國原吉之助のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ガルバの治世からウェスパシアヌス帝の誕生まで、そしてバタウィ族の叛乱を記述する。かなり詳細に書かれているので読むのは一苦労。しかしそれだけ貴重な歴史的資料なのだろう。仕方のないことだが人物の評価についてはタキトゥス自身のバイアスを感じずにはいられない。
歴史の記述を読むだけにとどまらず、当時のローマ人の価値観を感じることができる。元老院は基本的に皇帝に追従するのみ。骨があり実績のある軍人が次期皇帝を狙ってクーデターを起こす時代。ハンニバルと戦った共和制ローマ時代の元老院の気骨と団結感は全く感じられない。そういったタキトゥスの嘆きを感じることができる。 -
Posted by ブクログ
タキトゥスの「歴史=ヒストリアエ」は1/3しか現存しておらず、キウィリスのセリフのおもいっきり途中でいきなり終わってしまう。そして「歴史」といいながら本人が10代の頃のローマ時代を詳述するため「同時代史」の題名で訳されている。意外にもタキトゥスはガリアの出身で、激動の帝政ローマから平和な五賢帝初期の時代までを生きた聡明な人物だった模様。属州出身とは思えないほどローマ寄りの言い回しが多い。共和制を懐かしみつつ、巨大な帝国の維持・安定に関心が高いことがよく覗える。読みやすいように現代語アレンジされているとはいえ、2000年前の一次資料とは思えないほど読んで面白いことに驚いた。人物の心理描写や見事な演説など、本人の主観やヒレが付いた噂が含まれていそうな点について批判的な意見もあるそうだが、貴重な資料であることに違いなく、小説のように読める。「歴史は時代の証人であり、真実の光、記憶の命、人生の師、古代の使者である」と言ったキケロに影響を受けていると解説されている。オクタヴィアヌスの死からネロの自殺までを綴った「年代記」も気になってしまった。同時代史はウェスパシアヌスから長男ティトゥスから次男ドミティアヌスまでのフラウィウス家3代の皇帝史だが、驚くべきことに現存している章は時系列で見ると紀元69年のわずか1年の出来事となっている。老齢のガルバはピソを養子とし、これを妬んだオトに誅殺され、さらにオトはウィテリウスに初戦で敗北して何故か自殺。その後ウェスパシアヌスが属州から支持を集めていきローマに至りそうなところまでが残っている。ネロを始め、その後の皇帝が三頭政治のメンバーの親族系であることは初めて知った。また、ユダヤ民族の由来や新興のキリスト教などについての紹介も興味深かった。ユダヤ人の起源についての伝承によれば様々な説があり、クレタ島(イダ山が訛ってユダヤになる)からリビアに逃れたものや、エチオピアが起源となるもの、アッシリアからの移民でエジプトに定住した、などがある。出エジプトについては、疫病を治めるためにエジプト王が神託からユダヤ人を追い出して人口を調整したような記述になっていて旧約聖書との違いが見て取れる。神々からも他の人間からも見捨てられ、辛い放浪の末に水脈を見つけて命をつなぐ。そして種族に対する自らの権威を確立するためにモーセは他の民族(多神教)とは相容れない新しい宗教儀式を制定した。伝統的な宗教を無視し、ユダヤ教の神殿に貢税や奉納物を持ち寄り、富がそこに集中し、民族同士の仲間意識が強い。偶像を否定し、断食や豚を食べないなど風習についても軽蔑的に紹介している。
-
Posted by ブクログ
ガリア戦記
著:カエサル,G.J.
