E.H.カーのレビュー一覧

  • 危機の二十年 理想と現実

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    本書は、第一次大戦後から第二次大戦前の20年間の戦間期を分析することで、国際関係の過去をたどり未来を見通すという試みである。
    初版は1939年であるが、この翻訳は、1945年に若干の修正を経て出版された第二版のものである。
    第一章〜第十四章という構成で、大枠の内容は、
    ・国際政治(Ⅰ〜Ⅵ)
    ・力と道義(Ⅶ〜Ⅸ)
    ・法と条約(Ⅹ〜ⅩⅢ)
    上記に加えて、第十四章の結論という構成だ。

    端的に言うと本書におけるカーの主張は、イギリスという大国の出身でありながら、
    「大国と小国」「満足国と不満足国」「支配国と被支配国」という対比の中で、20世紀以降においては、譲り合いや自己犠牲という道義に基づいて国際

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    2024年04月21日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    E.H.カーの「歴史とは何か」を読んで感銘を受け本書も手に取りました。全くの門外漢ですので、カー氏はてっきり歴史学者かと思っていたのですが、本書を読んで、カーが最初は外務省に勤務し、その後ジャーナリズムの分野に入りながら学者に転身し、歴史、国際政治分野の研究をしていたことを知りました。本書は1919年の第一次世界大戦終戦から第二次世界大戦開始の1939年までの二十年間における国際政治をその分析の対象にしています。国際政治学という分野自体、当時は黎明期にあったということで、「あるべき論」つまりカーの言葉を借りればユートピアニズムが横行していたわけです。これは国際政治学に限らず、経済学などそのほか

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    2023年04月30日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    岡義武の『国際政治史』と合わせて読むといい。"国際政治"といわれるものは第一次世界大戦後に始まるということがよくわかる。理想を追うことも現状を見ることも双方重要で、またどちらかだけではいけない。両方を視野に入れながらバランスを取った見方をすることの重要性。あいまいだったり日和っているように見えたりするかもしれないが、極端なことを言う人は信用してはいけない。こういう”古典”は、今のようなご時世ではなおさら有用だと思う。

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    2022年02月14日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    危機の二十年とはWWⅠ~WWⅡを指す。

    ユートピアニズム批判は非常に鋭い。

    歴史と理論の勉強に、IR研究では必須の文献。

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    2019年05月01日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    【その時代、理想が砕け、現実が立ち昇った】国際政治の古典的名著とも言える作品。第一次大戦終了から第二次大戦に至るまでの時代、いかにユートピア思想がいかに世界を席巻し、そして無惨にも現実に押し潰されたかを丁寧に捕えることにより、国際政治における理想と現実の問題に鋭すぎるメスを入れていきます。著者は、イギリスの外交官として活躍し、晩年は研究業に勤しんだE. H. カー。訳者は、自らも本書の魅力に抗うことができないと語る原彬久。


    明晰でありながらも複雑な思考が展開されていきます。ユートピアの欺瞞を軽々と見破ったかと思えば、その次にはリアリズムの限界をあられもなく指摘し、ユートピアの必要性を説く。

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    2013年05月01日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    大学時代の教科書的に読んだのが初読だったが、政治向きのニュースを見る度に手に取る本でもある。引用にあるように、簡潔に、しかも色褪せぬ評価が至る所に散りばめられており、国際政治の本という本旨を持ちつつも、洞察に満ちた哲人の書のようにも思える。

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    2012年06月21日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    国際政治の古典として必ず名前が挙がるのが本書。

    E.H.カーは、リアリスト(国際関係は各国のパワーによって決まる弱肉強食の世界である!論者)であるとよく紹介されている。実際に本書は、ユートピアニズム(手をつなげば世界は平和になるんだよ~♪論)が国際連盟において支配的であったために、第二次世界大戦の勃発を食い止められなかったと批判している。

    だが、彼はユートピアニズムを否定したわけではない。確かに合理的に考えれば、リアリズム的世界観の方が納得いく。しかし、人間には非合理的な面もある。ユートピアニズム的な理想論・倫理的な態度のおかげで行動を起こせるという事実もある。リアリストではこれらの面を把

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    2012年02月19日
  • 危機の二十年 理想と現実

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     実は今の時代にも十分通用するではと思う本。
     この本の内容にテロリズムと宗教を加えれば十分に通用します。

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    2009年10月04日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    本書は国際政治学、国際関係論における古典である。第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦間期である1919年から1939年の20年間における国際情勢の分析を通じて、当時の国際政治における19世紀的な自由主義に基づいた理想主義(ユートピアリズム)を批判し、現実主義(リアリズム)の必要性を訴えた。しかしその一方で、国際政治における理想主義の必要性を認め、現実主義と理想主義の調和の必要性も主張している。
    国際政治学、国際関係論におけるリアリズムとリベラリズムの関係を考えるうえでも本書の訴える内容は60年以上経た今日においても示唆に富むものである。
    難解で読みづらい点も多いが、国際政治学、国際関係論を学

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    2009年10月04日
  • 平和の条件

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    解説で翻訳者中村研一が当該原書が刊行された当時(1942年)のことを書いている。

