アチェベのレビュー一覧

  • 崩れゆく絆

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    アフリカ文学の父と称されるアチェベの代表作。アチェベの名前、どこかで聞いたことがあると思ったら、コンラッドの「闇の奥」についての論争について読んだときに名前をみかけたようだった。
    本書は19世紀のナイジェリア、イボの文化を描き出すとともに、それがイギリスによる植民地支配により崩れ行くさまを、戦士として誇り高い地位にあった主人公、オコンクウォの転落に重ねて描き出す。前半のイボの文化は興味深いが、アフリカの独自性を描き出すというよりは、その中で葛藤する個人を描こうとしていると言える。その点ではオーソドックスな小説とも言えるが、それまでアフリカ人を主人公としてこなかった小説世界が、アフリカを舞台にオーソドックスな小説を構築できるのか、そこにチャレンジがあったということだと理解した。

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    2020年10月10日
  • 崩れゆく絆

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    ◆石川直樹さんのおすすめ

    キリスト教が入ってきたときに
    今現在虐げられてたり
    今現在の価値観に疑問を持っている人たち
    (双子を堕胎しなければならなかった母親など)
    が改宗していったというところに
    なるほどなぁと思う

    もともといた人たちの世界観の中に
    新しく場所を設けて
    考えを拡げていく

    どちら目線かで全く変わってくるけれど
    元いた方は「順番」の重要さを思って
    後発の振る舞いを理不尽に感じるのも
    仕方なく思う
    後から入っていく方は
    自分たちの「正しさ」を広めたいし
    受け入れられたいし
    そのために尽力もするだろう

    なんだあれ?と思われるような
    新しい考えは一見カルト的にも思えるだろう

    なにが後世に残るか?

    残っているものの
    「正しさ」なんて
    ほんとうのところ
    誰にもジャッジはできない

    排他的にならなければ
    たとえ脅威を感じていても
    共存できるのだろうか?

     

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    2020年07月06日
  • 崩れゆく絆

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    民族誌半分、物語半分。カメの昔話、家族の仕組み、ヤム芋の農業。歌や市場や巫女の存在意義、アフリカ文化の基礎知識がないから、珍しい。

    キリスト教の西欧がアフリカの人々の信仰を無慈悲に蔑み侵入してきたのを当事者の目から書いた、アフリカの人々 可哀想、なだけで終わらない文学。
    村人たち、とくに主人公オコンクォが男らしく(横暴とも言う)自分勝手で他人の心情を解さない男で。伝統を重んじ自分の力で長になろうと努力した主人公が、自分の今までの行いから、自分の精霊(チ)の運命に逆らえず結局超えられない、というところに皮肉と悲哀を感じる。

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    2019年06月27日
  • 崩れゆく絆

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    「アフリカ文学の父」による最高傑作と言われる。

    物語の前半は、徹底した労働により一代で名声を築く主人公オコンクウォの半生が語られる。彼の考える勇気の大切さ、怠惰への嫌悪などは息をのむほど。一方で、一夫多妻制の下での(現代の感覚から見れば)信じがたいほどの男尊女卑、子どもへの抑圧、「迷信」と呼ばざるを得ないような呪術。同時に、争いを避けるために精霊たちが村人に与える平和への知恵。そして後半、ここにキリスト教の宣教師がやってくる。

    初代宣教師は、村人のするどい突っ込みに受け答え、伝統的な慣習に理解を示しながら少しずつ信者を増やしていく(「神は一人といったり、神の息子がいると言ったりどっちなんだよ」といった質問から始まり、キリスト教を理解しようとするアフリカ人の合理的思考が胸を打つ。村の長老と宣教師の応酬は明らかに長老が勝っている)。

    こうして、村人たちの中に「・・・(キリスト教にも)どうやら何かが、とんでもない狂気のなかにも、おぼろげながら理屈のようなものがありそうだ、という感覚が広まりつつあった」(P.266)。
    厳格な父オコンクウォ(当然ながらキリスト教を激しく憎んでいる。)におびえながら生きる穏やかな息子ンウォイエが、讃美歌の響きに心揺さぶられるシーンは感動的。

    しかし後任の宣教師は、(よくあることだが)ゼロからスタートでないだけにかえって「正しい教えが浸透していない。迷信が残っている」と村人と摩擦を引き起こす。村人の抵抗。それを「鎮圧」する英国の植民地官僚たち。その様子は、先住民暴動の「平定」として記録されていく。

    「ライオンが自分の歴史家を持つようになるまでは、狩りの歴史はつねに猟師のものだ」
    “Until the lions have their own historians, the history of the hunt will always glorify the hunter.” アチェベが好んで使った言葉だそうだ・・・。
    (2015年11月のThe Economistより)

