田中彩子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
村の境で村人を守る役割を課せられながらも村に入ることを許されず不当な扱いを受けていた男たち。その長であった権平爺は幼い捨蔵を自分たちから引き離すことを選択するも、捨蔵は納得がいかず一人逃げ出し放浪することになる。
石屋「大江屋」で石工をめざし修行に励む寛次郎は、兄弟子たちのもと一番下として下積みに明け暮れる日々だった。親方はある日、ひとりの弟子を連れてくる。彼の名は申吉――名前を伏せた捨蔵だった。
仕事の呑み込みは早いがとにかく愛想のない申吉。型にはまらない天性の才を垣間見せるも、本気で取り組む姿勢を見せない。一人前の石工を目指す寛次郎はそんな申吉に困惑しつつも、彼の持つ非凡な才能と背負った -
Posted by ブクログ
石工という職人の世界で生きる二人の少年を描く。
厳しい職人の世界、貧しさや村外への差別、そして不可思議な存在を交えつつ、青少年の不安定な精神世界や人間関係を描いている。
硬い石に向かって、ひたすら鑿をふるう。その姿と重なって、心にぐっと突き刺さってくる。
相手を意識せずには居られない。分からないけれど分かってしまう。そんな存在と出会えることは、例え苦しくとも、ものを生み出す人にとっては、最良の人生になるのだろう。
一筋縄ではいかない回りの大人たちにもドラマがあり人間味がある。
『天狗ノオト』も良かったし、結構好きな作家かも。寡作なのが少し残念。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ良かったです。ですが私の読み方が甘いのもあるかもしれないが、伏線の印象が薄すぎて、いまいちすぐに理解ができなかったり…プールの下りは物語として必要性があったのか疑問も残ります。でも、この当たり前の日常の中に、気づきもしないうちに天狗が何事もないように、同じ時を人間とは違う世を天狗は生きているということなんだろう。これこそファンタジーの醍醐味だとも言えるので、この伏線の薄さも私たちが天狗に気付かないだけで、それに気づいたタモたちはファンタジーの扉を開けたとも言えるよね。それは一部の人にしか体験できないこと。夢が….あるよね…❤️これこそ、ファンタジー好きの理想とも言えるな…
-
Posted by ブクログ
以前からちょっと気になっていた作品。
丁度良い機会なので、読んでみた。
第2章を中心とした物語だけで成立させていたも十分なところに、第3・4章を加え、今という時代を描き込んだところが、新しい。
かつて天狗が住んだ奥深い山は、今や開けた平地で、普通に村が存在し、少年たちが暮らしているという現実。
山奥のさらに奥にあった洞が、人が暮らしているすぐそこに存在しているという現実。
なんて罪深い。
保と木三太、主人公が冷静な子供だという点が、冒険譚のはずのこの物語を静かなものにしている。
天狗とは、人とは、巣とは、山とは、生とは、何なのか。
私たちが生きているこの場所は、何なのか。
そんなことを -
Posted by ブクログ
ネタバレ死んだじいちゃんの日記に記された謎の一文。
`天狗ニアフ`
・・・天狗に会う?
あまり知らなかったじいちゃんの事だけど、日記に書かれた事について、ぼく(保。小6。通称タモ)は、心にひっかかった。
保たちの住んでいる地方には、千吉天狗の伝説がある。
そして、友達の哲也(天狗を信じたほうが面白いと思っている)と優人(現実主義だが恐がり)、そして川野あかり(高学年になってなんとなく離れがちになっていた幼なじみ)とともに、天狗のことを調べてみる。
小6設定だけど、しっかり読み応えのある和風ファンタジー。天狗達の生き方、天狗になる者、そして天狗達が守るもの・・・
保のいる現代と、じぃちゃんが出会った天