ブッツァーティのレビュー一覧
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幻想と寓話の短編集。ブッツァーティの長年の短編から主要な作品を集め色々なスタイルが感じ取れるようにしたという。
不安と恐怖を幻想を元に語る。かなり映像的な文章。イタリア文学界では著名。『タタール人の砂漠』が代表作で既読。『七階』は劇として上演され大きな評判を呼び映画化もされたという。画家として漫画やイラストも書たらしい。児童文学も書いていて翻訳されている。
規律の厳しい軍隊の憧れ、大自然の恐怖と何もかも包み込むその厳しさ、不条理と不安と恐怖などが構成要素にある。神・聖者が語られることも多くキリスト教文化圏の影響をかなり感じる。
イタリア幻想文学はなかなかよい。役者はロダーリの翻訳者で訳文はかなり読みやすい。
グランドホテルの廊下・神を見た犬・護送大隊襲撃・戦艦《死》。他の短編も良い。 -
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ネタバレブッツァーティは初めて読むが、非常に良かった。
幻想的、と帯には書いてあったが、どちらかと言えば、昔話の様な雰囲気があり、不思議な気持ちになる。
だが、様々な強迫観念や死への恐怖と生への執着(とまではいかないかも知れない)、そして理不尽さが描かれている。
表題作について。
神を信じない村に現れた、不思議な犬。
彼と狡猾なパン屋の男、隠修士を中心にして、人々の間に疑心暗鬼が広がっていく…
その互いを探りながらの駆け引きの様子がとても良かった。
結局、神を信じず、口からは罵倒の言葉が出るような人々でも、知らぬ内に深層では信じている、みたいな話が面白かった。
どれも面白い話ではあったが、特に7階、グランドホテルの廊下は秀逸。
ただ、小さな暴君はひたすらに胸糞が悪かった。
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「天地創造」神と天使が生物をつくりあげる際、人間は不恰好で厄介ごとを生み出すと却下となるが...
生み出しちゃったね。
「アインシュタインとの約束」アインシュタインがある路地で死の天使に会う。今は重要な発明の最中だと1ヶ月、死を延ばしてほしいと願う。三回延ばし、ある発明を完成させた。その発明に死の天使=悪魔は喜ぶ。
あの発明ですね。
「神を見た犬」修道士についてきた犬は、修道士が死んだ後、不信心な人々が住む村に降りてくる。そして村中を歩き回り、人々の行動を見つめるのだった。
お天道様はいつも見ている。
最初は面白かったものそれぞれ、書き記そうと思ったのですが、読み終わったら次を読みたくなって、中途半端に。
聖人の出てくる話が好き。
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短編集で不条理を描いたもの。星新一に系統は似てるけどそれをもっと文学的にしたような。人の持つ社会的心理から返って個人が苦しんでしまう様な様を描いたものが多い。
1. 天地創造。キリスト教ネタがいくつかあって分かりにくいものもあったけど、これはシンプルで、地球にある一切は神によってデザインされたとされるが、こんな裏話があったのではないかという話。作者がいかに人間を醜いと思ってるかが一作品目で分かる構成なのが良い。
2. コロンブレ。親や世間の謂れを真に受けて信じ込んでしまった為に人生を棒に振る寓話。
3. アインシュタインとの約束。偉人に勝手に性格をあてて描くのは何だか気持ち悪かった。
4. 戦の歌。これは本当に訳がわからなかった。解説が欲しい。国は一体何処と戦っているのか?なぜいつまでも戦争は終わらないのか?歌は何を言っているのか?
