小倉多加志のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
クリスティの短編集。
幻想、怪奇小説が集まった作品。クリスティはミステリ、恋愛のイメージが強かったが、今作では新しいクリスティ像が見られる様な気がする。今作は過去に読んだ事が無く初めて読む事になる。
死の猟犬
表題作。友人の話からイギリスの田舎に住む姉を訪れ、戦争時代に謎の爆発現象にてドイツ兵を吹き飛ばした修道女の行方を聞く。彼女を匿う医者と彼らの元に起きる事件。それぞれに現れる「猟犬」の痕。幻想怪奇にまつわる作品ではあるが、未来予知と死の猟犬については「不思議」と思うしかないのだろう。
赤信号
サスペンスミステリー。短い作品だが出来は良く面白い。テーマは予感、直感。主人公が親友の妻に恋してしまい、叔父から警告され、更には医師である叔父が彼等の家に招待を受けた理由が医師としての考えからで、殺人狂の症状が見える為監禁しなければという提案(この時点では女性の方がと思ったが)に、主人公は反発する。その後、主人公が帰宅すると家から身に覚えのないリボルバーがみつかり、同時に警察もやってきて、叔父が殺害されたと知る。主人公が感じていた危険な予感。結末もしっかりしており面白い。
第四の男
多重人格の女性の話。医者、弁護士、牧師が列車の中、過去にあった多重人格者の研究見解について議論している。その議論の中に多重人格者フェリシーを知る男性が参加し、アネットという女性を含めた彼ら3名の関係を語り出す。最後、少しミステリアスに閉じているのが印象的だ。
ジプシー
ジプシーについてのイメージは難しいが、クリスティ作品ではテーマにされる事も多くイギリスやヨーロッパでの彼らの歴史はとても興味をそそられる。婚約を破棄した友人と謎の女性。助言に従わず手術を受けた友人は死んでしまい、謎の女性も亡くなってしまう。事件の詳細を推察することは可能だが、「不思議」で捉えていた方が面白い作品だ。
ランプ
ホラーの印象が強い作品。中々買い手が見つからない屋敷。幽霊を信じない女。屋敷に住む様になり、旦那やお手伝いさんは子供のすすり泣く様な声を聞く。やがて、息子の具合が酷くなり女にも子供のすすり泣きぐ聞こえる様になり。短く完結。わかりやすいホラー作品だ。
ラジオ
因果応報とはこの事だろう。老婦人は決して真相を知らなかったと思うが、メイドへ渡した金額等実は何かを勘ぐっていた可能性はある。少なからず結末は日本の昔話の様に悪い事をすれば悪い事が起きるという教訓ににている。近く殺人の痕跡も発見される事だろう。
検察側の証人
この作品は戯曲化され、映画化され、ドラマ化されたクリスティの短編の中でも知られている作品。主人公は弁護士であり、絶体絶命な容疑者を救う為奔走するが、彼にとって不利になる様な証言ばかり、合わせて彼と同居している女性から証言を得ようとするが、彼女も彼を落とし入れる様な証言を持ちだし、弁護士を困らせる。そんな中で謎の夫人から手紙が届き、とある証拠を金で譲ると言われ、弁護士は彼女に会う為、彼女の家を訪れる。そして裁判が始まる。
この作品が人気の理由として、後半の裏切りや怒涛の展開があり、更にはドンデン返しで閉めている事だろう。とても衝撃的な作品で、この一作だけでも抜き出す価値がある物語だ。
青い壺の謎
この作品も面白い。ゴルフ中、助けを求める声が聞こえ周りを探すが何もない。同じ時間、同じ場所で助けを聞くが近くの家の美しい女性はそんな声等聞こえないといい、不審な目で主人公を見る。彼は自身がおかしくなったのかと思いながら同じホテルに泊まる精神科医と知り合い、事の解明に乗り出す。その内、例の女性が現れ、謎の夢を見る様になり、精神科医と協力し、彼女の住む家を調べにいく。最後、こんなに親切な詐欺師がいるのかと思わず笑ってしまった。
アーサー・カーマイクル卿の奇妙な事件
