アチェベのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
イボ社会を英語で執筆し、日本語に訳された。
解説や訳者あとがきも含めて、全部読んでから、改めて原題を見た。
THINGS FALL APART
しっくり来た。
訳者あとがきまで読んでから再読すると、挿入されているイボ社会の口承が、何を暗示しているのか、感じることが変わっていくだろう。
もともとの豊かな文化と高度に機能していた社会、そこにある多くの矛盾には入り込み、傷口を無理やり開くかの如く侵入していったキリスト教社会。
植民地教育を受けていた著者ならではのフィクション。この読後を表現するのは難しい。
以前読んだ別のナイジェリア人の作家を思い出す。アフリカ文学に、さらに興味が強くなる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ近代アフリカ文学の原点と称されるアチェべの名作小説。
舞台はヨーロッパ人によるアフリカの植民地化がはじまりつつあった19世紀後半の西アフリカ(現ナイジェリア)。
絶え間ない努力と武勇によって若くして富を築いたイボ人の男、オコンクウォを中心に物語は進む。
オコンクウォはレスリングのチャンピオンとして名をあげ、それからも堅固な意志と絶え間ない勤労により富を築いた。何人もの妻を抱え、村人からの信頼も厚い。
オコンクウォは自分だけではなく他人にも非常に厳しい性格で、頑迷な一面も持つ。揺るぎない自分の正義を持つが、それに従わないのであれば妻も子供も殴って言うことを聞かせるというかなりの男性主義思想の持ち主でもある。
オコンクウォを含む集落の人々は伝統を守り、アニミズムを信仰することで強固な絆を築き、平穏な日々を謳歌していた。
しかし、ある日オコンクウォは事故により集落を7年間追放されることとなる。
母の故郷で7年間の贖罪を務め、やっと集落に戻ってきたオコンクウォ。しかし、そこで見たのはヨーロッパからやってきたキリスト教に侵食され、人々の絆がバラバラになってしまった姿だった。
これが本書のあらすじ。
シンプルなストーリーだが、回想が急に挟まったり反復が多かったりして読みやすい本ではない。言語・文化面のギャップも当然大きいので、序盤は読み進めるのに時間が掛かった。
しかし、読み終えると非常に示唆的な内容だったと感じる。
本作が発表されたのは1958年、アフリカ諸国が長く続いたヨーロッパの支配から脱却して自立に向かって歩を進める、不安と期待に満ちた激動の時代。
そんな中、アチェべは敢えて植民地化前に存在していた複雑で成熟したイボ人の社会を描くことで独立前夜の同志たちを奮い立たせたと言える。
また、侵略が必ずしも真正面からの戦いによって行われるものではないというメッセージを発していると感じた。
本作でも、ヨーロッパ人によるはじめの侵攻は武器ではなく宗教を使って行われた。まずキリスト教の宣教師たちを送り込み、徐々にイボ人のコミュニティを分断していった。これは実際に起こった話でもある。
これは現代においても普遍的なメッセージだと思う。正々堂々とした侵略などないし、多くの人がそれに気付いた頃にはもう手遅れなのだ。
さらに、アチェべは本作でイボ人の社会において陰となっていた人々にもスポットを当てる。
作中では「オス」と呼ばれるイボ人の村から隔離され迫害されていた人々が、キリスト教の最初の担い手となり自分たちを迫害していたコミュニティを壊す一役を担う。
初めから内部に抱えていたある種の「ひずみ」が、外部からの変化によって浮き彫りとなり内部の瓦解に繋がる。このあたりの描写もよくできている。
内部のひずみを抱えるという面では、オコンクウォその人も同じだ。
彼は物語の終盤でヨーロッパ人に良いようにされる故郷を見て、ヨーロッパ人、さらにそれを諦観する村の人々に対する怒りを抱えきれなくなる。そして、彼はヨーロッパ人を殺し、自らも命を絶つことになる。結果、オコンクウォは新しい社会にも、古い社会にも居場所はなくなり、「犬のように」埋められてしまう。
この最期は悲劇である。しかしこれはオコンクウォの中にある暴力性、頑迷さが暴走した結果でもある。彼の性質は、基本的には対話と調和を重んじるイボ人社会と大きく乖離していたのだ。
これも、彼の内部に抱えたひずみが表出化した結果だと読み取れるだろう。
このように、本作はアフリカの歴史に大きな影響を与えた歴史的な作品でありながら、現代にも通ずる普遍的なメッセージを与えてくれる名作である。
注釈、解説も充実しており、いろいろな読み方ができる。おすすめの一冊。 -
Posted by ブクログ
ネタバレアフリカ文学は当然初めて。解説も読み応えあり。
完全に未知なる世界である植民地支配前のナイジェリアでの日常自体が非常に興味深いし、ストーリーとしても面白い。登場人物名はンから始まったりするのでなかなか入ってこない。
急に地方長官目線で語られる終わりはあっけなかった。
村の運命を大きく変える白人は、スペインによる南米侵略とはまた違い、いくぶん平和的にも見えるがやはり傲慢である。主人公からするとキリスト教や改宗する人々は悪や腑抜けであるが、本書全体で見ると主人公の性格・村の風習の歪みはありありと見てとれ、単純な不正な侵略の告発といった形にはなっていない。
