ヒラリー・ウォーのレビュー一覧
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帯に「最初から最後まで捜査をするだけ」「なのに抜群に面白い」とあり、いや内容のネタバレじゃねーか!と思いつつも読んだら、目から鱗。まさにその通りで、抜群に面白かった。
「警察捜査小説」を確立した里程標的傑作らしいが、そう言われるのにも納得。「警察小説」ではなく「警察捜査小説」というのがポイント。
探偵小説の警察と言えば得てして探偵役の主人公を引き立たせるための無能役として描かれる、というお決まりのパターンがあるが、本作を読むと「本気になった警察の凄さ」がよくわかる。
文章が読みやすく、上司と部下の掛け合いが面白く、「無駄な風景描写」「もってまわった台詞回し」「複雑すぎる人物相関」「暗い雰 -
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この小説には謎めいた洋館や快刀乱麻の名探偵も出てきません。倦み疲れた警察官たちが、手がかりを一つ一つたどって事件を解決するお話。めちゃくちゃ地味です。
でもめちゃくちゃ面白かった!
女子大生が失踪した。決まった恋人もおらず真面目な彼女に一体何が起こったのか…
1950年代に書かれた作品で、現在のような化学捜査がない時代。地道な捜査で少しずつ真相に近づいていく過程がとても面白いです。
作品内では「事件」と「捜査」だけに焦点が当てられていて、登場人物たち(特に主人公のフォード署長)のプライベートな場面はほとんど出てきません。でも会話や言動の描写で人となりが想像できるのは、作者のヒラリー・ウォー -
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米マサチューセッツの女子寮からふっと消えてしまったのは、美しく聡明で落ち着いた女正徒だった。気まぐれというのも彼女に合わない、深い付き合いのボーイフレンドもいなかった。
すぐに帰ってくるだろう、突然消えた娘は周りの願いむなしくいつまでも帰らなかった。
全寮制のカレッジからいなくなった18歳、美しく聡明な娘は失踪か誘拐されたのか殺人か。
1952年発表の警察小説の嚆矢となる本格推理小説だという、ここから「警察捜査小説」が始まったということだが。今も全く古くなく優れたミステリの一つのジャンルをしっかり守っている。そんな警察小説は嬉しくて読まずにはいられない。かっちり出来上がっていてエンタメといえ -
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失踪当時の服装は
「64」を読んで警察小説がむしょうに読みたくなった時にたまたま見つけた小説。
女子大生が謎の失踪を遂げ、地元警察のフォード署長がその行方を探すというあらすじでトリックはなし。
部下キャメロンと毒舌の応酬を繰り広げながら少しずつ地道に彼女の足取りをつかんでいきます。
地道に足を使って追っていく、それだけの物語なんだけど、証明したりマスコミの名の下知る権利というノコギリを振りかざす記者や被害者の弱った気持ちを食い物にしようとする私立探偵から、被害者の家族を守っても、苛立ちをぶつけられたり捜査の妨害をされたりしてやってられない状況が続きます。
この踏んだり蹴ったり感は64に通じるも -
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ネタバレ最近ハマっているヒラリー・ウォー。
捜査小説の傑作「失踪当時の服装は」と同じく、失踪した少女の行方を追う物語だが、本作は単なる二番煎じではなく、「失踪当時〜」のその先にある結末(悲劇)を描いた作品。
捜査小説としてのおもしろさと、フェローズ署長の熱さは健在。地道な捜査が淡々と繰り返されるなかで、フェローズの事件に対する怒りや焦り、必死さがむき出しに描かれており、警察ドラマを見ているよう。
「愛するものを死よりも恐ろしいものから守ってやりたいから、殺すことができる」という犯人の言葉が、とても印象的だった。次々に怪しい人物が現れるため、てっきりフーダニットに焦点を当てたミステリだと思っていたの -
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なんとも陰鬱なタイトルにひかれ読んでみた…
美人で礼儀正しく成績優秀な13歳の少女バーバラ
初めてのダンスパーティーに誘われ出かけた後、行方不明に…
バーバラに一体何があったのか?
バーバラはどこに行ってしまったのか?
最後の数ページは圧巻!
こんなことって…
なんとも陰鬱なタイトルにひかれ読んでみた…
最後の数ページは圧巻!
こんなことって…
『生まれながらの犠牲者』ってタイトルが胸の真ん中にぶっ刺ささったよ…
苦しいくらいにね…
でも身勝手だよ…
「人の人生を決めつけないで…」
ってまた胸が苦しくなってしまったよ
この作品はヒラリー・ウォーが1962年に発表した作品で警察署長フレ -
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ある時間からあの子の姿が見えないな?となり、具合が悪くて診察室にいるのか?と思いきやおらず、じゃあ急用で外出か?と思えば外出届けも出されていないしスーツケースもある。
そしてさすがにこの時間までいないのはおかしいぞと騒ぎが広がり、失踪事件扱いとなり、父親が呼ばれ、警察に通報され、地道な捜査が始まる。
ずっと捜査が続くのだが、不思議と読んでいて面白く、続きが気になる。女生徒の失踪ということで、家庭環境や学業などに問題が無さそうであれば男に決まってる、と虱潰しに、日記内に登場する全ての男の名前を書き出し、分類に分け、当たっていく。
終盤、刑事の推理で犯罪の流れが語られていき、犯人逮捕で話は終わる -
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ネタバレ「自由研究には向かない殺人」で紹介されていたので気になって読んでみた。警察捜査小説というジャンルを立ち上げた作品。
18歳の少女が寮から突然姿を消し、死体で発見される。自殺かと思われた事件を、警察署長のフォードと部下のキャメロンが地道な捜査で真相を明らかにする。最近ではスマートな警察小説が多いなか、フォードたちの捜査はとにかく泥臭い。わずかな可能性を追及し、少しずつ真相に迫っていく過程は読み応えがあり引き込まれる。
捜査過程のみが淡々と書かれているようでいて、フォードの犯人に対する怒りや、少女の死に対するやるせなさなどが垣間見える、実は人情味のある作品だ。
ヒラリーウォーの他の作品も読んでみた -
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熱い警察官のお話。ある登場人物のセリフ。「警察の仕事がどういうものかは、わかっているだろう?歩いて、歩いて、歩きまくる。そして、あらゆる可能性について調べ尽くす。一トンの砂を篩にかけて、ひと粒の金をさがすような仕事だ。百人に話を聞いて何も得られなければ、また歩きまわって、もう百人に話を聞く。そういうものだ」
この小説には結果的に事件に関係ない情報が多く語られる。途中まではそういうのを読むのが面倒くさく感じるが、やがてそれらが物語のリアリティを高め、読者と物語の警官たちとの一体感を生んでいることに気づく。天才探偵や伏線はりまくりトリックなどに食傷気味の方は一読を。 -
Posted by ブクログ
13歳の娘が行方不明になったとの母親の通報を受け、フェローズ署長の指揮の下、警察活動がスタートする。誰もが美しいと認める少女は、家出したのか、何らかの事故若しくは事件に巻き込まれたのか、なかなか有力な手掛かりは得られない。
一つ一つの情報を追い掛け、その真偽や事件との関係性の有無を潰していく過程が具体的に描かれており、例えば、もしかしたらという情報が結局本筋とは無関係だったということが判明していく、その辺りが警察活動のリアルさとして大変面白い。そして、全体として、無用に冗長な描写もなく、テンポ良く読み進めることができる。
本書の時代設定は1960年代初頭であり、その時代だからこその悲劇