怪奇小説。呪いによってと言っていいのだろうか。ミステリーにおいては魔法や呪いの様な類はタブーになる事が多いが(僕自身は言及があれば認めているが)今作はミステリーでは無い為、問題ないだろう。実際、アーサーを救う手立ては奇跡しか無いわけだが、見事に奇跡的な展開を用いて解決に導くのは流石の物語巧者だ。
翼の呼ぶ声
この男は何故この様な結末になってしまったのか。富や金に対する不安や不信は今も昔も変わらないが、この男の人生はなんとも寂しくて切なく感じてしまう。彼は富む事で満足を得ていたが一方で恐怖感や恐ろしさもあった。不思議な笛を吹く足の無い男。彼との出会いが全ての始まりであり、愉悦感と愚鈍な感覚が彼にのしかかる様になり、恐らく彼は壊れていったのだろう。恐怖感の強い作品だ。
最後の降霊会
ホラー作品。子供を亡くした母親の狂気なわけだが、実際に降霊者の体が半分無くなり、降霊した子供を持ち帰ってしまった母親の罪になる訳だが理論的に説明が出来ない現象がおきる。ラウールの立ち位置は不明で本当にシモーヌを愛していた様だが結末は反するものだ。
S•O•S
周り数キロ何もない所に立つ怪しげな家。そこで暮らしている怪しげな家族。何かが起きようとしている雰囲気。外は嵐。偶々自動車の故障により、助けを求め家を訪れた精神科医。急遽宿泊出来ることになり、感謝しながらも怪しげな雰囲気を持つ家族に興味を持ち始めるが、彼の用意された部屋にS•O•Sの文字がかかれている。
結果として殺人未遂の様相だが、最後この様な判断ではまた何かしらの事件が起きそうだと予測してしまった。
幻想怪奇小説は乱歩以来で期間も空いており読み慣れていない為、充分に理解できていないと思う。幾つか素晴らしい短編作品もあり、気分転換になった作品集だ。 -
Posted by ブクログ
ポアロもの短(中)編集。
長編よりお手軽で、短編よりは読みごたえがある長さのポアロもの4話がお楽しみ頂けます(お得かもw)。
因みに、第一話「厩舎街の殺人(Murder in the Mews )」は英国版での表題作となっており、日本版表題作の第三話「死人の鏡(Dead Man’s Mirror)」とは“不審な自殺――自殺か他殺か?”を解明する部分で共通していますが、展開や真相が全然異なるのが興味深いですね。
第二話「謎の盗難事件」は盗まれた機密書類の謎を追う展開なのですが、ポアロのヒアリングから導き出される事実にグイグイ引き込まれました。
第四話「砂に書かれた三角形」はリゾート地(ロードス島)での“三角関係”の縺れからくる殺人で、他の話より短めですが、クリスティーらしい人間描写や印象操作によるミスリード等、要素がギュッと詰まっている作品だったかなと思います。
因みに、「死人の鏡」にちょっとだけ、サタースウェイト氏が登場するのですが、私は『三幕の殺人』『謎のクィン氏』に登場したサタースウェイト氏と同一人物と思っていたのに、解説を読むと「さぁ、どうなのでしょう?」的な感じで書かれていたので「えっ!違うの?」とちょいと混乱しました。
結局、“諸説分かれる”との事で、だったら同一人物ってことでええやん!と思った次第です。まぁ些細なことですけどね~。 -
Posted by ブクログ
「アガサ・クリスティ」の短篇(中篇?)ミステリー集『死人の鏡(原題:Murder in the Mews 米題:Dead Man's Mirror)』を読みました。
『鳩のなかの猫』、『象は忘れない』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。
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謀略の犠牲になりかねないからと調査を頼まれた「ポアロ」は、依頼人の准男爵の邸へ向かった。
が、待っていたのは密室の中での依頼人の死。
自殺に見えるが動機は不明。
また謀略とは何なのか?
事件解決の手がかりは意外にも書斎の割れた鏡にあった!
