粟飯原文子のレビュー一覧

  • 楽園

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    ネタバレ

    「まずは少年。名はユスフ。」
    この1行目から物語への期待が高まる。
    ストーリーは簡単に言えばユスフの成長物語だけど、著者が植民地支配や迫害の跡に目が向けられる前のアフリカを描きたかったと言うように、複雑な要素を含むアフリカを知れる歴史認識本だと感じた。
    「楽園」はただアズィズおじさんの庭の意味だけではなく、作中に複数の人が自分の描く「楽園」について語る。
    ラストのユスフの選択には驚かされたが、庭師のムゼー・ハムダニの自由、カラシンガの信仰などの話の他、父と母がもういないと知ったことも大きかったのだと思う。
    ユスフは隷属状態に徐々に疑問を抱くようになっていたし、気付かぬうちにどん底に落ちている糞

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    2024年09月19日
  • 崩れゆく絆

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    アフリカ文学の父と呼ばれるアチェベの作品。まったく異なる文化圏の生活様式及び主人公オコンクウォの気持ちの変化を仔細に描き出すばかりでなく、文章構成、全体構成も用いて彼らイボ人の重んじる価値観(結論の周りをぐるぐると回るように徐々に本筋に近付いていく話し方)及び崩れゆくイボ人の文化、オコンクウォたちの絆が描かれ、タイトルに恥じない作品であったと評価する次第である。また、作者本人もイボ人であり、植民地支配をしてきた北欧諸国により定着されたアフリカのイメージを覆そうとする熱意が読み取れる。

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    2024年08月21日
  • ぼくらが漁師だったころ

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    憎しみは蛭だ。人の皮膚にくっついて栄養を吸い上げ、精神から活力を奪う。

    アブルに毒を飲ませても死ななかった時
    無傷の親指を血溜まりに浸して血まみれにすることと、親指が切り傷の血で濡れることは全く違うと理解したはずだ。

    やはりアフリカ文学ってことで、考え方とかがまるで違うと感じた。そしてそれ故に読みにくい部分は確かにあった。ただ、あとがきの部分を読んで納得した。狂人であるアブルの登場は、ナイジェリアからみたイギリスであり、ここに対比が存在する。エンタメを楽しむには、それ相応の知識や経験が必要なのだと強く感じた。しかし、アフリカ文学も面白いということを発見できたのは大きな収穫。ジャンルや国に囚

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    2024年03月26日
  • 崩れゆく絆

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    植民地支配される前のアフリカの伝統的な暮らしの素晴らしさを描き、欧州の文明到来により崩壊していく嘆かわしいお話かと思っていたら、もっと深くてたくさんの要素が詰まったお話でした。
    アフリカの集落の日常は物珍しく、慣習や考え方の違いは読んでいておもしろいですが、予想外に残酷で不可解だし、英雄オコンクゥアはいけすかない暴力男で正直モヤモヤしました。
    キリスト教については否定も肯定もありませんが、人々を無駄に苦しめない点で、少なくとも呪術よりよっぽどいいし、植民地化されて安心して暮らせるようになってよかったのでは?と思いました。
    登場人物の名前が難しすぎて、もはやおもしろい。そして、大量の注釈に尻込み

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    2024年03月21日
  • 崩れゆく絆

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    重い話でした。
    伝統を守るとは?
    その中で地位を築くためには?
    その一方で、その伝統に潜む非科学的・非人道的な掟を守り続けるのはなぜか。
    それらを打破するのが、侵略に依ってしまうのが辛い。

    初めてのアフリカ文学。
    田舎者の私には、舞台となった前世紀初頭のナイジェリアの話が、なんだか知らない世界の話ではなく、読んでいる間中、本当に息苦しかったです。

