粟飯原文子のレビュー一覧

  • 崩れゆく絆

    Posted by ブクログ

    アフリカ文学の在り方
    黒人と白人の関係っていうのは今後も一生注目され続けるもので、こういった文学はその関係における事実とか考え方を継承するひとつの大切なもの

    0
    2021年01月06日
  • 崩れゆく絆

    Posted by ブクログ

    アフリカ文学の父と称されるアチェベの代表作。アチェベの名前、どこかで聞いたことがあると思ったら、コンラッドの「闇の奥」についての論争について読んだときに名前をみかけたようだった。
    本書は19世紀のナイジェリア、イボの文化を描き出すとともに、それがイギリスによる植民地支配により崩れ行くさまを、戦士として誇り高い地位にあった主人公、オコンクウォの転落に重ねて描き出す。前半のイボの文化は興味深いが、アフリカの独自性を描き出すというよりは、その中で葛藤する個人を描こうとしていると言える。その点ではオーソドックスな小説とも言えるが、それまでアフリカ人を主人公としてこなかった小説世界が、アフリカを舞台にオ

    0
    2020年10月10日
  • 崩れゆく絆

    Posted by ブクログ

    ◆石川直樹さんのおすすめ

    キリスト教が入ってきたときに
    今現在虐げられてたり
    今現在の価値観に疑問を持っている人たち
    (双子を堕胎しなければならなかった母親など)
    が改宗していったというところに
    なるほどなぁと思う

    もともといた人たちの世界観の中に
    新しく場所を設けて
    考えを拡げていく

    どちら目線かで全く変わってくるけれど
    元いた方は「順番」の重要さを思って
    後発の振る舞いを理不尽に感じるのも
    仕方なく思う
    後から入っていく方は
    自分たちの「正しさ」を広めたいし
    受け入れられたいし
    そのために尽力もするだろう

    なんだあれ?と思われるような
    新しい考えは一見カルト的にも思えるだろう

    0
    2020年07月06日
  • 崩れゆく絆

    Posted by ブクログ

    民族誌半分、物語半分。カメの昔話、家族の仕組み、ヤム芋の農業。歌や市場や巫女の存在意義、アフリカ文化の基礎知識がないから、珍しい。

    キリスト教の西欧がアフリカの人々の信仰を無慈悲に蔑み侵入してきたのを当事者の目から書いた、アフリカの人々 可哀想、なだけで終わらない文学。
    村人たち、とくに主人公オコンクォが男らしく(横暴とも言う)自分勝手で他人の心情を解さない男で。伝統を重んじ自分の力で長になろうと努力した主人公が、自分の今までの行いから、自分の精霊(チ)の運命に逆らえず結局超えられない、というところに皮肉と悲哀を感じる。

    0
    2019年06月27日
  • 崩れゆく絆

    Posted by ブクログ

    「アフリカ文学の父」による最高傑作と言われる。

    物語の前半は、徹底した労働により一代で名声を築く主人公オコンクウォの半生が語られる。彼の考える勇気の大切さ、怠惰への嫌悪などは息をのむほど。一方で、一夫多妻制の下での(現代の感覚から見れば)信じがたいほどの男尊女卑、子どもへの抑圧、「迷信」と呼ばざるを得ないような呪術。同時に、争いを避けるために精霊たちが村人に与える平和への知恵。そして後半、ここにキリスト教の宣教師がやってくる。

    初代宣教師は、村人のするどい突っ込みに受け答え、伝統的な慣習に理解を示しながら少しずつ信者を増やしていく(「神は一人といったり、神の息子がいると言ったりどっちなんだ

    0
    2019年01月05日
  • 崩れゆく絆

    Posted by ブクログ

    最後は痛烈。日本の明治維新における、漱石を初めとする文豪の問題意識や西郷隆盛の西南戦争と共通するところがあり、特に日本人にとっては、古くて新しい問題である。それは、第二次世界対戦後という現況にも問題を提起している

