あらすじ
女心の軌跡を描く傑作推理の2長篇――古色蒼然とした5階建て赤レンガのアパートは、男子禁制の女の館だった。互いに他人を寄せつけずに暮らす、孤独な老嬢たち。そこへ突如、アパート移動工事が始まる。工事に呼応して奇怪な事件が続発し、それまで沈潜していた老嬢たちの過去が、むき出しにされた。 華麗なデビューを果たした江戸川乱歩賞の、二重のドンデン返しが見事な、サスペンス小説の傑作。その映画化が話題を呼んだ猟人日記を併録する。
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Posted by ブクログ
大いなる幻影
1951年4月、一人の女装の青年が大塚仲町の交差点で交通事故死する。警察も世間も最初はこの異様な姿の事故死を話題にするが、時間とともに忘れてしまう。一方同時期、在日米軍少佐の息子が誘拐される事件が発生。このプロローグから現場近くのK女子アパートの移動に伴い、ここに住むに住む人々(女性)の過去やエピソードがそれぞれがそれぞれの幻影に操られながら語られてゆく。物語の終盤は一気にストーリーが展開するが、最後にドンデン返しが用意されている。
本書に登場するK女子アパートのモデルは同潤会の大塚女子アパートがモデルとのこと。第8回江戸川乱歩賞受賞作
猟人日記
生命保険会社のキーパンチャー尾花けい子はバー「ボウ」で本田一郎と出会い一夜を過ごす。6ヶ月後尾花けい子は本田の子供を身ごもったまま自殺。尾花けい子の死を知った本田は哀悼するも、妊娠の事実を知らぬまま新たな獲物を求め、その成果を猟人日記としてゆく。しかし新たな女性たちは本田の持つ特異な血液型の痕跡を残したまま次々と殺されてゆく。本田の行動を追うように尾花けい子の姉である尾花常子の影がつきまとう。本田は被害者の残した痕跡が証拠となり逮捕、起訴され死刑の判決がおりてしまうが、弁護人になった畑中弁護士事務所に勤める進士は
調べを進めてゆくにつれ証拠の血液型の秘密に迫る。いったい真犯人はどのようにして証拠を入手したのか?犯人は尾花常子なのか? 最後に語られる驚愕の真相。DNA鑑定が採用される以前の時代背景。海外ミステリーのタッチを持つ小説
Posted by ブクログ
老女たちの思惑が絡み合ったさまは、手のひらの上で起きていた幻影にすぎなかった
じめとして澱んだ感触が残る文章は、舞台となるクローズドアパートの雰囲気をよく表していた。
入り混じった思惑がどう解決するのかと思ったら、想像以上のラストが二段構えで。
お見事でした。
あと、なんでこの文庫本は高かったんだろう?