特に触れられてはいないが、終盤の主人公の自死は、ウムオフィア旧社会における「女々しい」行為だろうか?そうなのであればさらに悲劇的だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ初めてアフリカ文学を読んでみた。内容としては特に難解というわけではない。始まりから2/3程度までは、主人公のコミュニティの儀礼、慣習、信仰などが細かく描かれている。若干冗長だなと思いつつ読み進めていくと、イギリス人がキリスト教という道具を持参して、植民地化の目的のもと渡来してくる。そこからはあれよあれよという間に物語が進展していき、あっけなく悲惨な結末を迎えてしまう。終盤のあまりに淡泊な描写には呆気に取られてしまった。だが、そこにはアチェベの思念が宿っているのだろう。長い年月をかけて築かれてきた現地の文化(始めから2/3)が、植民地化政策によってあっという間に瓦解していく。(残り1/3)その速度は、このページ数の配分によって具現化されていると感じた。
文化の脆さというのも感じずにはいられなかった。人間は空想する能力があるからこそ、神話や宗教を作り上げて、他の動物とは比べものにならない規模のコミュニティを形成することができる。そうして育まれた文化にも、どかしらに欠陥がある。この作品で言えば、差別対象とされていた人々が端的な例だろう。そうした人々をキリスト教が受け入れ、対立因子を徐々に拡大させていった。そうして、強固だったはずの絆は崩れてしまったのだろう。
帝国主義時代のダイナミズムを存分に感じ取れる一冊だと思う。 -
Posted by ブクログ
アフリカ文学というくくりが正しいのか、自信が持てないが、疑いの余地なく、優れた文学である。
未知の世界。加えて、読みにくい、非直線的な書き口。私から見ると、非情で、矛盾を感じる文化。
しかし、最後まで読み通し、その言われようのない悲劇的結末に接し、全てに予期せぬ意図を感じたのだ。人間社会、人間とはいかに信頼に値しないか。
社会分裂、変化、崩壊の触媒としてのキリスト教。
『ルーツ』で書かれた世界は一面に過ぎなかった。
語り手が、登場人物の視点が、内と外を往還し、不条理をあぶり出す。その文学性に感嘆した。
くり返すが、深い次元で声を失った作品であった。 -
Posted by ブクログ
辛かったけど面白かった。移民社会の到来や選択的夫婦別姓の導入などにおいて、現代日本社会でも積極的に読まれるべきだと思う。
と同時に、おそらく大多数の日本人が植民者目線でこの本を読むんじゃないかと思った。私たちはオコンクォのことを愚かで分からずやの頑固者だと憐れみを持って見つめるけれど、そのまなざしって……内面化された植民地主義とその優劣、過度なエキゾチシズムみたいなものから一向に抜け出せてないよね。いくらポストコロニアリズムを叫んだとて、結局のところ未だ私たちは、植民地支配の思想的影響を完全に抜きにしてアフリカ文学を楽しめないのかと思うと悲しい。リアリズム小説とマジックリアリズム小説の二派閥みたいになってるのも悲しい、混じり合ってるはずなのに。なんなんだろうこの気持ちは……。 -
Posted by ブクログ
ずっと読みたいと思っていた本の新訳が発刊されており、やっと読むことができた。
本書はアフリカ文学の古典として非常に有名であり、ナイジェリアの東部、イボ人の作家、アチェベ(Chinuo Achebe)によって書かれた作品であり、1958年に出版されたものである。
アフリカ全体として独立の機運が高まっていた前夜に出版され、植民地支配がどのようにナイジェリアの社会、国家に浸透していったのか、そして、それらがどのように変化してしまったのかを見事に描いている。タイトルが表わす通り(原著はThings Fall Apart)、社会、共同体での慣習が徐々に侵され、人々の絆が崩れていく。
結末は虚をつかれるほど、唐突だった。
ただ、植民地となる以前のナイジェリア、特にイボの社会が民族誌として読まれている、と言われるのもうなずけるほど、詳しく描かれている。
そこには私たちにはなじみのない、慣習や呪術、社会のあり方が表現されているが、アチェベ自身も植民地のエリート教育を受けた知識人の一人であり、自らの社会のルーツを求め、描いたそうだ。
また、後半に描かれる、イギリスがどのようにナイジェリアの社会に浸透していったのか、その様子が非常に興味深い。
一見、強固に見えるイボの村落の伝統や習慣、人々の絆であるが、その社会が孕む矛盾や問題、そこから排除された人々をキリスト教徒は取り込むことに成功している。当初、キリスト教の信仰者はそのような社会からはみ出したものの集まりとして徐々に勢力を増していっている。
主人公のオコンクウォは頑強に村落の伝統や習慣をまもろうとするが、それは皮肉な形で終わってしまう。
さまざま、考えさせられる小説だった。また読み直してみたいと思う。 -
Posted by ブクログ
植民地支配される前のアフリカの伝統的な暮らしの素晴らしさを描き、欧州の文明到来により崩壊していく嘆かわしいお話かと思っていたら、もっと深くてたくさんの要素が詰まったお話でした。
アフリカの集落の日常は物珍しく、慣習や考え方の違いは読んでいておもしろいですが、予想外に残酷で不可解だし、英雄オコンクゥアはいけすかない暴力男で正直モヤモヤしました。
キリスト教については否定も肯定もありませんが、人々を無駄に苦しめない点で、少なくとも呪術よりよっぽどいいし、植民地化されて安心して暮らせるようになってよかったのでは?と思いました。
登場人物の名前が難しすぎて、もはやおもしろい。そして、大量の注釈に尻込みしてさくさくと読めませんでしたが、物語自体は割と短めです。
物語のあとの解説はもっと難しく長くて大変でしたが、気づかなかった作品の細かな点を知れるのでお勧めです。 -
Posted by ブクログ
重い話でした。
伝統を守るとは?
