黒崎視音のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
黒崎視音『マインド・チェンバー 警視庁心理捜査官』講談社文庫。
『警視庁心理捜査官シリーズ』が徳間文庫から講談社文庫に移籍。書下ろしの最新作で、630ページというシリーズ最大のボリューム。
シリーズが最初に刊行されたおよそ20年前と現在とでは様々な事情が異なるのだが、全く違和感は感じない。
結末には少し不満が残るものの、全体を通じて読み応えがあった。ひと昔前にブームになった猟奇殺人事件を扱うミステリーとプロファイリングの組合せを黒崎視音がリバイバルさせようと挑んだ意欲を感じる。
『プロローグ』と『エピローグ』、『間奏曲』と題されたインターミッションを挟み、三章構成の連作小説かと思っていたのだが、全編を通して大きな仕掛けが仕込まれていた。
注目すべきは第二章で、主人公の吉村爽子に加えて、公安の女狐と呼ばれた柳原明日香が登場するや物語は俄然面白くなる。
『プロローグ』。昔流行った久保田早紀の『異邦人』を歌う白い顔の女は何者か。
『第一章 血塗られた翼』。組織捜査という壁に挑む特別心理捜査官である吉村爽子のプロファイリング。背中に傷を負いながら、警視庁本部捜査一課を追われた吉村爽子の身に一体何が起きたのか。警視庁本部捜査一課から多摩中央署に左遷されて来た特別心理捜査官の吉村爽子。新たな同僚たちに心を開くこともなく、まるでセルロイド人形のような無表情を貫く吉村だった。そんな吉村も同僚の支倉だけには僅かに心を開く。そんな中、管内で看護師の女性が自室で殺害される事件が発生する。犯行現場であるアパートの部屋の壁は被害者の出血で汚れ、さらには犯人が意図的に被害者の血で何かを描いたような跡があった。
『間奏曲』。吉村爽子が幼い頃に経験した事件のトラウマに苛まれる姿が描かれる。そして、次なる猟奇殺人事件が……
『第二章 暗い森』。吉村爽子のかつての上司である公安の女狐と呼ばれた柳原明日香が登場する。『間奏曲』で起きた酒鬼薔薇聖斗事件を彷彿とさせる事件の捜査が描かれる。犯人の14歳の少年は意外にもあっさり捕まり、柳原が聴取を行う。しかし、自供により明らかになった凶器も犯行現場に残された物証も少年の犯行を示していなかった。その理由に気付いた吉村がそれを柳原に告げると柳原は豹変するところが読みどころ。
『第三章 正気の仮面』。第一章と第二章に描かれた2件の殺人事件の犯人を治療していた精神科医の奥津城美鈴に吉村爽子が対峙する。奥津城を追い詰めようとする吉村だったが、思いもよらぬ事態が起きる。
『エピローグ』。予想とは異なり、再び吉村爽子だけが責任を取らされるという、何とも煮えきらぬ結末には少し不満が残る。
定価1,188円
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黒崎視音『警視庁心理捜査官 KEEP OUT II 現着』徳間文庫。
新装版が刊行されたので、5年ぶりに再読。中短編3編収録のシリーズ第5弾。
シリーズ第1作は警視庁捜査一課に初めて誕生した女性心理捜査官の吉村爽子が主役の物語で、柳原明日香は吉村が尊敬する上司という役回りであった。第2作でも吉村爽子が主役を務めるが、第3作、第4作の主役は柳原明日香に代わり、この第5作では二人がダブルヒロインという設定になのだが、やはり元公安の女狐と呼ばれた柳原明日香の方が吉村爽子より遥かに上手のようだ。
『嗤う女狐』。時代的には『警視庁心理捜査官』のシリーズ第1作の前になる。柳原明日香の元に27歳の吉村爽子が転任するところから物語が始まる。元公安の女狐と呼ばれた柳原明日香が特殊詐欺グループのメンバーを手玉に取る。
『寝台刑事』。吉村爽子が捜査一課から所轄に左遷されてからの物語。一種の安楽椅子探偵物。マンションの五階から投身自殺を図ったと思われる不動産投資会社の男性経営者。しかし、男性の着衣や部屋の様子に不可解な点が見付かる。吉村爽子は風邪で寝込み、実際の捜査にあたるのは部下の支倉。ベッドで熱にうなされながらも、吉村は支倉に事件解決の的確なヒントを与える。
『嵐のなかで』。こちらも吉村爽子が所轄に左遷されてからの物語。若い女性が自宅の玄関で心臓を刺された状態で発見させる。捜査方針に異を唱えたことから所轄の中で孤立無援となった吉村爽子の前に現れた柳原明日香。警察の誤認逮捕も自らのチャンスに変えてしまう柳原明日香は生まれながらの女狐だ。
本体価格720円
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黒崎視音『警視庁心理捜査官 KEEP OUT』徳間文庫。
新装版が刊行されたので、11年ぶりに再読。前作で活躍した吉村爽子のその後を描くシリーズ第2弾。9編収録の連作短編集。
警視庁初の心理捜査官として任命された吉村爽子は、無謀な単独行動による連続猟奇殺人事件の解決と引き換えに多摩中央署に左遷されていた。所轄の一癖も二癖もある刑事たちに揉まれながら、再び心理捜査官としての自信を取り戻していく吉村爽子。
