戸川昌子のレビュー一覧

  • 新装版 猟人日記

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    60年近く前の作品なので所々古さを感じるところはあるが今のミステリーファンにも耐えられる傑作だと思う。当時直木賞候補になっており、松本清張がその選評で人間が描かれてないという主旨の評を残している。この作品に限らずミステリー作品で度々こういった批評を目にすることがある。それほど謎解き、トリックと人物を同じバランスで描くのは難しいのだろうが、どちらも必要不可欠な要素なのだろう。実際、伏線を複雑に張り巡らせ、トリックのアイデアも斬新で豊富なのだが、技巧に走りすぎるあまり肝心の人間描写に深みが足りず惜しいなと思う作品がしばしばある。その点、この作品に関して言えば松本清張の言うこともわからないではないが

    0
    2022年07月13日
  • くらげ色の蜜月

    Posted by ブクログ

    これはホラーなのかミステリなのか…よくある昭和ミステリとは一線を画する、何かすごいモノを感じる。
    江戸川乱歩が好きな方におすすめします。

    0
    2020年10月09日
  • くらげ色の蜜月

    Posted by ブクログ

    昭和だなあ、という感慨も抱けそうな、濃厚な短編集。戸川氏というと、『緋の堕胎』を絶賛した筒井康隆氏が、女流作家というはどうしてこんな怖い話が書けるんだろうと記したように、女性性を強調されることが多い気がする。今の目で見ると、そういうのは感心しない、というべきだろうが、それより、戸川氏の側があえて男性が期待する「女流作家」を演じてたんではないかなという気もする。けれども『隕石の焔』みたいな話もある。これは好色譚の定番である「男日照りの村」の底を抜くような話だが、その抜き方が女にしか思いつかない、というより男はまず思いつかないような抜き方なのだな。面白い。

    0
    2020年10月03日
  • 大いなる幻影/猟人日記

    Posted by ブクログ

    大いなる幻影
    1951年4月、一人の女装の青年が大塚仲町の交差点で交通事故死する。警察も世間も最初はこの異様な姿の事故死を話題にするが、時間とともに忘れてしまう。一方同時期、在日米軍少佐の息子が誘拐される事件が発生。このプロローグから現場近くのK女子アパートの移動に伴い、ここに住むに住む人々(女性)の過去やエピソードがそれぞれがそれぞれの幻影に操られながら語られてゆく。物語の終盤は一気にストーリーが展開するが、最後にドンデン返しが用意されている。
    本書に登場するK女子アパートのモデルは同潤会の大塚女子アパートがモデルとのこと。第8回江戸川乱歩賞受賞作

    猟人日記
    生命保険会社のキーパンチャー尾

    0
    2020年12月12日
  • くらげ色の蜜月

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    短編集です。戸川昌子、やはりぶっ飛んでいる。
    「隕石の焔」、「くらげ色の蜜月」、「聖女」がいい。
    特に「聖女」はエグい。読後、呆然とした後、えぐみがせり上ってくる。登場人物への悲哀と同情とそれにも勝る嫌悪感。凄い。

    0
    2023年07月05日
  • 大いなる幻影/猟人日記

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    老女たちの思惑が絡み合ったさまは、手のひらの上で起きていた幻影にすぎなかった


    じめとして澱んだ感触が残る文章は、舞台となるクローズドアパートの雰囲気をよく表していた。
    入り混じった思惑がどう解決するのかと思ったら、想像以上のラストが二段構えで。
    お見事でした。

    あと、なんでこの文庫本は高かったんだろう?

    0
    2023年03月25日
  • くらげ色の蜜月

    Posted by ブクログ

    第8回江戸川乱歩賞を受賞した戸川昌子が68年から70年にかけて発表した短編14本を日下三蔵編集によりまとめた短編集です。ミステリーというジャンルに収まりきらない、エロやグロをふんだんに盛り込んだ作品ばかりが収録されています。読んでいても行き先が分からず濃霧の中をさまよっている感覚になります。どの作品もあまりに濃密すぎて、読んでいると胸やけします。怪奇小説や恐怖小説という括りの方があってますね。

