土肥恒之のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
先日読んだ『文明の本質』(ルイスダートネル著 河出書房新社)の中にニコライ2世の系譜にかかる記載があり、実は、ロシアの歴史をあまりよく知らないことに今更ながら気づき、本を探したところ、本書にであった。
本書に出会う過程で意外にも、ロシアの歴史に関する本が意外に少ないことに気づく。なぜ?
実際に数えたわけではないが、欧州、アジアの歴史本は数多くあるが、ロシアの歴史本は少ない。
その中で、本書はロシアの歴史を実に分かり易く語ってくれる読み応えのあるロシアの通史。現在のロシアを知る上でも一読すべき本だと思う。
講談社学術文庫の「興亡の世界史」シリーズに外れはない!
表紙を飾るのは、エカテリーナ -
Posted by ブクログ
ノルマン人の侵入、キエフ国家の誕生、タタールのくびき、モスクワ公国、ロマノフ王朝、ソビエトのまでをロマノフ王朝の300年間を中心に記述されたロシアの通史。日露戦争など日本とも無関係でなく、日本海を隔てた隣国ながらも西ヨーロッパ以上に遠く感じるロシアの歴史の概略を学ぶ事ができた。時代を一貫して専制と抑圧という暗さを感じた。過去から現在までの状況を考えると、ロシアが民主国家になる可能性はないのかもと思った。
兵器以外に碌な工業のないロシアを不思議に思っていたが、「ピョートルの経済政策は当初、専ら軍備の拡充に向けられた。つまり武器製造のための製鉄などの重工業、そして軍服の自給のための繊維業などの軽 -
Posted by ブクログ
日本における西洋史学の受容からその後の進展を、主要な学者の業績等を通してたどろうとするもの。
大塚久雄、上原専禄のビッグネームを除いてはほとんど知らない人だったので、全体を興味深く読んだ。
通読して思ったことは、西洋学説の受け売りではなく、日本で西洋史を研究することの難しさ、どこにその意義を見出すのかが重要であるということ。
もちろんそのテーマを選ぶ問題意識も大事であるが、特に、歴史学は何といっても史料をいかに読み解くかが基本中の基本であるから、史料へのアクセスに物理的にも言語的にも制約がある日本人が取り組むことは極めて難しいと思う。その点、上原専禄が「原史料への沈潜」という姿勢で -
Posted by ブクログ
ネタバレロシア。イメージが沸かない。
世界史を勉強しなかった40歳代のおっさんだと、ロシアのイメージというと、社会主義、ゴルバチョフ、チェルノブイリ、シャラポワ、ピロシキ。あ、あとマトリョーシカ。ようは散発的なもの以外に包括的なものがない。敢えて言えば、何か暗い、みたいな。
しかし、この本を読んで、おかげでロシアのイメージが少し形づくられたと思う。
講談社学術文庫はどれも値段が張るが、この興亡の世界史シリーズは本当に高い!文庫なのに1,360円!新刊本の値段と同じじゃないですか!若干買うのをためらったが、結果としては非常に面白い本だった。
印象的だった部分を挙げると、皇帝の専制、多数の -
Posted by ブクログ
ネタバレ中性のロシア農民は移転の権利を持つ自由身分であったが、中小封地を持つ士族が搾取すると農民たちはより魅力的な大地主の貴族の封地に逃亡した。多数の士族の要求により逃亡農民の捜索期限が撤廃され、農奴制が確立した。
後世ロシア農民は人口増加に対して、新しい豊かな土地に移り住み旧来の粗放農業を続けることで対応した。ロシアに農業革命が生まれなかった所以である。
ピョートル大帝は変革の方向に乗り、最も強硬な案で上からの改革を断行した。教会勢力すら自らのその傘下に納めた。ツァーリ専制という独裁システムは以後のロシア史で度々登場しまた求められていく。