粟飯原文子のレビュー一覧

  • 崩れゆく絆

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    イボ社会を英語で執筆し、日本語に訳された。
    解説や訳者あとがきも含めて、全部読んでから、改めて原題を見た。
    THINGS FALL APART

    しっくり来た。

    訳者あとがきまで読んでから再読すると、挿入されているイボ社会の口承が、何を暗示しているのか、感じることが変わっていくだろう。

    もともとの豊かな文化と高度に機能していた社会、そこにある多くの矛盾には入り込み、傷口を無理やり開くかの如く侵入していったキリスト教社会。

    植民地教育を受けていた著者ならではのフィクション。この読後を表現するのは難しい。

    以前読んだ別のナイジェリア人の作家を思い出す。アフリカ文学に、さらに興味が強くなる。

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    2025年09月30日
  • 崩れゆく絆

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    ネタバレ

    近代アフリカ文学の原点と称されるアチェべの名作小説。

    舞台はヨーロッパ人によるアフリカの植民地化がはじまりつつあった19世紀後半の西アフリカ(現ナイジェリア)。
    絶え間ない努力と武勇によって若くして富を築いたイボ人の男、オコンクウォを中心に物語は進む。

    オコンクウォはレスリングのチャンピオンとして名をあげ、それからも堅固な意志と絶え間ない勤労により富を築いた。何人もの妻を抱え、村人からの信頼も厚い。
    オコンクウォは自分だけではなく他人にも非常に厳しい性格で、頑迷な一面も持つ。揺るぎない自分の正義を持つが、それに従わないのであれば妻も子供も殴って言うことを聞かせるというかなりの男性主義思想の

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    2023年10月10日
  • 崩れゆく絆

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    ネタバレ

    アフリカ文学は当然初めて。解説も読み応えあり。
    完全に未知なる世界である植民地支配前のナイジェリアでの日常自体が非常に興味深いし、ストーリーとしても面白い。登場人物名はンから始まったりするのでなかなか入ってこない。
    急に地方長官目線で語られる終わりはあっけなかった。

    村の運命を大きく変える白人は、スペインによる南米侵略とはまた違い、いくぶん平和的にも見えるがやはり傲慢である。主人公からするとキリスト教や改宗する人々は悪や腑抜けであるが、本書全体で見ると主人公の性格・村の風習の歪みはありありと見てとれ、単純な不正な侵略の告発といった形にはなっていない。
    特に触れられてはいないが、終盤の主人公の

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    2023年07月14日
  • ぼくらが漁師だったころ

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    最初はアフリカの馴染みのない文化、思想、そして人名や地名に困惑。
    わんぱくな4人兄弟の日常描写が狂人の予言を受けてからガラッと不穏な空気になり、あれよあれよと悪い方向に転がり落ちていく。やめてくれぇ、、、許してくれぇ、、、と思いながら読みました。
    少年たちのまっすぐさ、葛藤、未熟さに胸がギュッとなった。
    良い本を読んだなぁ。

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    2023年07月06日
  • 崩れゆく絆

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    遠い大地の文化・慣習が近くに感じられるほどの瑞々しい文章だが、それを理解するための小説ではなく想像させることが目的。
    注釈が丁寧でとても読みやすい。

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    2023年03月24日
  • ぼくらが漁師だったころ

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    表現力が素晴らしい。

    どんどん絶望的になって行く家族の状況に、「なんでこの本読んでるんだっけ…」と思いながらも読み進め、でも読後感は悪くなかったので良かったです…。

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    2023年03月14日
  • ぼくらが漁師だったころ

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    ★憎しみは蛭だ。人の皮膚にくっついて栄養を吸い上げ、精神から活力を奪う。人をすっかり変えて、最後の一滴の平穏を吸い尽くすまで離れない★

    ナイジェリアの作家さんということで、その国の政治状況とも関連づけられながら書かれたこの作品は、ナイジェリアの国そのものを投影しているようだった。

    登場人物の性格や人柄を虫で例えているのが、とても生々しく繊細だった。

    憎しみが心にへばりついて剥がれなくなっていき、一方で倫理観も持ち合わせており、憎しみに染まりながらも倫理観に従わんとする葛藤が絶妙で、高潔だった。

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    2023年01月23日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

