パトリシアハイスミスの作品一覧
「パトリシアハイスミス」の「11の物語」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「パトリシアハイスミス」の「11の物語」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
Posted by ブクログ
ハイスミスの短編は、タイプの異なる独特な世界観がコンパクトに詰まっていて、とても面白かった。
ハイスミスの魅力は何と言っても心理描写。
主人公の頭の中を覗くように「なぜそんなことをしてしまうのか」が見えてきて、人間の本質が浮き彫りになる。
最初は「この人ヤバい」と思っても、だんだん「でもそうなる気持ちも…」と共感してしまうこともあって、善と悪の境目がグラグラしてきてクセになってくる。
私は頭の中で、不安や心配なことを自問自答して脳内反省会をしてしまう癖があるので、登場人物たちの不安や、それを必死に落ち着かせようとする姿に共感してしまった。
これで自分が読むハイスミス作品は4冊目。『太陽がいっぱい』のリプリーのことをなぜ嫌いになれないのか…その理由が少しずつわかってきた気がする。
『かたつむり観察者』★3
カタツムリを愛して飼育した結果、ものすごい数に増殖してしまい…
『恋盗人』★3
隣人のポストから手紙を盗み読みし、隣人になりすまして勝手に…リプリーっぽい。
『すっぽん』★5
毒親が料理用に生きたすっぽんを買ってくると、11歳の息子はすっぽんを可哀想に思い、殺さないで欲しいと母に頼むが…。
読後に善悪を考えてしまう作品で、いちばん印象に残った。
『モビール艦隊が入港したとき』 ★3
暴力的な夫を殺害した主婦が、逃亡先で不幸な人生を振り返る。彼女の行く末は…
『クレイヴァリング教授の新発見』★4
無人島で肉食の〇〇かたつむりに襲われる。
カタツムリ版ジュラシックワールド。
カタツムリが2作品も入ってるなんて。ハイスミスのカタツムリ愛が興味深い。
『愛の叫び』 ★5
孤独な老婦人二人。お互いを必要としながら暮らしているのに、相手が嫌がることをして悲しむ姿を見て喜ぶという、奇妙なハイスミスっぽい世界観。
『アフトン夫人の優雅な生活』 ★5
過激な運動に取り憑かれた夫を心配し、精神分析医に相談するアフトン夫人。医師が夫に会いに行くと、思いがけない展開に…
『ヒロイン』★5
念願の保母の仕事に就けたルシール。
2人の子どもたちをあらゆる危険から命がけで守りたい。どうすればこの想いを雇い主の奥様に理解してもらえるか、ルシールは考えた…
『もうひとつの橋』 ★3
妻と息子を亡くした男が、不幸な家族や、貧しい少年に親切を尽くすが…
『野蛮人たち』 ★3
ご近所騒音トラブルは、国境も時代も超えて存在する。
『からっぽの巣箱』 ★4
謎の生命体「ユーマ」を目撃したことをきっかけに、主人公は過去の罪悪感と向き合うことになる。
Posted by ブクログ
以前「見知らぬ乗客」だったかな?デビュー作、めずらしく投げ出してしまったが、数年ぶりに手に取ってみて正解でした。きっと自分が成長したのだろう(と思いたい)。
かたつむりに魅せられた男の奇妙な話とか(なぜかカタツムリの話が二編も入っている。ハイスミスはカタツムリに何か思い入れがあるのだろうか)、日常の延長線上に待ち構えていそうな、夫婦の最悪な結末が描かれている「モビールに艦隊が入港したとき」とか、私が好きな主題のひとつである”いかれた人”たちが描かれている「ヒロイン」「アフトン夫人の優雅な生活」とか。不気味、とは違うんだけど、どこか一本ずれているような世界に酔い続けていられる短編集でした。
Posted by ブクログ
映画「PERFECT DAYS」を観て、興味を持って読んでみた。
「パトリシア・ハイスミスは不安を描く天才だと思うわ」
「恐怖と不安は別の物だって彼女から教わったわ」