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    2019年01月05日
  • 崩れゆく絆

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    最後は痛烈。日本の明治維新における、漱石を初めとする文豪の問題意識や西郷隆盛の西南戦争と共通するところがあり、特に日本人にとっては、古くて新しい問題である。それは、第二次世界対戦後という現況にも問題を提起している

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    2018年08月11日
  • 崩れゆく絆

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    ネタバレ

    初めてアフリカ文学を読みました。
    まず、読み慣れていないので名前を見て誰かわからない。そもそも人なのか地名なのか神の名なのかわからないというような状態になりながらゆっくり読み進めました。

    アフリカの文化が、民族が白人によって少しずつ崩れてバラバラにされていく、そんな中それと戦う主人公の物語です。
    現代の日本人の感覚からするとアフリカの文化は理解できないことも多いです。さらに、それを受け入れるのに困難さを感じている現地の人も出てきます。
    しかし、無くなっても良いと簡単に言えるものではありません。
    一族の中にも温度差が生まれてきてそれに苦しむ。

    時代や状況は違えど多様性が叫ばれる現代でも学べることは多いと思いました。

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    2026年08月06日
  • 崩れゆく絆

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    アフリカの作家は初。昔ながらの部族のしきたりを守って暮らしている村の英雄が、ふとした事故で7年間の追放の憂き目にあう。戻ってきた頃にはイギリスの宣教師が入り込み、村の様子は一変している。ストーリーとしては、二つの面があると感じた。一つは植民地化する前、その過程の両方で、住民、特に部族内で虐げられていた女性や子供、差別されていた村民にとって、何が幸せかを考えさせられる。もう一つは主人公と村全体の運命。文明化の旗印のもと、過去の風習等は全て否定される。ただ、不潔なことや迷信に基づいた子捨て、双子の廃棄などは解消されるわけで、どこに線を引くのかは難しい。

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    2022年04月09日
  • 崩れゆく絆

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    「アフリカ文学」なるジャンルは初めて読んだ。使用言語は英語で、「英米文学」の欄に並んでた。
    西洋文明への批判でありながら、宗主国の言語で書かないと伝えることができない、というのが「弱者」の立場を象徴しているような。
    「宗教は脳の副作用である」(ジャレド ダイアモンドだったか)、「神は妄想である」(リチャード ドーキンス)という言葉が好きな身としては、やっぱり一神教はろくなもんじゃねえ、と改めて思った。
    アフリカの年寄りの言葉は含蓄が深いなあ。今の言葉で言うと、サステイナビリティファーストか。

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    2020年08月23日
  • 崩れゆく絆

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    ネタバレ

    ナイジェリア出身のイボ人作家 Chinua Achebe (1930-2013)による、アフリカ文学の金字塔と言われる作品です。

    前半は、19世紀後半の植民地化前のイボ族の共同体が、複雑かつ精緻な統治、信仰、慣習システムにより運営されている様子が、主人公であるオコンクウオを中心に描かれています。後半では、それが白人の宣教師たちによるキリスト教布教を境に瓦解していく様へと進行していきます。このあたりが、題名である”崩れゆく絆”をよく体現しています。

    この小説は1958年に出版されてますが、そのわずか2年後の1960年にナイジェリアが独立を果たしており、時代は違うものの過度期の不安定や焦燥といった気分が、当時の世相を反映していた、とも言われているようです。

    しかし、この小説をそうした歴史的あるいは民族史的側面からよりも、私はオコンクウオという男一人の生き様からとらえるほうが、面白く読めるような気がしました。そして、守護神であるチが運命を先導しつつ、個人の努力にもある程度呼応していく、という宿命論と自力更生的考え方の対置など、自省を促すようなテーマも込められており、多面的な側面を持つストーリーで一気に読んでしまいました。

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    2018年11月10日
  • 崩れゆく絆

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    植民地をめぐる黒人と白人の闘い!はそれほどメインではなく、一族の血気溢れる父親を中心に物語は進んでいく。部族の中では自分中心に家族を捉える考え方が基本であり、息子は部族の生き方に疑問を持ち、いち早く異教の宗教を受け入れ家族から離れることを決意。いずれ母や兄弟にもわかってほしい。そこに父親の存在はない。変わらない人として息子の中では勘定に入らない。父親は俺のやってきたことはなんだったのか、と当然悩む。確かに歩いてきた道なのだが、これからも進むべき道なのだろうか。時代の流れって残酷だ。流されない者にとっては。

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    2018年08月31日