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    ミステリ、サスペンスとしての面白さもさることながら、簡潔でリズミカルな文体がとても良い。以前ノリウッド映画で垣間見たラゴスの街や邸宅、快活な女性たちがまとうカラフルな衣装を思い浮かべながら読んだ。ぜひ映画化してほしい。

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    2021年12月19日
  • 崩れゆく絆

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    19世紀のナイジェリアが舞台。
    独自の神を信じ崇め、家族・ムラという単位で生活していた共同体に、キリスト教伝道師の入植により植民地化していく様を描く。中盤までは、文化や生活、信仰などについて淡々と描かれていますが、その後の畳み掛けるような展開がすごい。
    時代も国も違いますが、どこか今の社会にも共通するような点があるようにも感じました。何かが変わっていく時、多くの犠牲が伴うこともあります。自分たちが守って疑わなかったことであれば尚更。四部作のようですが日本語訳がないのが残念です。最後の一文が辛い。

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    2021年10月30日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

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    コメディ寄りかと思ったら全然そんなこともない。
    シリアルキラーの妹を持つ真面目な姉が主人公。
    滅茶苦茶に読みやすくて展開も面白かった。
    話のつくりがうますぎる

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    2021年07月16日
  • 崩れゆく絆

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    ネタバレ

    初めてアフリカ文学を読んでみた。内容としては特に難解というわけではない。始まりから2/3程度までは、主人公のコミュニティの儀礼、慣習、信仰などが細かく描かれている。若干冗長だなと思いつつ読み進めていくと、イギリス人がキリスト教という道具を持参して、植民地化の目的のもと渡来してくる。そこからはあれよあれよという間に物語が進展していき、あっけなく悲惨な結末を迎えてしまう。終盤のあまりに淡泊な描写には呆気に取られてしまった。だが、そこにはアチェベの思念が宿っているのだろう。長い年月をかけて築かれてきた現地の文化(始めから2/3)が、植民地化政策によってあっという間に瓦解していく。(残り1/3)その速

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    2017年10月09日
  • 崩れゆく絆

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    アフリカ文学というくくりが正しいのか、自信が持てないが、疑いの余地なく、優れた文学である。

    未知の世界。加えて、読みにくい、非直線的な書き口。私から見ると、非情で、矛盾を感じる文化。

    しかし、最後まで読み通し、その言われようのない悲劇的結末に接し、全てに予期せぬ意図を感じたのだ。人間社会、人間とはいかに信頼に値しないか。

    社会分裂、変化、崩壊の触媒としてのキリスト教。

    『ルーツ』で書かれた世界は一面に過ぎなかった。

    語り手が、登場人物の視点が、内と外を往還し、不条理をあぶり出す。その文学性に感嘆した。

    くり返すが、深い次元で声を失った作品であった。

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    2017年04月14日
  • 崩れゆく絆

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    少し前に文庫化されぜひ読みたいと思っていた一冊。アフリカ文学の父といわれる、チヌア・アチェベの記念碑的一冊ということ。アフリカ文学には聡くないので、そういう意味での評価はできないが、歴史的背景も合わせて様々な学びを与え、人間と歴史の気づかない側面を教えてくれた。

     未開のアフリカ、一部族を取り巻く現代の侵入とりわけ西洋、キリスト教の侵入を描いている。レヴィ=ストロースをはじめとする文化人類学の発展は、未開の兄弟たちに対する人権的な意味での理解を進めてくれた。キリスト教主義からの絶対史観がよろめいてしばらくたったところに新たに相対的な視点を与えてくれた。この作品はそういう視点に立っているといえ

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    2015年03月29日
  • 崩れゆく絆

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    ネタバレ

    ヤムイモのリアリズム。アチュべはナイジェリア出身の作家。ナイジェリアはヤムイモ産出量世界1位。なによりもまず重要なのはイモであり、あらゆる食事にヤムイモなのである。
    客人がやってきてに「コーラあるよ」ともてなすのだが、これはコカコーラの原料の「コーラの実」のようである。覚醒作用があるようなのでやっぱりお酒かドラッグみたいなものなのか。
    ナイジェリアの生活様式が興味深い。村で生活するためのシキタリ。それを決めるのは長老かお告げ師である。長生きできることが尊敬に値する、というのは子供の生存率が低いということからも分かる。
    コミュニティでは親分から種イモをもらって小作は畑を肥やしそれが生活の糧となる

