小倉多加志のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
面白いね
解説で稀有な作家と評されるがまさにその通りだと思う。
いわゆる人間の心理を描く繊細さが群を抜いて優れている。
11個の短編の登場人物全てが印象的だった。
それはなぜか。
その答えは彼らが唯一無二であるからだ。
現実の個人が全て異なるのならば、小説の世界の個人もまた全て特異であるべきだ。
この理想にパトリシア・ハイスミスは究極的に漸近した作家といえる。
つまり、登場人物のそれぞれが何かの経験をした時に生じる心理的運びが異様で、奇妙である。
「そうはならないだろ」と突っ込みたくなるが、ふと思い直す。
他者の心理など理解できないのが普通だ。他者とは本来的に奇妙で理解できない存在のはずだ -
Posted by ブクログ
ネタバレ初めて翻訳された推理小説を読んだ。最初は登場人物の名前や関係性を覚えられない、会話文の言い回しが独特で正直事件どころではなかった。人物の名前を覚えていないのに、あだ名で呼び出したりするのでさらにこんがらがった。登場人物の名前を把握する頃にはポアロが事件を解決するので読みながら「待ってくれ!」とずっと思っていた。しかし、読み慣れてくるとなかなか面白いかった。
特に「砂にかかれた三角形」は収録されている4篇の中で最も短いのに、どんでん返しがすごかった。言われてみれば確かに、と思うところがある。事件発生前から犯人に気づき警告していたポアロとは違い、私はパメラと一緒で凡人の思考の持ち主だったようだ。 -
Posted by ブクログ
映画『太陽がいっぱい』の原作であるトム・リプリーものなどで知られるパトリシア・ハイスミスの短編集。タイトル通り11作品を収録している。原題は“Eleven”(アメリカでは“The Snail-Watcher and Other Stories”として刊行)。原著は1970年刊、短編集としては最初のもののようだ(短編自体はずっと以前から書いており、例えば収録作の1つである「ヒロイン(The Heroine)」は1945年に発表されている)。日本での刊行は1990年、その後、2005年に改版されている。
サスペンスやミステリとして評価されがちなハイスミス作品だが、本人はそう見られることを必ずしも快 -
Posted by ブクログ
ハイスミスが1970年に出した短篇集。処女長篇『見知らぬ乗客』以前に書かれたものも含む。グレアム・グリーンの序文付き。
ハイスミスって短篇もこんなに上手いのかと驚く(長篇もまだ『キャロル』しか読んでないけど)。ものすごく型がきっちりしているので展開は読めるのだが、スリリングな語り口に引き込まれ、不安を掻き立てられてしまう。津原泰水が自作『11』の解題で『ナボコフの1ダース』と一緒にこの『11の物語』を引き合いに出していたけれど、たしかにナボコフを連想させる技巧派だなぁ。
しかし何が面白いって11作収録のうち2つもヒトがかたつむりに殺される話が入ってるとこ(笑)。普通サイズのかたつむりが大量