    なんというか、父のようにはならないと決めた主人公が、その地で認められるよう努力してきたのに、一つの選択ミスが命取りになってしまう…

    最後になぜ自死を選んだのか、初めはよくわからなかったのですが、戦おうとしたのは自分だけ、と気づき絶望したから…と

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    2024年02月26日
  • 崩れゆく絆

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    読んで良かったと思う。
    アフリカについて世界史じゃない文学として初めて触れたと思うけど、なんともやるせない気持ちになった。
    植民地前の文化が全て肯定出来るわけでもなく、まして支配者側の考えが受け入れられるわけもなく。
    ただ後世の私はこれを読んだことがいつか何かの基準になると思った。

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    2024年01月02日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

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    初のハヤカワミステリ。
    読みやすい文体で、細かい節に区切られているのでサクサク読めました。
    妹怖すぎ、かつての父親ももっと怖いけど。

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    2022年12月16日
  • 小さきものたちのオーケストラ

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    ネタバレ

    チノンソはとても心優しい人で人の為に動ける人ではあるけど物語が進むにつれて元々の気質である暴力性だったり自己犠牲的だなぁと思った。

    物語が不運すぎるのもあってか怒りや悲しみ羞などの心の描写が分かりやすい

    人の出来る限界、人に降り掛かる不運についても、鶏は何が起こっても泣いて喚く事しか出来ないと重なって、自分でどうにもならない事ってあるよねと言うのがタイトルからも内容からも感じた。

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    2022年12月11日
  • 崩れゆく絆

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    「読書会という幸福」(向井和美/岩波新書)で紹介されていた本。初めてのアフリカ文学ですが、読みどころの多い小説でした。著者のアチェべはナイジェリア出身のイボ人作家。
    1958年にロンドンで発表された本書は「アフリカ文学の父」と呼ばれるアチェべの最高傑作とされています。

    (以下、プロットに若干触れます)

    本書は3部で構成されます。第1部は架空の村ウムオフィアにおける慣習、神々、呪術の数々と主人公オコンクウォの人となりを描き、オコンクウォが犯してしまった過失で終わります。第2部はオコンクウォの流刑先での日常と拡大する白人の植民地支配を描き、第3部ではオコンクウォの悲劇が描かれます。

    本書の読

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    2022年12月06日
  • 崩れゆく絆

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    アフリカ文学初読み。
    イボ人の伝統と生活習慣が色鮮やかに語られていく。異文化を体感できるのは読書の醍醐味だ。
    主人公が最後に選択したものが消化しきれない。また時間を置いて読み返したい。

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    2022年08月02日
  • 小さきものたちのオーケストラ

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    ネタバレ

    読み進めるにつれて、気分が重くなった。

    優しさの影も形もない姿になってしまった宿り主。それが、彼女への愛と、負った苦しみの大きさを物語る。

    小さきものたちとして生まれたら、仕方のない結末なのだろうか。この後の人生で幸せを感じる出来事があることを願いたい。

    一方で、いつも復讐に燃えている宿り主は、手放すことや自分を鑑みることなしには、結局、幸せにはなれないのかもと思った。(例えば彼女と結婚出来ても何かあれば、彼女を恨み始めそう)

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    2022年05月20日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

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    ナイジェリアの作家が描く、サイコミステリー。交際相手を殺しがちな妹、その後始末を手伝う姉。姉妹の性格も容姿も真逆といってよい。
    家族、ジェンダーなども描きつつ話が進むが、重たくなりすぎず軽妙で読みやすいこの作品。ほんの1-3ページずつに章が分けられて描かれているのも驚きだが、重たいシーンでも軽妙なジョークが挟まれる。ナイジェリアの文化なのではとのこと。この独特な感覚は、ぜひ味わってほしい。
    お勧めです。

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    2022年03月13日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

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    妹の殺人の後始末,過去のトラウマ,ほのかな恋,抑えきれない感情を目覚めない患者に語りかける看護師のコレデ.その出口の見えない姉妹の関係に胸が痛む.
    次々と起こる事件をサクサクと明快に書き分けて,会話も巧みでとても面白かった

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    2022年01月07日
  • 小さきものたちのオーケストラ