    0
    2018年08月11日
  • 崩れゆく絆

    Posted by ブクログ

    「アフリカ文学の父」と言われるチヌア・アチェベの作。
    アチェベはナイジェリア・イボ族出身で、ロンドン大学のカレッジにあたるイバダン大学(ナイジェリア最古の大学)で学んでいる。
    アチェベはコンラッドの『闇の奥』を批判したことで知られる。アフリカの人間性に目を向けず「ヨーロッパすなわち文明のアンチテーゼ」としたというものである。アフリカ人を「野蛮」としか見ていなかったというわけだ。
    アフリカを描写する「異なる物語が必要」として、実際に創作したのが「アフリカ三部作」と呼ばれる作品群で、この『崩れゆく絆』が最もよく知られる(他の2編、『もう安らぎは得られない』『神の矢』に関しては、少なくとも入手しやす

    0
    2017年02月04日
  • 崩れゆく絆

    Posted by ブクログ

    19世紀のアフリカを舞台とした、欧州の植民地支配によって分断されていく家族と共同体の物語。あらすじはシンプルだけど、実際にはとても重層的な意図の込められた、にもかかわらず単純に物語としても面白く読めてしまう本だった。語り口の変化は近代化のメタファーとして機能しているし、支配の過程も単純な二元論では収まらない。そもそも著者が植民地支配の教育を受けて育つことで、その支配以前の文化を書き留められたこと自体が逆説なのだろう。その上で、個人の弱さを軸とした物語は時代も文化も飛び越えて、こんなにも普遍的に届いてくる。

    0
    2015年03月13日
  • 崩れゆく絆

    Posted by ブクログ

    アフリカ伝統社会が西欧文明の流入により壊れてゆく様子を描いた小説。前半は伝統社会の描写で入り込むまで時間がかかるが、それでも読み進むねうちはある。映画「セデック・バレ」や、明治日本の近代化、さらには高度経済成長以後の日本の変化にも重ね合わせて読んでみたい。

    0
    2014年04月06日
  • 運命の男たち

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    序盤はちょっとしんどかった。昔の話を自伝のように再現するのはどうやってやるのかなと思う。
    公判が近づいたあたりから面白くなってきて,冤罪は晴らされるんだろうと勝手に思って読んでたので,残りのページ数が少なくなるにつれどんどん不安になり,最後のけぞった。イギリスは死刑が廃止されているようで良かった。

    0
    2025年10月30日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    妹アヨオラが殺人を犯してしまうのを必死で隠す姉コレデ。あらすじはめちゃくちゃ面白いんだけど、結末としてはしっかりオチがついているわけではなく、ミステリーというよりかはあくまで女性の力強さを描きたかった作品だったのかなと思った。
    幼少期の父の暴力に怯え、必死に抵抗して過ごした姉妹は父が亡くなってからは父の形見のナイフで殺人を繰り返す。動機はよくわかりませんでした。
    ただ、海外作品としてはとても読みやすく、なんだかんだ姉妹愛を感じられる作品で良かったです。

    0
    2025年03月10日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

    Posted by ブクログ

    ナイジェリアの治安だからこそ成り立つハラハラドキドキのサイコミステリー。これが監視カメラが街に点在する日本だったらすぐに犯罪の足がついてしまうだろう。時に互いに懐疑的になりながらも一緒に生きていく姉妹の姿は、運命共同体というか一蓮托生というか。シフターフッド的な作品でもあり、とても楽しめた。

    0
    2023年05月18日
  • ぼくらが漁師だったころ

    Posted by ブクログ

    アフリカの呪術的な要素がずっと根底にある。
    予言が的中していくおどろおどろしい雰囲気はたぶん独特のものなんだろう。
    やし酒飲みや崩れゆく絆やらがアフリカ文学の名作として知られているけど、こういった作品ももっと知られても良いと思う。