    清水幾太郎は「私とカーとの結びつき(といっても私の片思い)は、戦争中それも東京の大空襲が始まる頃、彼の『平和の条件』をコッソリ手に入れてコッソリ読んで、非常な衝撃を受けることに始まります」。
    ・・・・驚くべきことに、戦時下の日本で本書の海賊版が出回っていた。宇品の陸軍船舶司令部で軍務についていた丸山真男は、その一冊を’45.4の広島で発見し、「これによって受けた感銘は船舶司令部に起居した半年の間のさまざまの思い出、その間に起こった世界史的な事件の生々しい記憶と共に永く私の脳裏から消え去る事はないであろう 昭和2

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    2025年10月26日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    大学の授業にて購入。

    国際関係を理解するうえで必読の書といえる。
    カー自身は現実主義者だが、国際関係において現実主義と理想主義の綜合の重要性を説いた。

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    2025年04月22日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    言わずとしれた国際政治学の古典的名著。
    副題が「1919-1939」なので歴史学的アプローチの様相が強いのかと思いきや、結構理論的な内容がメインだった。しかし、1939年当時の情勢に基づいたものではあるけど、内容は現代の国際政治について考える上でも全然古びておらず、流石古典と言われるだけのことはあると感じた。
    「リアリズム」&「力」と「ユートピアニズム」&「道義」という二項対立を軸にして、その中庸を探るという論の進め方は、同じ著者の『歴史とは何か』(歴史における「事実」と「解釈」の二項対立に焦点を当てる)を彷彿とさせるものがあった。

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    2020年05月17日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    国際社会・国際政治に関して、理想と現実、ユートピアニズムとリアリズムの相克について、主として戦間期を対象に論じた書。二つのイズムにおける偽善性や欺瞞をこれでもかと暴いていく筆致は鋭く、また両者のダイナミックな相互関係を解き明かしていくところは、非常に興味深かった。

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    2020年05月09日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    ネタバレ

    【121冊目】これを読まずして◯◯なんか語るな、っていう本はたくさんありますが、主権を持つ者としてあまり本を読まずに選挙に行くことは仕方のないことですね。民主主義社会っていうのはそれでいいんだと思います。

    さて、政治、特に国際政治を語るにはこれを読まないと資格がないよっていう名著中の名著、クラシック音楽の「第九」、歌謡曲の「川の流れのように」に当たるのがこの本です。イギリス外交官だったE.H.Carrがケンブリッジ大学教授時に書いた国際政治の本。戦間期の二十年を、理想主義が支配した前半と、その敗北によって一気に現実主義の前に陥落した後半によって構成された期間だったと看破します。「危機の二十年

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    2014年12月14日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    冷徹なリアリズムの視点から、国際政治の本質を描いた良書。第一次世界大戦後、戦禍を目の当たりにした人類は、国際連盟などの仕組みをもって二度と戦争が起こらぬようにしたはずが、わずか二十年で規模が何倍も大きい第二次世界大戦が勃発したのは、何故なのか?この問いを中心に、国際政治を分析している

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    2013年09月26日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    今の国際政治の情勢は、戦間期の時代と通じる部分が多い。歴史から学ぶべきことって本当に多いなと感じさせられた。

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    2009年10月04日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    WW1後の戦間期に書かれた古典。その時代大勢を占めていたユートピアニズムを批判し、リアリズムの重要性と国際政治の二代潮流の両者を明確な理論へと押し上げた。と思う。
    古典だから現代にそのまま応用する、というわけには行かないけど、一読に値するはず。
    貴族や知識人によって行われていた伝統的な外交。大衆迎合的な現代社会の外交・政治に比べてなんと気高いものか、と、気品溢れる文章からそう感じた。

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    2009年10月04日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    タイトルからして、政治史と思われますが、国際政治学の本です。

    大雑把に言うと国際政治学は、戦争を防ぐことが目的です。


    1.この本を一言で表すと?
    ・国際政治におけるユートピアニズムとリアリズムの対立

    2.よかった点を3〜5つ
    ・結局、国際的調停へ前進する望みが最もあるのは、経済再建への道をとることであると思われる。(p448)
     →当たり前のように聞こえるが、戦間期では、すごいと思われていたのだろう。


    2.参考にならなかった所(つっこみ所)
    ・国家の話ばかりで、個人(国民)の話が出てきていないのでは?

    ・「戦間期」の出来事に関する知識が、議論の前提となっていること→世界史に疎い私

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    2018年12月30日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    名著、とのことだが全然歯が立たなかった。が、理解できなくても難しい本に挑んでいるときは意外にも至福であったりする。

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    2017年11月08日
  • 危機の二十年 理想と現実

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    井上版岩波文庫から16年。訳者も訳文も改められた。より口語的な文章になっている。E・H・カーのヒトとなりについての解説が詳しい。外交官としてキャリアを出発させ、後にロシア文学に傾倒しドストエフスキーに関する著作を発表し、ロシア革命、カール・マルクスを著すことになって、大学教員として迎えられた。しかし結局、彼の理論も思想も、ヨーロッパ中心主義からの歴史観であって、そらには自ずと限界があり、第三世界の緒制度を理論に取り込んでいるわけではなという訳者の指摘は尤もだと思う。

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    2013年10月15日