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    最近ミステリを読まないのは意味のなさない長い人名、役職の肩書きなど単語が長文化したものの羅列に振り回されたあげく、中身もないので、ただ車酔いだけしただけのような感覚に陥るからである。
    この作家はそうとう血肉削って書いてるのだろう。たまにつるっと骨と肉が離れるチキンもあれば、反対に、ぼそぼそ骨にこびりつく(かに肉のような)のもあり、この人の文章を読んでてそういうイメージが浮かんだ。
    あらすじだけいうと身分の違う男女が「正式に」結婚するために起こした行動の結果。ちょっとねー、どうしてこんなに後半男性は受け身で意思表示しないのか不思議だった

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    2021年11月15日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

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    ネタバレ

    機能不全家族という土壌で形成された姉妹の歪な絆。理解し難い所もあったけど、人命の軽い国では割り切りの良さがないと幸せは手に入らないのかも。
    軽快に流れる文体は、不気味な世界に独自のユーモアを与えていて面白いなと思いました。

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    2021年09月11日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

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    なんとも珍しいナイジェリアミステリ。

    人物描写や人間関係にそこはかとなく文化色を感じ、序盤やや馴染めない感じがしたが、凝縮された3~5ページからなる章を連ねた小気味よい構成に引き込まれていった。

    何故か付き合う男、付き合う男をナイフで殺めてしまう妹アヨオラに振り回される姉のコレデ。
    アヨオラの次なる標的はコレデが職場の病院で密かに想いを寄せる医師のタデ。
    アヨオラのぶっ飛びっぷりと、その言動を諫めながらも心の底では血の繋がりによる愛情を捨てきれないコレデの物語の行きつく先はどこなのか。

    とてもサスペンスフルで、なるほどおもしろいと感じた。
    結末が期待していたほどひねりの利いたものではなか

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    2021年05月07日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

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    あっという間にクライマックスを迎えてしまった。サクサク読めるしコミカルなところもあるのだけれど、これそうとうトチ狂った姉妹の物語だぞ!?(褒めてる

    嫌いじゃないよ。コレデ。きみがいちばんトチ狂ってる。この二人は今後もこうして生きて(殺して)いくのかしらと先々を思うとまたゾッとする…

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    2021年04月02日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

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    ネタバレ

    意外に小さい本ということにまずビックリ。
    お話自体はテンポ良く、読みやすかったです。長女同士感情移入できるかな..と思ったけど、全然そんなことはありませんでした。あんな妹いらん笑 でも魅力的なことはよく伝わりました。人物の見た目の描写はすごく良くて、しっかり想像できました。
    主人公が日本的だなと感じ、周りにイラッとするだろうなってこととか、そんなところは共感しました。
    多分アフリカの作家さんの本は初めてです。周囲の描写が新鮮でした。

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    2021年03月09日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

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     ナイジェリア発新人女性作家によるデビュー・ヒットということである。ロンドンとナイジェリアの大都市ラゴス島を往来する若き女流作家(1988年生)のこれまでの人生がどのようなものかはわからないが、英国へ留学し、キングストン大学の学位を取得している上流育ち。写真は可愛らしくお洒落なイメージ。

     まずはアフリカ発ミステリーというだけでも珍しいし、数々のミステリー賞を獲得したという、本作の煽情的なタイトルも話題性豊かで目立つだろう。ちなみに本書は、二百ページに満たない短めの小説である。内容は細かく区切られた章立てによる、場面転換の豊富な、とても読みやすく興味深い作品であった。

     三人以上の殺人で「

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    2021年03月05日
  • マイ・シスター、シリアルキラー

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    真面目な姉と奔放な妹の絆と葛藤、家族の闇、薄っぺらい人びと、重めのテーマだが短く簡潔でポップな文体で淡々を進められるストーリーテリングが新しい。どうしょうもない状況なのになんだか明るいところがアフリカらしいのだろうか。

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    2021年02月28日