5. 7階。これも訳がわからないと言えばそうだが、書いてあることをそのまま読めば分かるし、面白かった。それは不名誉なバロメーターであるが主観的な評価であり、またあらゆる言い訳に負けて、ずぶずぶと最高級の不名誉を負ってしまう話。
6. 成人たち。キリスト教を知らないので聖人が何かよく分からなかったけど、仏みたいなもんだろう。そんな聖人の中でも人間的な悩みがあるという話
7. グランドホテルの廊下。急に話が小さくなった。人間臭さを描いた笑い話
8. 神を見た犬。表題。神を信じない村の人たちだが、ふとしたきっかけで一匹の犬を恐れてしまう話。宗教臭い。
17. 病院というところ。これはすごく好き。これが病院というところなのだ。
19. クリスマスの話。いい話。
21. 戦艦トート。これだけすごく長い。内容の割に。 -
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上手くいかないから不幸なのではない、貧しいから不幸なのではない、それだから不幸なのだと思ってしまう考え方が不幸なのだ。ブッツァーティの小説は読者に主人公の人生の最後に立ち会わせそれを問いかける物語だ。一元的な物の見方を否定し物事に違う観点を与える。10代の頃彼の長編「タタール人の砂漠」で頭をガツンとやられた。それと同じ感覚がこの短編集にも詰まっている。謎の怪物コロンブレに殺されまいと逃げ続けた男の話、護送大隊をたった一人で襲撃しようとする年老いた山賊の話。ラストですべての不幸が幸福に代わり、幸福が不幸に入れ替わる。この世界のことはすべて脳内で起きている。他人の視点は何の意味もない。自分の人生が幸福か不幸かは誰が決めるのか。自分の脳が決めるのだ。ザックスナイダー監督が私のお気に入り映画「エンジェルウォーズ」で伝えたかったのもそれだと思うがリアルな映像ゆえに成功したとは言い難い。でもテーマは同じ。自由への鍵はそこにある。
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人間臭い、気軽な神が登場し、日常から非日常へと知らぬ間に誘われ、ときには残酷なオチをつける。
日本の読者なら、少し長い星新一を読んでいる気分になるのでは。
非常な日常観察力(グランドホテルの廊下、小さな暴君)、純粋な想像力の飛翔(呪われた背広)、人生の危うさ(マジシャン)という本を読む楽しさを思い出させてくれる本。すごくいい。
描写も非常に綺麗(神を見た犬、戦艦《死》)。
解説も気がきいている。
「映像的な幻想と現実とが交錯し、両者が入り交じった特有な世界における、はかなさや哀しさにみちた美。そこでは、現身の人間と死せる者とが別れの挨拶を交わし、実在の戦艦が幻の戦艦に攻撃をかけるのだ。」
これだけしびれる。 -
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おもしろい
「竜退治」が特にいい
この話の恐ろしさは竜を殺した人間に与えられる罰(死)ではなく
むしろ罰を受けずに済んでしまうこと
竜の叫びに対して沈黙で返す世界に向けられていると思った
未知の存在を徹底的に狩り尽くしてしまう人間の習性はこの地上の支配者としてふさわしくそしてとても醜い
列車とか行進とか、何かを目指して走り続けている話が多い
しかしそれらはすべて進路を間違えていて、今どこにいるのかさえわからない
このままでは目的地に辿り着かない、でも引き返すことも止まることもできない
そういう不安が強い人だったんだなブッツァーティは
「聖者たち」もよかった。
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『タタール人の砂漠』で有名なイタリアの作家であり画家でもあるブッツァーティの短編集。『タタール人の砂漠』と同様、幻想的と評される作風で不条理さや不安感、安定のなさ、不思議、奇跡などを描く。それは現実的ではないがゆえに逆説的にリアリティをともなっている。本人はカフカ的と呼ばれることを嫌がっていたようだけれど、作風的にはカフカのようで、この世の何ともならなさを描くことに卓越している。
映画監督フェリーニとの映画制作も構想されていたようだけれど、実現はしなかったとのこと。フェリーニの作風も夢や幻想に仮託しながら無意識や奇跡などを描くものであり、親和性はあると思われるだけに実現しなかったのが残念。同時代人のモラヴィアが実存主義文学的作風だったのに対抗することを意識していたようで、その対立も興味深い。
光文社古典新訳文庫がブッツァーティを改めて世に出してくれたことに感謝。 -
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ネタバレ小説というよりは、寓話集。というか昔話集、と言いたい趣きすらある。
というのもマックス・リューティの所謂「昔話3回」の方程式があるからだ。
またカフカに比されるのは作者としても不本意だろうが、しかたない、と「変身」および短編数作しか読んでいない者でも感じざるをえないくらい、カフカチック。
というか同じグラデーションに安部公房も星新一も筒井康隆もいて、その源流を仮に想定するならカフカと言わざる得ないくらい、カフカのすそ野が広いせい、なのだろう。
寓話的な短篇の中にあって、やはり個人的な好みは、比較的長めの小説的な数作だ。
「コロンブレ」「神を見た犬」はまだ寓意強めだが、「七階」「護送大隊襲撃」「小さな暴君」「戦艦《死(トート)》」は極私的短編アンソロジーに入れたいくらい、短編小説の見本として輝いている。
というより、そのエグさ・涙腺刺激度数は他に類を見ない。
このへんにこの作家の良さを見出してみたい、そして今後「タタール人の砂漠」を読もう。
■天地創造……天使がデザイナーという視点は面白いね。
■コロンブレ★……近づいたら死ぬと言われた海に、むしろ憧れてしまう。そして老いてから相対する、これも死そのものだ。最後はひどく皮肉。
■アインシュタインとの約束……地獄の大悪魔たちの望みなのだ」……早く原爆を造れ、という人類史的悲劇の暗示?