密室の謎に挑む表題作をはじめ、「ポアロ」活躍の四篇を収録する傑作集。
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1937年に刊行された「エルキュール・ポアロ」を主人公とした作品集で、以下の四篇が収録されています。
■厩舎街の殺人
■謎の盗難事件
■死人の鏡
■砂にかかれた三角形
『厩舎街の殺人(原題:Murder in the Mews)』は、若い未亡人「バーバラ・アレン」の拳銃自殺に不審を抱いた「ジャップ警部」と「ポアロ」が真相の究明に乗り出す物語、、、
自殺の動機が不明なうえに、左利きなのに右手に銃を持っていたり、右手に銃を持っているのに左側頭部から撃ち抜かれていたりと、殺人を示唆する状況ばかりが浮かび上がりますが… まさか、自殺の動機を知る人物が、自殺を殺人に見せかけて、ある人物を追い詰めるという展開とは、想像できませんでしたね。
『謎の盗難事件(原題:The Incredible Theft)』は、政界の大物「メイフィールド卿」が屋敷に客を招いた晩餐の後、国家機密である新兵器(爆撃機)の設計図が盗まれ、「メイフィールド卿」から密かに捜査を依頼された「ポアロ」が真相の究明に乗り出す物語、、、
冒頭から一斉に多くの人物が登場するので、誰が誰だかわからなくなる苦手な展開… 国際的なスパイと噂される「ヴァンダリン夫人」が怪しい感じですが、そうそう素直な展開になるはずもなく、「ポアロ」がひとり一人に聞き取りをして、真相に近づきます。
真犯人は最も意外な人物(政界の大物)でしたが、自分の身を護ることと、国を護るこという相反することを両立させようとしていた行動には感心しましたね。
『死人の鏡(原題:Dead Man’s Mirror)』は、准男爵「ジャーヴァス・シェヴニックス=ゴア卿」からの不遜な依頼(呼び出し)により、「ポアロ」は「ゴア卿」の屋敷ハムバラ荘へ出向くが、その書斎で拳銃で自殺した「ゴア卿」の死体が見つかり、「ポアロ」が真相の究明に乗り出す物語、、、
被害者の人格や自殺体の向き、壊れた鏡の欠片、二度の銅鑼の音等から、「ポアロ」は他殺と推定し、家族や居合わせた人達からの聞き取りから、養子や結婚問題等、複雑な家族関係や人間関係を紐解き、真相に近づいて行く。
動機は娘を… 実の娘を幸せにしたいと願う母親の愛情でしたね、、、
真相を知らず、愛する人と一緒になった娘は幸せだったのかな。
銅鑼(ゴング?)の音が真相究明のヒントとなっている仕掛けは、どこかで読んだことがあるなぁ… と思ったのですが、、、
調べてみると『黄色いアイリス』に収録されていた『二度目のゴング (The Second Gong)』で使われていましたね。
『砂にかかれた三角形(原題:Triangle at Rhodes)』は、ヴァカンスでロードス島に滞在していた「ポアロ」の周辺で、三角関係の縺れから発生する殺人事件を、「ポアロ」が鮮やかに解決する物語、、、
五度目の結婚をした恋多き女性「ヴァレンタイン・チャントリー婦人」と、その夫「トニー」、「ゴールド夫妻」の夫「ダグラス」の三角関係を示唆する展開… 「トニー」が飲むはずだったピンク・ジンに毒(ストロファンチン)が盛られており、それを飲んだ「ヴァレンタイン」が死亡し、「トニー」にピンク・ジンを渡した「ダグラス」が容疑者として逮捕される。
真相は「トニー」と「ゴールド夫妻」が三角関係で、「ヴァレンタイン」は蚊帳の外だなんて… 完全にミスリードさせられましたね。
登場人物が限定されていて、役柄が明確だったので、理解しやすかったし、展開もスピーディーで愉しめました。
本書に収録された四篇の中では、最も短い作品でしたが、イチバン気持ちよく読めました。
中途半端に長い短篇(中篇?)よりは、本作品のように短くて端的な展開か、しっかり読める長篇の方がイイですね。