レーモン・クノーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレバスで起きた些細な出来事が99個の異なる文体で、繰り返される実験的作品。
本作を読んで、私は「物語」の多次元性を強く認識した。
「主体」の多層性に始まり、質料としての「言語」の解体、「作家」自身も遊戯余地のある「主体」と捉える視座。
「どう書くか、そして書いてるのは誰なのか?」
という表現への無限の問いを与えてくれた。
訳者あとがきでも、親切にほとんどの文体練習の文化背景や操作規則を解説してくれている。
それを読むと、グノーの文体練習が、実に逍遥の自由さ持ち合わせた遊戯かがわかる。
彼の「万物を創作の血肉にする」という転用への貪欲な姿勢を見習いたい。
「一度触れたもの全てを創作に転用する清々しさ」が私には必要だ。
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Posted by ブクログ
・原書の発想も凄いが、
翻訳のセンスが凄すぎる。
翻訳でこんなに味が出るとは…
フランス語ができる人であれば、
合わせて原書も読んでみたら、
より楽しめそう。
・本文はもちろん面白いが、
訳者のあとがきを最初に読んだのはよかった。
訳者が苦心したこと、
翻訳しながら考えたこと
またそれぞれの章の注釈が書かれているので、
より味わって読むことができる。
・書かれている文章の内容は同じ。
でも、書き方が違うとこんなに印象が変わるのかと驚かされる。
21区別
バスのなかで(風呂の話ではない)、わたしは、ひも(女に貢がせる男のことではない)を巻いた帽子(某氏ではない)をかぶった男を見かけた。
(ぶった男を見限ったのではない。)…
和訳センスが面白すぎる!
35語頭音消失
衝撃的。
たしは とで っぱいの スに った。
スの かには びが るで リンの うに がい
かものが た。…
これでも、なんとなく読めてしまうから不思議。
46音の反復
7行ほどの文章の中に
ぶん
と言う言葉が33回も出てくる。
洒落
になっている。
70語頭音付加
まある日の、ど小五ごろ、べ混雑した、さバスの、お後部デッキで、な私は、とある、お若者を、も見かけた。…
72だくでん
ひらがなに、濁点を打ちまくった文章。
普通の日本語では、濁点が付かない所にも
(例えば、うに濁点など)ついてるところが面白い。
役者あとがき
翻訳を通じて感じた事は
自分の無力さであり
日本語の無力さではなかった。
フランス語以上に、
日本語を探検する良い機会となった。
日本語は相当奥の深い柔軟な言葉である。
本文の中では一切説明しないこと
もしもクノーが現代の日本人だったら、
どんな文体にしただろうかと想像しながら言葉を選ぶことを方針とした。
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Posted by ブクログ
20世紀フランスの作家レーモン・クノー(1903-1976)による実験的な作品、旧版1947年、新版1973年。ある単純な出来事を99の文体で書き表したもの。
一時期はシュルレアリスムや実存主義のグループと近かったこともあった。その後もミッシェル・レリスやジョルジュ・バタイユらとは交友が続いたという。1960年に発足した文学グループ「ウリポ」にて、言語遊戯などを通した文学実験を展開した。
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言葉が世界の像であり、世界が言葉の像であるならば、言葉遊びは世界をおもちゃにする遊び。言葉が世界と精神との境界接面であるならば、言葉遊びは精神をおもちゃにする遊び。世界も精神もいっぺんに笑って面白がってしまえる遊び。
もうひとつ、言葉のまえには読者がいる。読者も読書行為も、いっしょにパロディ化されて、そうしてみんな笑ってしまえる。そうした言葉の軽妙さ、つまり自由の軽妙さを味わえる。言葉をあいだにはさんで、世界も精神も、場所だとか属性だとかなくなって、描線もなくなって、中空に消失してしまいそう。ボルヘスみたいな高度の感覚。
読後、具体物のどんな影も残さないが、それでもこの本はなにがしかのものであって、それは言葉や読書がなにがしかのものであることと同じであると思う。そしてそれは、それ自体で、味わうに値するのだと思う。
「語られるべき内容がほとんどなくても、言葉は無限に増殖して一冊の本になることができるのだ」(p138,訳者)。 -
Posted by ブクログ
何の変哲もない日常の一コマを、99種類の文章で描き出すっていう実験的な(?)一冊。原著はフランス語。
なにこれ、面白ー。変なことを考える人がいたもんだ、と思って読みたい本リストに入れたまま、ずっと忘れていた。。。
やっぱり面白かった。一朝一夕で99種類かけるようにならないよね。すごい。
もう、翻訳する人の苦労が推して知るべしだよ…超楽しそうだけど、想像しただけで涙出ちゃう。
原文のフランス語のものは、フランス語学習にも用いられるくらい有名な作品なんだって。
10. 虹の七色: こういうのすてき。どうやら原文も絶妙らしい。
23. あらたまった手紙: 夢野久作の少女地獄を思い出した。
63. 古典的: 枕草子きた…!
