きな流れをまとめた本、こういった視点は読んだことがなかったため、非常に面白かった
呉服屋が百貨店化していく中、百貨店法の設立でブレーキがかかる。そこをスーパーというシステムが入り込み、並行してコンビニも始まっていくというのが、大きな流れだが、そこに対して「当時の生活様式」「消費」「家族」等、様々な視点で語られており、興味が尽きない。通信販売が関東大震災で廃れるまで、当時すでに扱われていたなど、知らなかった情報も満載。
不満をあげるとしたら、年表での比較も欲しかった点と、タイトルが意味不明という点くらい。何度も読みたい。 -
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細くて長い=日本の特徴 21
誰にでも同じ値段で売ることは革命的であった(正札販売) 42
売り方で物が売れる(通信販売) 80
顧客は品目と価格のみを指定し、具体的な商品選択は店に任せていた。おもしろい。今でもやれるかな? 98
スーパー全盛期に商店街が残った事実=商店街の意義 173
1990年のダイエーの売上高の多さに驚く 196
1960年代以降に消費者意識の転換期となる 218
消費者のための大型店が(スーパーも含む)消費者に受け入れられないズレ 232
コンビニ会計のカラクリの怖さ 272
見切り販売をすると本部の儲けが少なくなる 274
日本の流通は百貨店、スーパー、コンビニの -
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門外漢の流通、消費関係の新書を、インスタでフォローしてる人が読んでたので読んでみた。
ら、意外に読めたし、面白かった。
「消費者」「生活者」「お客様」という言葉の変遷。
言葉は定義を含む。つまりそれなりの意味がある。
①消費者の利益、②消費者の権利、③消費者の責任
という三つの観点がある。しかしそこで権利は無視されがちで、責任が大きく前に出ている昨今。良かれという文脈で押しつけられていると気付かぬまま、押し付けられる責任。
高度成長期、バブル、バブル崩壊、低成長の中での消費。
必要な物をあらかた得た後の消費とは。
随分と前から、1970年台からすでに始まっていたコト消費。サービス消費の経 -
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タイトルに惹かれ手に取った一冊。
百貨店、通信販売、商店街、スーパー、コンビニという小売りの形態別の歴史を振り返りつつ、特にコンビニと商店街を比較しながら、その必要性と課題を洗い出しています。
比較することで、理解できることがあった反面、このタイトルに対する答えは著者としても明確に出せないところが残念でもあり、商店街振興の難しさを物語ります。
コンビニを日本型流通の最終形態としつつも、多くの課題があり、商店街にもそれを克服するための答えはありません。
私たちができることは、様々な小売りの形態それぞれの長所・短所を理解したうえで、全体として生活しやすい地域になるためには、どのような形がよりふ -
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本書は、もともと「日本型流通への近現代史」といういう仮タイトルで進められたものだ。
しかし、著者は、「日本の流通を考えるうえで、商店街をどのように理解するのかというが最も重要なポイント」ということを考え、本書は、このようなタイトルに変更された。
戦前の「百貨店」から「通信販売」、そして、本書のメインテーマとなる「商店街」、その後のダイエー創業者の中内氏に代表される「スーパーマーケット」、最後は「コンビニエンスストア」に至るまで、豊富なデータをもとに分析し、「日本型流通」とは何かというアプローチを積極的に試みている。
本書で面白かったのは、コンビニエンスストアと商店街との関係。やはり、商店街