訳:國原 吉之助
講談社学術文庫 1127
難読書、地名、人名ともなじみがないので、カエサルが率いている軍団がどのように動いているのか、イメージがしにくい。本書後ろに座標が入った地図と、その後ろに地名辞典とその座標が載っているのでそれを頼りにするしかない。ガリア(=フランス)領内をローマの大軍がくるくると回っているのである
ガリア=ほぼフランス(+ベルギ全土、+オランダ一部、+スイス一部、+ドイツ一部、+イタリア一部)、つまり、ガリア戦記とは、ローマ人カエサルから見た、フランス討伐記なのである
ゲルマニア=ドイツ、ブリタンニア=ブリタニア=UK、
ローマ帝国から見ると、ゲルマニア人の来襲にて、その通り道となる、ガリアと、イタリアのすぐ南にそびえるアルプスの向うに広がるガリアの地は、軍事上の緩衝地帯、非武装中立地帯として安全保障上の重要地域なのである。カエサルでなくとも、ローマの属州として、ローマの僚友として取り込んでおきたくなるだろう。
そして、カエサルは、その部族間の要請にしたがって出兵したり、レヌス川(=ライン川)と対峙しているゲルマニア人と戦闘する
いずれにせよ、この時代は、アルプスの街道が整備され、大兵団が何度も、行き来している。
スキピオと、ハンニバルのように、アルプスを越えた部隊に強襲されることはなくなっていたのである
<難解な地名と、部族名(抄)>
ガリア
ベルガエ人 (アクィタニ人とは、ガルンナ川)
(ケルタエ人とは、マトロナ川)
(ゲルマニア人とはレヌス川
アクィタニ人 (ベルガエ人とは、ガルンナ川)
ガルンナ川に始まり、ピュレネー山脈に及び、ヒスパニアの大西洋岸に達する
ケルタエ人(ベルガエ人とは、マトロナ川)
ロダヌス川、ガルンナ川と大西洋とベルガエ人の領土
ゲルマニア人 (レヌス川の北岸にすんでいる民族)=ドイツ人
当時、ガリア人(=フランス国家)という概念はなく、部族が合同と、離散を繰り返していた
ヘルウェティイ族 47 7E(ケルタエ人の部族、勇猛)
★オルゲトリクス
セクアニ族 47 5E レヌス川下流、ケルタエ人の北東(元老院よりローマ国民の友)
★カタマンタロエディスの息子、カスティクス
ハエドゥイ族 47 4E
★ドゥムノリクス ディウィキアクスの弟」
ラウラキ族 48 7E
トゥリンギ族 48 8E
ラトビキ族 48 7E
ポポイ族 47 2E
アッロプロゲス族 45 5E
都市:ゲナウァ
サントニ族 46 2W
トロサテス族 44 1E
アルプスの部族
ケウトロネス族 46 6E
グライヨケリ族 45 6E
カトゥリゲス族 45 6E などなど、たくさんあって、しかも狭い地域に集中している場合もあり
目次
第1巻 1年目の戦争(BC58)
第2巻 2年目の戦争(BC57)
第3巻 3年目の戦争(BC56)
第4巻 4年目の戦争(BC55)
第5巻 5年目の戦争(BC54)
第6巻 6年目の戦争(BC53)
第7巻 7年目の戦争(BC52)
第8巻 8年目と9年目の戦争(BC51,BC50)
解説
専門語略解
地図
部族名・地名索引
人名索引
ISBN:9784061591271
出版社:講談社
判型:文庫
ページ数:442ページ
定価:1300円(本体)
1994年05月10日第1刷
2012年10月30日第38刷 -
Posted by ブクログ
ローマ人の物語を読んだときからいつか読もうと思っていた本。
2000年前の話が生々しく伝わってくる。幾つもの惨殺すら記述するのだから。勝者の弁と言う当たり前の事を抜いても、それ程多くない人数で、戦いを勝ち抜いてきた所、特に、事前の情報収集を元に作戦を立て、実行に移し、相手の降伏の交渉においては、武器を一箇所に集めさせ、大量の捕虜を取ると言った一連の組み立て以外に、兵士の昼夜分かたずの力戦、設営なども興味深い。
解説の年表にある、25歳の時に、「修辞学を学ぶ」と言う箇所は、この戦記だけでは無く、カエサルの政治家、軍人としてのベースになったんだなと。