『第一話 所轄署刑事』。年の離れた夫婦の夫が突然死し、吉村爽子らが臨場する。夫の死は元看護婦だった若い妻による保険金目的の殺人なのか……
『第二話 二二五』。タイトルの『二二五』は誘拐事件を表す警察の符丁。中学2年生の少年の身代金誘拐事件の背後にあるのは……
『第三話 筋読み』。自宅の二階で急死した24歳の女性。心理捜査官としての自信を失いかけていた吉村爽子が検死官に促され、検死を担当し、抜群の推理力を発揮する。
『第四話 ノビ師』。タイトルの『ノビ師』とは、忍び込み専門の常習窃盗犯のこと。女子中学生が被害にあった性犯罪事案と『ノビ師』がどう関わって来るのか。
『第五話 ニューナンブ』。交番の警官を襲い、拳銃を強奪しようとした事案。実際の捜査から外された吉村爽子は独自の分析により犯人像を描く。そして、明かされる爽子の恩人との過去の出会い……
『第六話 動機』。若い母親と同居する男が母親の前夫に刺されるという事案が発生。単純な愛憎事件と思われたのだが、幼い娘を警察署内に保護した吉村爽子は前夫の傷害に至った動機を解き明かす。
『第七話 相勤者』。会社の上司がコンビニに買い出しに行った少しの間に起きた部下の男女の強姦事件。吉村爽子と部下の佐々木が事件を調査するが、佐々木は意外な人物を真犯人と推理する。その理由は……
『第八話 地蔵背負い』。過去の事件で不起訴になった男の妻が自宅で縊死を遂げる。自殺か、他殺か……吉村爽子の推理が再び署内に波紋を投げ掛ける。
『第九話 至急報』。幼い少女により吉村爽子にもたらされたシーズー犬の失踪事件はやがて、主婦が被害者となる傷害事件とも関連する。いよいよ過去の自身と決別する爽子……
本体価格680円
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黒崎視音『警視庁心理捜査官 上』徳間文庫。
新装版が刊行されたので約17年ぶりに再読。
警視庁捜査一課に初めて誕生した女性心理捜査官である吉村爽子と上司の柳沢明日香の物語はここから始まる。組織に於ける女性の地位が著しく低く、まだプロファイリングの技術が認知される前の時代。吉村爽子が男社会の警察組織の中で自らの信念を曲げずに姿を見せぬ恐るべき犯人に迫る。
被害者は女子短大生。下半身の着衣は乱れ、頭部から夥しい血を流した死体は意図的にポーズを取らされたかのようにうつ伏せに倒れていた。腹部には『ジャック・ナイト』の文字が……臨場した27歳の心理応用特別捜査官の吉村爽子は犯人のプロファイリングを進める。姿の見えぬ快楽殺人犯。そして、第2の殺人事件が……
本体価格720円
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黒崎視音『警視庁心理捜査官 純粋なる殺人』徳間文庫。
何年か振りの『警視庁心理捜査官』シリーズの続編。表題作の中編1編と『蒼い闇』『クリスマスイブの出来事』の短編2編を収録。
『純粋なる殺人』。シリーズ初期の原点に回帰したかのような読み応えのあるストレートな作品だった。東京町田市で2人の女子大生がマンションで襲われ、1人が絞殺された揚げ句に頭部を切断された状態で発見される。もう1人は目隠しと猿轡をされ、結束バンドで縛られた状態で事件現場に残されていた。事件の捜査を指揮するかつて公安の女狐と呼ばれた柳原明日香は多摩中央署から心理捜査官の吉村爽子を召集する。爽子は同期の日高冴子とコンビを組み、事件を捜査するが……
『蒼い闇』。痴漢で逮捕された中国人留学生の嫌疑を晴らすために爽子と過去の事件で因縁深い若手女性弁護士が爽子に協力を依頼する。しかし、事件の影には公安と中国諜報員の姿が散らつき、罠につぐ罠が爽子を窮地に立たせる。
『クリスマスイブの出来事』。本作の締めくくりに相応しいファンタジックな作品。成功と失敗を繰り返しながら心理捜査官として、警察官として成長を続ける爽子にサンタクロースが渡したプレゼントとは……
本体価格710円
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黒崎センセ初の時代物。
綿密な取材と膨大な参考文献があり、その上に、物語として昇華させるための過不足ない脚色が加わっている。こりゃ読み応え十分。
また、主人公ほかキャラクター各々の書き込まれ具合も申し分なし。
ヒロインの脇を固める、気骨あふれる漢たちが良い。
黒崎作品は、サブキャラに魅力的なヒトたちが多いのだ。
時代や立場は異なるが、「市井の人々を護るプロフェッショナルな面々とその矜持」という見方をすれば、これまでの作品の延長線から進化を遂げた作品ともいえる気がする。
(というエラそうな批評)
黒崎作品のこれまで唯一の不満点が、何しろ新作がなかなか出ずに待ち遠しい日々を過ごさなければならぬところだったのだが、これだけのクオリティが保たれるためなら少々待たされるのはヤムナシであると思う今日この頃である。