これは、この本を買った客に対して古書店の店主が発したセリフ。
読んでみて改めて、このような短くてピリッとしたセリフを書く脚本家はすごいと思った。
確かに、「不安」はほとんどの作品で一つのテーマになっていたように思う。といっても似た作品は一つもない。
特に良かったのは、
・かたつむり観察者
・モビールに艦隊が入港したとき
・ヒロイン
・空っぽの巣箱
いただけなかったのは
・クレイヴァリング教授の新発見
・野蛮人たち
全体的によいんだけど、古いだけにやや粗さが感じられた気がする。
かたつむり観察者
The Snail-Watcher
意外で恐ろしい結末。かたつむりが増殖していく描写がまさしく秀逸。
恋盗人
The Birds Poised to Fly
恋人からの手紙を待つ男女は、今にも飛び立とうとしている小鳥たち。
返事さえ来ればすぐに飛んでいこうと待ち構えている。
ラブレターを盗んだことにより遭遇した女の、
何があっても相手を信じる気持ちに男は触発される。
邦題を恋盗人にしたのは、ややずれている気がする。
すっぽん
The Terrapin
子供の言うことに耳を貸さない母親が怖い。
そして最後はスプラッター。
アメリカでもすっぽんを食べるとは知らなかった。
モビールに艦隊が入港したとき
When the Fleet Was In at Mobile
最初は主人公の女性の行動が理解できないが、
回想が進むにつれて次第に同情してきてしまう。
艦隊が入港したときは、彼女の運命を分けたとき。
結末は殺人犯として逮捕されるよりもずっと怖い。
クレイヴァリング教授の新発見
The Quest for Blank Claveringi
またカタツムリ。
パニックアクション映画のような感じだった。
愛の叫び
The Cries of Love
友達同士がホテルの同じ部屋で暮らしているという状況が分からないが、好きな友達にいたずらをしては仕返しされるという、子供じみた老婦人のめんどくさい関係。
アフトン夫人の優雅な生活
Mrs Afton, among Thy Green Braes
精神科医に夫について相談に来た有閑マダムの正体が最後に明らかになる。
ちょっと気の毒な話。
原題は、18世紀のスコットランドの詩人 Robert Burns の代表作の一つ "Afton Water”の冒頭を引用したものっぽい。詩では「アフトン川よ、緑の丘をぬって(やさしく流れよ)」のような感じ。
夫人がこの詩から名前を取ったのかは定かではない。
緑の丘の間を流れる優雅なアフトン川と、実はそうではないアフトン夫人の間にアイロニーを感じる。
ヒロイン
Heroine
人の役に立つ行動をするために、自ら災いを引き起こしてしまう少女。
過去の家庭環境や、シッターになってからの行動の端々から危なっかしさが感じられ、不安を煽られる。
もう一つの橋
Another Bridge to Cross
イタリアの海沿いの明るく牧歌的なロードムービー的な短編だが、死のイメージが全体を貫いているのが対照的。主人公からも、死の世界に取り込まれそうな危うさが何となく感じられる。その中で、泥棒の少年だけはいきいきとたくましい。
野蛮人たち
The Barbadians
近所で騒がしくキャッチボールをする大人げない男たちに石を落として追いやったかに思えたが、彼らはまた集まってキャッチボールを始める。男たちにいらつくばかりであった。
空っぽの巣箱
The Empty Birdhouse
過去の行動に対する後悔や不安が幻覚を見せるのか。妻だけではなく夫も見ることで、現実だったのかと思えば安心するが、やはり現実ではなさそうな描写もあるので、そうだとするとなおさら怖い。途中から不気味な猫も出てきて、何が不気味なのかもはっきり書かれないのだがやっぱり不気味で、強さを助長する。結末に至っても話が終わらないところも怖い。