その中で地位を築くためには?
その一方で、その伝統に潜む非科学的・非人道的な掟を守り続けるのはなぜか。
それらを打破するのが、侵略に依ってしまうのが辛い。
初めてのアフリカ文学。
田舎者の私には、舞台となった前世紀初頭のナイジェリアの話が、なんだか知らない世界の話ではなく、読んでいる間中、本当に息苦しかったです。
なんというか、父のようにはならないと決めた主人公が、その地で認められるよう努力してきたのに、一つの選択ミスが命取りになってしまう…
最後になぜ自死を選んだのか、初めはよくわからなかったのですが、戦おうとしたのは自分だけ、と気づき絶望したから…と思い至りました。
主人公の親友オビエリカは、聡明な参謀タイプ。伝統の矛盾に気づいているが、行動には起こさない。伝統に静かに従う…
100%支持はできないが、恐らく自分もそうしてしまう。
かと言って、主人公の生き方もちょっとやりすぎ感はある。集団を引っぱるためには必要な強さではあるけれど…
人名が難しく、何度も前のページに戻りながら読み進めました。
原題はエピグラフのイェイツの詩から。
物事がばらばらになる。本当に悲しい。
Things Fall Apart
最後の主人公の埋葬のくだりは、本当に悲しい。
アフリカ大陸が侵略された歴史、文明化することの暗い面、支配者側の非道をも見ました。
読めて良かった。辛かったけれども。
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Posted by ブクログ
「読書会という幸福」(向井和美/岩波新書)で紹介されていた本。初めてのアフリカ文学ですが、読みどころの多い小説でした。著者のアチェべはナイジェリア出身のイボ人作家。
1958年にロンドンで発表された本書は「アフリカ文学の父」と呼ばれるアチェべの最高傑作とされています。
(以下、プロットに若干触れます)
本書は3部で構成されます。第1部は架空の村ウムオフィアにおける慣習、神々、呪術の数々と主人公オコンクウォの人となりを描き、オコンクウォが犯してしまった過失で終わります。第2部はオコンクウォの流刑先での日常と拡大する白人の植民地支配を描き、第3部ではオコンクウォの悲劇が描かれます。
本書の読みどころは
1)ウムオフィアにおける慣習の詳細な記述
植民地支配以前でも、アフリカ社会は独自の発展を遂げていて、独自の司法制度、民主的統治システム、倫理観を持っていたことには驚きました。しかし、一方では呪術に支配され、常識よりも神々のお告げが優先される世界です。神託により殺されてしまう罪なき少年の描写は理解できませんでした。
2)オコンクウォの人物描写
極端な家長父制、男尊女卑の世界での誇り高く、ストイックな男が描かれます。最後の悲劇を招いてしまうまで、その性格はブレることがありません。冒頭、反面教師であったオコンクウォの父親の描写がありますが、その対比も興味深いものがありました。
3)植民地支配との葛藤
終盤、英国のキリスト教世界がウムオフィアに入ってくるあたりから物語は大きく展開します。単純にアフリカ文化=善、植民地支配=悪と描いていないところに物語を厚くしています。
本書は植民地支配以前のアフリカ、植民地支配との葛藤を垣間見るには絶好の本。物語としても面白く、読書の快感が得られました。お勧めと思います。 -
Posted by ブクログ
・アフリカ文学史上最高と呼び名の高い小説
・アフリカの村で一代で名声を築いた男が主人公
・父親を反面教師に努力をする
・隣の村と戦争を起こす代わりに人質を捉えて自分の家で育てる
・村のならわし、神のおつげにより、自ら大事にしていた人質の子を殺めてしまう。そこから暫くは食事もせず。
・偶発的な事後で同族を殺してしまったことでオコンクウォは流刑されて、母親の親族の村で7年間過ごす
・そのかん、イギリスの植民地支配でキリスト教が蔓延。
・オコンクウォが7年後に戻ってから、イギリス白人と村の一族との対立
・オコンクウォは白人の首を跳ねて、後日に木に首を吊って自殺するという衝撃な最後。