ジェイコブ・ソールのレビュー一覧

  • 帳簿の世界史

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    会計が成立・定着した中世から近現代史。
    目から鱗。

    国家や企業の栄枯盛衰の要因に、実態を正確に捉えるツールとしての会計があると説き、全ての国家の歴史を網羅してはいないが、ポイントを絞った説得力が尋常じゃない。
    雰囲気ではなく、現実の数値を愚直に記録し、その記録を見て評価することの重要性を教えてくれる傑作。

    これから会計や簿記を学ぶ人や、不本意ながら経理業務に配属された人に、おすすめいたします。

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    2018年05月18日
  • 帳簿の世界史

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    著者のジェイコブ・ソール(1968年~)は、歴史学と会計学を専門とする南カリフォルニア大学教授。
    本書は、2015年に単行本で邦訳が発刊され、2018年に文庫化。
    本書は、「帳簿(会計)」という斬新的な視点を軸に歴史の裏側を明らかにしたものであるが、一般に経済に大きな影響を与えると考えられている「帳簿(会計)」が、実は政治や文化に影響を与え、更には歴史までも動かしてきたことを示す、興味深い内容となっている。
    大まかな内容は以下の通りである。
    ◆会計の初歩的な技術は古代メソポタミア、ギリシャなどに見られ、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスは、会計の数値を自らが建造した記念碑にも刻み、透明性の高い精密な会計を自身の政治的正当性と功績に結び付けた。
    ◆12世紀、フィレンツェ、ジェノヴァ、ヴェネツィアなどの商業都市国家が並立し、当時欧州で最も豊かだった北イタリアにおいて、“複式簿記”が発明された。その要因は、それまでとは異なるアラビア数字が使われていたこと、貿易が発展して多くの資本が必要となり共同出資方式が考案されたため、帳簿が単に所有しているものの記録ではなく、出資者への利益配分を計算するための記録となったことというのが定説である。
    ◆14世紀にトスカーナ商人のダティーニが、15世紀にフィレンツェのメディチ家が、会計技術を支えに富豪となったが、ルネサンス期の思想に強い影響を与えた、人間の栄光は芸術・文化・政治的業績に基づくのであり、現実的・現世的な商業は重視しないとする“新プラトン主義”により、会計と責任の文化は根付かなかった。
    ◆16世紀以降、“太陽の沈まぬ帝国”スペイン、欧州最大の王国・仏ブルボン朝などの君主国で会計が注目されたこともあったが、複式簿記による国家の会計システムを安定的に確立した君主はいなかった。それは、君主にとって会計の透明性は危険ですらあったためである。例外は、共和制を維持し続けた黄金時代のオランダ(とスイス)だけであった。事実、ルイ16世期の国家財政が民衆に開示されたことが、フランス革命の要因のひとつとも言われる。
    ◆18~19世紀、アメリカの建国の父たちは、会計の力を信じ、それを駆使した。鉄道の登場による会計の複雑化は公認会計士を生み、更には、多くの専門家を抱えた大手会計事務所が作られることになった。しかし、大手会計事務所が、独立性を必要とする“監査”と企業の立場に立つ“コンサルティング”の双方を手がけるという構造的矛盾を起こすに至り、エンロン事件やリーマンショックが発生した。
    そして最後に、「本書がたどってきた数々の例から何か学べることがあるとすれば、会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する、ということである。・・・これらの社会では、会計が教育に取り入れられ、宗教や倫理思想に根付き、芸術や哲学や政治思想にも反映されていた。」、「いつか必ず来る清算の日を恐れずに迎えるためには、こうした文化的な高い意識と意志こそ取り戻すべきである。」と結んでいる。
    数百年に亘る会計の歴史を辿りつつ、現代の複雑化した金融システムを維持するために、我々にはどのような心構えが求められるのかを示唆する、奥深い一冊と思う。
    (2018年5月了)

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    2018年05月04日
  • 帳簿の世界史

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    ネタバレ

    いやあ、結構面白かった。

    会計・帳簿という切り口で世界史を読み解くといった風の作品です。

    ・・・
    帳簿をしっかりつけて成功したイタリア商人パニーニの話だったり、これまた帳簿を学んできっちりチェックを行ったことで栄華を極めたコジモ・デ・メディチの話だったり。

    はたまた、近世の東インド会社を営んだオランダが会計的にどのように優れていたのかだったり、お隣のブルボン王朝率いるフランスが会計軽視によって没落したさまであったり。更には陶器のウェッジウッドも会計好きで、単なる帳簿付けから原価計算などの管理会計を発展させたとか。

    そして、米国の鉄道会社の杜撰さ等から外部監査人としての会計人が要請されたこととか、リーマン等で明らかになった(現)BIG4の監査部門とコンサル部門の利害相反を抱える矛盾とか。