82. 聞き違い: 絶妙すぎ。笑
88. 罵倒体: なぜかジョジョを読んでいる気になる。
フランス語さっぱり分からんのが残念だなぁ。英訳されて売ってるのなら、それはそれで読み比べてみたい。
この本が更によかった点は、99編が終わった後に訳者の解説があって、ひとつひとつの要点とかを説明してくれているのです!苦労した点とか、ぶっちゃけもう訳せないんで枕草子にしました、とかいう話があってすごい興味深かった。
この朝比奈さん訳版の他に、松島さん訳版というのもあるらしい。是非読み比べてみたい。
こういうの好きな人には絶対おすすめな1冊!
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前人未到のことば遊び。他愛もないひとつの出来事が、99通りもの変奏によって変幻自在に書き分けられてゆく。『地下鉄のザジ』の作者にして20世紀フランス文学の急進的な革命を率いたレーモン・クノーによる究極の言語遊戯がついに完全翻訳。 -
Posted by ブクログ
まずは作者のこの試みと、訳者の仕事を心から讃えたい。
解説を読むと訳者の苦労や工夫が良く分かる。素晴らしい。
内容は非常に面白く、いろいろ参考になるスタイルあり。
個人的に好きなスタイルは…
『遡行』
『合成語』
『区別』
『聞き違い』
結構最初の方のに偏ってるな…。
それはさて置き、好きなスタイルのなかでも『合成語』は最高だった。
マイベスト。
“ぐい押しわざ突き”
“サン=ラザって”
訳者もニヤニヤしながら訳したに違いない。
惜しむらくは“伝達”という面で通じないスタイルがあることかな。
全スタイル普通に使っても通じる内容だったら文句なかった。
なのでその分★ひとつマイナス…と思ったけど、
コトバアソビの名に懸けて、やっぱりひとつプラスで★5つ(笑)。 -
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面白かった。
ドラマチックでも何でもない1つの出来事を
99通りの書き方で表した本。
言葉遊びや実験的なものも含まれていて
中には解説を読まないと何がなんだか分からなかったり
読んでもよく分からないものもあるんだけれど(笑)
でも面白い。
文章って色んな書き方があるんだなぁと、改めて感じられる本でした。
内容も大事だけど、書き方って大事だなぁ。
個人的には「語尾の類似」「アレクサンドラン」「古典的」「英語かぶれ」「イギリス人のために」辺りが好きだった。
「英語かぶれ」は、完全なるルー大柴的文章なんだけれど(笑)
解説を読むと日本語って面白い!と思う。
「イギリス人のために」は音読したくなるし、
最後の最後の「意想外」の最後の一文も意想外で良いな…
全編通して、フランス語から日本語に訳した翻訳者さんの苦労が偲ばれました。
よくぞこれを!グッジョブ!! -
Posted by ブクログ
読み始めたら、コレは、なんと言う本だ。
というより、本じゃない。
フランス語が原文なのに 日本語におしゃれに訳されている。
良くぞここまで訳したよ。
日本語の選び方がうまくて、おしゃれだ。
物語は
『ある日、バスのなかでソフト帽をかぶった26歳くらいの男が隣の乗客が押してくるので腹をたてるものの、その口調はたいした剣幕ではなくて、別の席があくとそそくさと座る。その2時間後、サン・ラザール駅前のローマ広場でその男をまた見かけた。連れの男がいて「君のコートにはもうひとつボタンがいるね」と言っているのが聞こえた。』
というだけなのであるが、
それが、様々な編集方法で繰り返される。
物語を 昆虫の目のように
たくさんの眼で みている。
小さな出来事が まるで宇宙のように膨張していく。
たえまない ひるまない しつこいほどに
くりかえしているが 繰り返していない。
遊んでいるけど 真顔でぶつかっている。
血のにじむような努力をして
いや 知のにじむような努力をして
書き連ねている。
ひとつの物語が 99の物語に 再現される。
あーぁ。
私は いままで 一つの物語しかかけなかったのだろう。
ひとつの物語が 99の物語に なる無限の可能性。
身体が ゾクゾクした。
読み終わったとき なかなかでなかった
大きなウンチが ドンとでたような快感さえ覚えた。 -
Posted by ブクログ
[どうして読もうと思った?]
文章を書きたいけどちょっと弱気になっている私に、読書会の主催者の方がおすすめしてくれたから。
[感想は?]
1つの話をいろいろな方法で書いていてそれはもちろん面白い。
だが、この本をさらに面白くしているのは、海外の本を「翻訳」しているからだ。
訳者の方が、いかに原文(フランス語)の面白さを日本語に置き換えるか、置き換えられない場合は、日本語のどんな特徴を活かせば面白くなるか、という別の部分が、面白さの大半を占めていた。
だから、いろいろな角度から文章を書けるようになりたい人だけでなく、翻訳を志している人或いは今実際にしている人も大変参考になる良書だと思う。
[余談]
訳者の方によると、著者のクノーは、仮原稿の際に、ものすごい数の下ネタを書いていたらしい。それらは削除されて出版されているけれど、それでも一部に「(同じバスに乗っている女性の)お尻が自分に触れることを想像する」というようなフレーズがある。これは当時は許されたかもしれないけれど、現代ではハラスメントにあたる文章だと思う。