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    2015年07月14日
  • 崩れゆく絆

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    ずっと読みたいと思っていた本の新訳が発刊されており、やっと読むことができた。

    本書はアフリカ文学の古典として非常に有名であり、ナイジェリアの東部、イボ人の作家、アチェベ(Chinuo Achebe)によって書かれた作品であり、1958年に出版されたものである。

    アフリカ全体として独立の機運が高まっていた前夜に出版され、植民地支配がどのようにナイジェリアの社会、国家に浸透していったのか、そして、それらがどのように変化してしまったのかを見事に描いている。タイトルが表わす通り(原著はThings Fall Apart)、社会、共同体での慣習が徐々に侵され、人々の絆が崩れていく。

    結末は虚をつか

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    2025年09月13日
  • 運命の男たち

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    主人公が収監されてからが読ませる。裁判の滑稽さ、弁護人の醜悪さ、アングロの人種差別が際立つ。冤罪ではなくて捏罪。いつまでこんな話を読まされるのかなと思うけど、いつまでもこんな話が続くのだろうなとも。声をあげられるようになっただけ少しはまともになったのだろうけど、この世界はまだまだ差別抑圧が蔓延っている。ガザ……。

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    2025年08月05日
  • 崩れゆく絆

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    アフリカ文学の父と呼ばれるアチェベの作品。まったく異なる文化圏の生活様式及び主人公オコンクウォの気持ちの変化を仔細に描き出すばかりでなく、文章構成、全体構成も用いて彼らイボ人の重んじる価値観(結論の周りをぐるぐると回るように徐々に本筋に近付いていく話し方)及び崩れゆくイボ人の文化、オコンクウォたちの絆が描かれ、タイトルに恥じない作品であったと評価する次第である。また、作者本人もイボ人であり、植民地支配をしてきた北欧諸国により定着されたアフリカのイメージを覆そうとする熱意が読み取れる。

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    2024年08月21日
  • ぼくらが漁師だったころ

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    憎しみは蛭だ。人の皮膚にくっついて栄養を吸い上げ、精神から活力を奪う。

    アブルに毒を飲ませても死ななかった時
    無傷の親指を血溜まりに浸して血まみれにすることと、親指が切り傷の血で濡れることは全く違うと理解したはずだ。

    やはりアフリカ文学ってことで、考え方とかがまるで違うと感じた。そしてそれ故に読みにくい部分は確かにあった。ただ、あとがきの部分を読んで納得した。狂人であるアブルの登場は、ナイジェリアからみたイギリスであり、ここに対比が存在する。エンタメを楽しむには、それ相応の知識や経験が必要なのだと強く感じた。しかし、アフリカ文学も面白いということを発見できたのは大きな収穫。ジャンルや国に囚

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    2024年03月26日
  • 崩れゆく絆

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    植民地支配される前のアフリカの伝統的な暮らしの素晴らしさを描き、欧州の文明到来により崩壊していく嘆かわしいお話かと思っていたら、もっと深くてたくさんの要素が詰まったお話でした。
    アフリカの集落の日常は物珍しく、慣習や考え方の違いは読んでいておもしろいですが、予想外に残酷で不可解だし、英雄オコンクゥアはいけすかない暴力男で正直モヤモヤしました。
    キリスト教については否定も肯定もありませんが、人々を無駄に苦しめない点で、少なくとも呪術よりよっぽどいいし、植民地化されて安心して暮らせるようになってよかったのでは?と思いました。
    登場人物の名前が難しすぎて、もはやおもしろい。そして、大量の注釈に尻込み

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    2024年03月21日
  • 崩れゆく絆

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    重い話でした。
    伝統を守るとは?
    その中で地位を築くためには?
    その一方で、その伝統に潜む非科学的・非人道的な掟を守り続けるのはなぜか。
    それらを打破するのが、侵略に依ってしまうのが辛い。

    初めてのアフリカ文学。
    田舎者の私には、舞台となった前世紀初頭のナイジェリアの話が、なんだか知らない世界の話ではなく、読んでいる間中、本当に息苦しかったです。

    なんというか、父のようにはならないと決めた主人公が、その地で認められるよう努力してきたのに、一つの選択ミスが命取りになってしまう…

    最後になぜ自死を選んだのか、初めはよくわからなかったのですが、戦おうとしたのは自分だけ、と気づき絶望したから…と

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    2024年02月26日