    ・・・
    なお、大手会計事務所の由来はどうやらUKらしく、自国の伝統?にのっとって監査をきっちりするという手筈だったそう。

    彼らが新大陸でビジネスをするようになると、かの地の経営者は「帳簿の確認をするよりもビジネスの相談にのってほしい」みたいな意見が多く、監査部門を持ちつつも、コンサルティング部門を持つに至ったとか。

    そしてコンサルティング部門の売り上げがどんどん大きくなり、too big to close/terminateみたいになったそう。
    なるほどです。

    ・・・
    もう一つよいのは、巻末に至って簡便ながら、日本の帳簿の歴史も書かれていること。

    これがまた、結構よいのです。

    大和時代、正税といわれた、国で管理した稲を農民に貸付け、その利息の返済をまとめた正税帳なるものが日本の帳簿の起源とか。

    ただ、これも余り使われなくなり、また奈良以降、一人一人に課税を行う班田収授法なども不評。課税逃れのために男子を女性と偽ったり、逃亡したりして、徴税が上手くゆかなくなったそう。

    そこで平安時代になると各地方に受領を指名し、一定金額を中央に収めれば、あとはいかようにしてもよし、としたと。そこでこれらの貴族は私腹を肥やし、一部は土着化したり武装したりとして、後の武家社会の礎が築かれていくと。

    また江戸時代には大阪の米相場の影響で日本式複式簿記(BS/PLともに)も既にあったそう。ちなみに縦書き。そういうことで明治時代に複式簿記が西欧から導入されたそうですが、すんなり馴染んだとか。

    なお、これらの付録の監修に名を連ねるのは元日銀総裁の速水優氏らビッグネーム。

    ・・・
    ということで、世界史系の本を楽しく読みました。

    しかし、恥ずかしながらなんですが、本作、私は再読でした。しかも、当初読んだときの感想はもう恥ずかしいくらいけちょんけちょん。

    当時を振り返ると、まだ世界史もきちんと勉強する前でした。そして、イタリアにも旅行する前でした(それはいいか)。

    でも、きっと、こういう〇〇の世界史みたいな本を読むときは、おそらく世界史そのものを或る程度きちんと学んでからの方が面白く読めるのだと思います。少なくとも私の場合はそうでした。

    50代にはもう無理ですが、今更ながら会計の専門家になりたいなあとか、夢想してしまえる本でした。

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    2025年12月11日
  • 帳簿の世界史

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    ルネサンス期からはじまり現在まで続く会計の歴史について詳細に記述している。
    思っていたより大作で、少し冗長かと思う点もあった。

    特に後半は、このような長い歴史を経ていても会計は手に負えないものとなっていて、完璧な監査には程遠いと語る。確かに監査法人のビジネスには思い当たる部分も多い。複雑になりすぎて、専門家しか、専門家すら良く分からないものになっている。

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    2021年01月23日
  • 帳簿の世界史

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    世界恐慌などの危機的な状況を何度も迎えながら、資本主義が未だに存続している一つの要因は、直面した危機からの学びとして様々なルールを市場が作り出し、同じような事態に陥ることを避けようとしてきた工夫にあるだろう(もちろん、市場は万能ではない故に同じ過ちを繰り返すことがないわけではないが)。そうしたルールの中でも、最も資本主義において重要なもののひとつが、”会計(Accounting)”、そしてそこから派生する”説明責任(Accountability)”である。

    本書は”会計”という概念を物理的に代表する”帳簿”から、西洋の歴史を振り返ったテーマ史である。西洋社会がかくも発展を遂げた背景には、帳簿により、国家・政府の財政状況を可視化し、しかるべき政策立案につなげる会計士の存在がバックにあったということが、本書を読む事で理解できる。

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    2019年08月16日
  • 帳簿の世界史

    Posted by ブクログ

    中々興味深いですね。

    会計と言うものが、国家の存立にまで影響していたとは、この本を読んで初めて気づきました。言われてみれば当然で、この本でも触れられていますが、フランス革命も、宮廷の浪費に業を煮やした国民が蜂起したと言う事でしたね。

    アメリカが、その国家建国の頃から、会計を意識していたというのは興味深いです。ある意味、と言うか、当然にと言うか、現在のアメリカ合衆国に至るまでの前身の植民地を含めたアメリカは、ネイティブたちの国ではなく、ヨーロッパ大陸大陸から逃れてきた、あるいは一獲千金を夢見てきた人たちが、人工的に集まってできた集団ですので、色んなことを透明化する必要があったと感じます。なので、会計を取り入れるのは当然の成り行きだったんでしょう。

    勉強になりました。

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    2018年05月12日