    0
    2023年02月20日
  • くらげ色の蜜月

    Posted by ブクログ

    酔え、惑え。とはよく言ったもので、エロティックな描写で、人の心の暗い面を描いた上で行き着く結末に、どの短篇も心を惑わせてくる。短篇集だが続けて読むには精神的にきついものがあるが、読後には他の短篇も読みたいと思わせるくらいの傑作ばかり。装丁も内容もインパクトがあるが、短篇の中では『蟻の塔』『悪魔のような女』『蟻の声』が印象に残った。

    0
    2021年08月15日
  • くらげ色の蜜月

    Posted by ブクログ

    妖艶にして凄絶な異色ミステリ短編集。どれもが倒錯したエロティックさを感じさせ、ぞくりとさせられます。どちらかといえばグロテスクでもあるのだけれど。美しさも感じさせられます。ただし、一気に読むと酔いそう。
    お気に入りは「ウルフなんか怖くない」。たぶん、現代だとこれはアンモラルだなんだって言われそうな気がします。ヒロインの浩子も不幸だというように受け取られそう。なのだけれど、実は収録された中でこの作品が最も愛情に満ちて幸せな物語なんじゃないかという気がしました。
    一番ぞくりとさせられたのは「悪魔のような女」。本当にこれは怖い。男性が読めばさらに恐ろしく感じられるかなあ……。
    短い作品だけれど「蝋人

    0
    2021年07月18日
  • くらげ色の蜜月

    Posted by ブクログ

    著者の小説は「大いなる幻影」と「猟人日記」しか読んだことがなかったが、代表作とは言えないこの短編集読んで改めてミステリ作家としての戸川昌子を見直した。
    面白い!昭和感漂う男女の関係をテーマとした官能ミステリとも呼ぶべき佳作揃い。
    もっと他の作品も読んでみたいのだが、ほとんどが現在古書でも入手が困難な状況。

    0
    2020年12月27日
  • 緋の堕胎 ──ミステリ短篇傑作選

    Posted by ブクログ

    濃すぎて読むのがとても疲れる。どの話も、ミステリを逸脱した思考実験的な試みを感じるけれど、著者が狙ってそうしてる感はなくて、なんていうかちょっと怖い。

    0
    2020年10月25日
  • くらげ色の蜜月

    Posted by ブクログ

    戸川昌子の短編集。60年代末から70年代初頭にかけて発表された作品が収められている。戸川昌子を読むのは初めてで、作家というよりたまにテレビで見かけたカミナリ様みたいなパーマをかけたおばさんというイメージが強い。収録作はどれも純粋なミステリとは言い難い内容。かといって奇想とか変格という感じでもない奇妙な作品。いずれも性をモチーフにしているが、抑圧されてたり、倒錯していたり、あるいは支配や暴力であったりと様々。古い作品だけど、時代感はあまり感じさせない。

    0
    2020年10月22日
  • 大いなる幻影/猟人日記

    Posted by ブクログ

    『大いなる幻影』
    「老女(嬢)小説」というジャンルがあるとすれば、最高峰の部類。桐野夏生はこの系譜(特に『アイム・ソーリー・ママ』)。牛乳瓶を盗む老婆とバイオリンを盗んだ老女の対比。そして指紋を介して生まれる二人の共犯意識。文章の生硬さは意気込みの表れ。内題と章番号が煩瑣。

    『猟人日記』
    前作に比べ、文体の上でも構成の上でも洗練。昭和四十年代の風俗を知る上でも興味深い(特に喫茶文化について)。戸川と美輪らしき人物が登場。曰く、「戦後、人生というものが軽くなってしまった」。

    『推定無罪』とトリックが同じ。

    0
    2010年05月19日
  • 新装版 猟人日記

    Posted by ブクログ

    作者の名前に覚えがあるな・・と思ったら、歌手だった、てかラジオで昔聞いたんだった。えらい渋い声だったんだ、という覚えだけが。。
    それはさておき、めっさ古い話らしくて、なんか江戸川乱歩とか、そんな雰囲気で、しかもどっかで聞いたことあるような話のような気もして、予定調和な世界がなきにしもあらずなとこもあるけども、さらさらーっと読めるという意味では良い時間つぶし。

    0
    2016年03月13日