尾本恵市のレビュー一覧
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羽生 善治
将棋棋士。1970年生まれ。1996年、史上初めて七大タイトルを独占。2017年、永世七冠の資格獲得。2018年、国民栄誉賞。
梅原 猛
哲学者。1925年生まれ。京都市立芸術大学、国際日本文化研究センター名誉教授。ものつくり大学総長、日本ペンクラブ会長などを歴任。1999年、文化勲章。
尾本 恵市
1933年生まれ。分子人類学者。東京大学、国際日本文化研究センター名誉教授。2015年、瑞宝中綬章。
将棋にはこのように、理系と文系といった学問領域の枠を超え、さらには芸術から文明論に至るまで、実に多彩な「見どころ」「考えどころ」がある。あらゆる人の知的好奇心に訴えかけ -
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ヒトとは何かを、文系、理系双方の考え方を交えて論じたもの。ヒトについては、生物学、医学、遺伝子学などの科学的分析と、文化人類学、史学、考古学など人文系の分析とがあって、融合した研究はなされてこなかった。そこを総合的に研究し、まとめたすぐれた研究成果だと思う。極めて論理的かつ学術的な、説得力ある内容であった。
「(明治17年(1884)「じんるいがくのとも」設立(坪井正五郎))世界最古の人類学会は、1859年(「種の起源」出版年)パリに創設された。それからわずか20数年後に、日本に人類学会が設立されたのは驚くべきことである。アメリカには、20年先行している」p29
「大型類人猿はその他サルに比 -
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人類学は京大と東大が両輪のごとく、それぞれの特徴を生かしつつ発展してきたとのことで、京大の山極(現総長)、東大の尾本両氏の対談が実に楽しい。尾本氏からすると人類学の学者が総長になるのは、いかにも京大らしく羨ましいとのこと。東大は分子人類学、遺伝子研究に、そして一方では京大は霊長類学に特色。霊長類学は本来は人類学と動物学の狭間の領域。今西錦司氏以来の伝統で、それが日本の人類学の権威になっていることに誇りを覚える。ルワンダの山奥で26年ぶりに出会った34歳のゴリラのタイタスが、山極氏を憶えていた!近づいてきてまじまじと見つめ、子供っぽい表情になったという!34歳は老年の域になるらしい。この実話は
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好きな著者の自伝などはたいがいすぐに飛びつくのですが、尾本先生の著書はいままで読んだことがなかったので、少し迷いました。が、これは断然、読んで正解でした。正月の帰省中、高速バスの中で、何度もクスクスと笑えてしまいました。ドイツ留学時の話。共用の冷蔵庫に入れておいた味噌を捨てられてしまった。においをかいで、腐っていると思われたらしい。東大医学部受験時の問題「シラミの絵を描け」。50年以上前の話ですが、これはすごい。結果は、絵は描けたが、他の問題がとけず不合格。そして、「医学部くずれ」の独文学科。そのあとの鈴木尚先生との出会いがいい。文学部で行われた「人類の進化」についての講義を聴く。授業後の質問
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明治17年に坪井正五郎など10人が、日本初の人類学の組織「じんるいがくのとも」を立ち上げた。これは数年後に東京人類学会に発展し、その後、現在の日本人類学会となる。明治26年に東京大学理学部の前身である理科大学に、日本初の人類学の講座が設けられ、坪井が初代教授に就いた。
アボリジニには、岩壁壁画が描かれた場所で、ディジュリドゥというホルンのような楽器を吹き鳴らし、夜通し歌って踊る儀式がある。
斎藤成也や著者らは2012年に、ゲノム全領域のスニップ検出法を用いて日本人の二重構造説をほぼ支持し、アイヌ・沖縄同系論の証拠も得られた。スニップ検出法は、ゲノム上に点在する多数の独立の単一ヌクレオチドを -
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2000万年前、類人猿は何十種類もいたが、サルは少なかった。サルは、サバンナに出て多産になると、森に戻ってきてから栄え、類人猿を追い詰めた。人類もサバンナに進出して多産になった。
デニソワ人は、64万年前にネアンデルタール人から分岐した。現在のメラネシア人やオーストラリア原住民、フィリピンのネグリト人のゲノムには、デニソワ人のDNAが数%含まれている。インドや東南アジアの人たちのDNAには、デニソワ人の痕跡は全くない。
単独生活やペア社会の動物は、雌雄の体格差がない。規模の大きな群れ生活をする動物では、オスがメスより大きくなる。複数のオスが共存する群れ社会では、厳格な優劣の順位ができる。母 -
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2014年より京大総長に就任した霊長類学(特にゴリラの研究で著名)を専門とする山極氏と、東大で長らく遺伝人類学の権威として活躍した尾本氏という2人の人類学者が、現代における人類学の意義について語った対談集。
期待の割には東大と京大を代表する人類学者のポジショントーク的な部分が非常に多く、スリリングな知的興奮が得られる場所が少ないという印象。
ただ、最終章の「これからの人類学」のパートだけは、純粋に面白く、ここに本書の面白さは凝集されているという印象。
特に、
・インターネットの大きな特徴の一つは「何度でもやり直しが利く」という点にあり、徐々にそうした世界観が普通のものだと子供たちは考える