■戦の歌……人物も群衆も匿名の、山尾悠子が好みそうな。
■七階★……これは凄まじく怖い! 役場のたらい回し的なもどかしさを飛び越えて、もはや死と老いそのものを描いている。この窓のブラインドのSEは「悪魔のいけにえ」の鉄扉の音かもしれないくらいだ。
■聖人たち……聖人が死後「納められる」という発想は一般的なのだろうか? 独特なオトボケ感。
■グランドホテルの廊下……コントだね。関係ないけど、全裸でビジホのドアから出てしまったときの、酔い醒める瞬間よ。S県のアパホテルにて。
■神を見た犬★……ディストピアを描くのはだいたいSFというジャンルだが、この作品は相互監視という現実にある集団心理を、SFに頼らず描く。なおかつディストピア、ニアリーイコール、ユートピアなのだ、という視点は保持されているのである。ユニークに皮肉を描いており、面白い。
■風船……すべてを見通せるかわりに、とある感覚を失っている、という設定は、まるで「ベルリン・天使の詩」のようだ。その設定を引き破るかのような悲鳴の、強烈さ。
■護送大隊襲撃★……頑固一徹親父の幻覚に過ぎぬのかと思いきや、幻想が現実を食い破ってくる! 浪花節と言えば言い方は悪いが、そのギリギリ手前のリリシズムおよびダンディズムがある、かと思いきや、なんというラストの軽やかさよ。とても映像的な幻想文学。イーストウッドに任せたい。
■呪われた背広……星新一ブラック味120%。源流はたぶんカフカなんだろうけれども。
■一九八〇年の教訓……「神を見た犬」の同工異曲。
■秘密兵器……星新一よりは筒井康隆の味か。
■小さな暴君★……これは怖い! 単純な癇癪ではなく、ひと呼吸おいて、大人の持つそれぞれへの悪意を観察しているところが。サイコパスと一言で言って片づけることは、この作品ではできない。家族の持つ歪みを、敏感に吸収して歪んでしまう少年の歪みを、歪みをそれでも取り繕おうとしていた大人のうちで「綻び」になってしまった祖父が、暴いてしまう。暴かれた姿はもはや大人の手に負えない、もとは大人が熟成してきたものなのにもかかわらず。実写にするなら「危険な遊び」のころのマコーレー・カルキンくんだね。
■天国からの脱落……本作では「ベルリン天使の詩」だけでなく、「かぐや姫の物語」をも彷彿。
■わずらわしい男……この作家の描く神や天使や聖人はひどく人間的に辟易している。
■病院というところ……この作者で病院といえばもはや「七階」だが、迫り方の角度は結構違う作品。
■驕らぬ心……サキやオスカー・ワイルドの短編にもありそうな、皮肉と温かみの綯い交ぜ。
■クリスマスの物語……他人に不寛容を示した瞬間に、その場にいた神が消えてしまう、という描き方が面白い。あったかい気持ちこそが神なんだよ、と言い出せば神学的に話がずれてしまうかもしれないが、ブッツアーティは厳密な一神教という感じはしないね。
■マジシャン……作家ならではの寓話。
■戦艦《死(トート)》★……「護送大隊襲撃」と同工異曲だが、本のレビューという枠物語がある。とはいえ安穏としたレビューではなく、結論はない。世界へ開かれている。投下された爆弾を、読者が受けざるを得ない作りになっている。(漱石「こころ」の第4部があえて書かれなかったように)
■この世の終わり……忽然と現れるのはモノリスだったり、ばかうけ(小説「あなたの人生の物語」=映画「メッセージ」の)だったりするが、本作では割と凡庸に握りこぶしなんだな、と連想。