E.H.カーのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
リアリズムの生みの親と言われるカーの著名な本。この本を読み直して感じるのは、カーは後世で理解されるようなリアリストではなく、非大国的視点から大国中心の国際政治を捉え直したリベラリストと言えるのではないか?という点である。大国的視点で国際政治を見続ければ、暴力的手段を用いながらもそれを価値や規範、そして共通普遍の原理のように本気で信じる西側(アメリカ、フランス、イギリス)のリベラル知識人と何ら変わらなくなる。しかし、大国的奢りから目をそらすと彼らの価値や規範が所詮、実力によって担保されているにすぎないという事実に気がつく。しかし、脱大国的な視点は、その暴力や権力を価値や規範で誤摩化している大国による政治への批判や疑問と結びつくという側面もある。実際にカーは、機能を説明しているだけであり、暴力や権力を肯定しているわけではない事を本著でも述べている。
晩年、彼は半ばマルキストとしてソ連研究の道を邁進するが、それは大国の権力によって規定づけられていた国際政治を脱構築しようとしたロシア革命の国際的な意義がスターリンによる独裁体制によって挫折したレーニンからスターリン期へと深く関心を有していた。この点からも、むしろカーが現在理解されているようなリアリストではなく、リベラリスト的な側面を多分に持っていたと感じ取れるような気がする。