    0
    2022年11月12日
  • 崩れゆく絆

    Posted by ブクログ

    アフリカの作家は初。昔ながらの部族のしきたりを守って暮らしている村の英雄が、ふとした事故で7年間の追放の憂き目にあう。戻ってきた頃にはイギリスの宣教師が入り込み、村の様子は一変している。ストーリーとしては、二つの面があると感じた。一つは植民地化する前、その過程の両方で、住民、特に部族内で虐げられていた女性や子供、差別されていた村民にとって、何が幸せかを考えさせられる。もう一つは主人公と村全体の運命。文明化の旗印のもと、過去の風習等は全て否定される。ただ、不潔なことや迷信に基づいた子捨て、双子の廃棄などは解消されるわけで、どこに線を引くのかは難しい。

    0
    2022年04月09日
  • ぼくらが漁師だったころ

    Posted by ブクログ

    現代ナイジェリアを舞台に、家族がある狂人の予言めいた言葉から不幸に陥っていく様はあまりに痛々しいが、一方で予言めいた言葉だけでここまで・・?とも思わなくもない。

    ただ最後の絆は感動した。

    0
    2021年12月26日
  • 小さきものたちのオーケストラ

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    小さきものたちのオーケストラ

    著者:チゴズィエ・オビオマ
    訳者:粟飯原文子(あいはらあやこ)
    発行:2021年7月25日
    早川書房

    唯物Vs観念

    ナイジェリア出身、アフリカ文学の若手作家の第2作。英国の最高賞であるブッカー賞の最終候補作。現在はアメリカのネブラスカ大学で教鞭をとりつつ執筆。

    本作はナイジェリア南東部にいるイボ人の話。60年代後半、この地域はビアフラ共和国として分離・独立宣言をしたため、ナイジェリア内戦となり、イギリスやソ連など大国の干渉も受けた。ムスリムではなくキリスト教徒が多く、登場人物たちもキリスト教徒だが、教会へ通いつつも、イボの宇宙観や宗教が行動原理の根底にある

    0
    2021年11月25日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

    Posted by ブクログ

    「ねえコレデ、殺しちゃった」美しく誰からも愛される妹アヨオラから掛かってきた3度目の電話。妹とは違い控えめで堅実な姉コレデは、彼女が犯す犯罪の隠蔽を続けていた。
    衝撃的な題材だが淡々とした文章から、事件が姉妹の日常に溶け込んでしまっている様を思わせる。ソシオパスの妹だけではなく家長制の背景についても考えさせられる一冊だった。短めで読みやすい。 ハヤカワポケットミステリは小口染めが可愛らしいですね。持ち歩いてるだけで嬉しかったです。

    0
    2021年09月16日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

    Posted by ブクログ

    ナイジェリア人の作家さんということで、気になって読んでみた。
    アフリカが舞台の作品は、ほとんど読んだことがないので新鮮。
    ミステリ・レーベルから出ている本だけど、自分的にはこれは純文学だと思う。
    登場人物のほとんどがクズだと思ってしまうのは…自分がおかしいのか?

    0
    2021年08月04日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

    Posted by ブクログ

    各章が短いのですぐ読める。内容は凄いのに何故か突き放した様な雰囲気がドライで良い。コレデはずっと妹を庇い続けるのかと考えると着地がイマイチの気がした。

    0
    2021年04月01日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

    Posted by ブクログ

    平凡な姉の想い人が美しい妹に奪われるというよくある設定に、シリアルキラーだという突拍子もない要素が加わって、果たして結末はどうなるのかという興味で読者を引っ張っていき、尻拭い役の姉がドタバタしながらも事態は一応の決着をみるのだが、ジタバタするのを止めることにした姉が妹の悪癖にどう付き合っていくのかという続編(無さそうですが)というか、殺人鬼デクスターばりにTVドラマ化したら面白くなりそうな予感が…

    0
    2021年02月27日