ブッツァーティのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
幻想と寓話の短編集。ブッツァーティの長年の短編から主要な作品を集め色々なスタイルが感じ取れるようにしたという。
不安と恐怖を幻想を元に語る。かなり映像的な文章。イタリア文学界では著名。『タタール人の砂漠』が代表作で既読。『七階』は劇として上演され大きな評判を呼び映画化もされたという。画家として漫画やイラストも書たらしい。児童文学も書いていて翻訳されている。
規律の厳しい軍隊の憧れ、大自然の恐怖と何もかも包み込むその厳しさ、不条理と不安と恐怖などが構成要素にある。神・聖者が語られることも多くキリスト教文化圏の影響をかなり感じる。
イタリア幻想文学はなかなかよい。役者はロダーリの翻訳者で訳文はかな -
Posted by ブクログ
イタリア20世紀の短編集。幻想小説。
天地創造からはじまり、ちょっとした不安を徐々に増幅され、ついに飲み込まれてしまう様を病院、科学者、村、神といった要素でもって、最後まで緊張感を持って語りかけてくる。
この短編には現実ではない要素がたくさんある。神様、悪魔、病気の程度で階をわける病院、バカでかい戦艦などなど。でも、なぜだか、不思議なくらいに頭の中にはっきりと情景が浮かぶ。
アインシュタインと悪魔が夜の街灯に照らされながら、2人きりで話す様子(アインシュタインの約束)や、
幻の戦艦を現実の戦艦が倒す様子(戦艦《死》)、
見たことはないのに、なぜか読後もその光景が脳裏に焼きついている。
-
Posted by ブクログ
ネタバレブッツァーティは初めて読むが、非常に良かった。
幻想的、と帯には書いてあったが、どちらかと言えば、昔話の様な雰囲気があり、不思議な気持ちになる。
だが、様々な強迫観念や死への恐怖と生への執着(とまではいかないかも知れない)、そして理不尽さが描かれている。
表題作について。
神を信じない村に現れた、不思議な犬。
彼と狡猾なパン屋の男、隠修士を中心にして、人々の間に疑心暗鬼が広がっていく…
その互いを探りながらの駆け引きの様子がとても良かった。
結局、神を信じず、口からは罵倒の言葉が出るような人々でも、知らぬ内に深層では信じている、みたいな話が面白かった。
どれも面白い話ではあったが、特に7 -
Posted by ブクログ
「天地創造」神と天使が生物をつくりあげる際、人間は不恰好で厄介ごとを生み出すと却下となるが...
生み出しちゃったね。
「アインシュタインとの約束」アインシュタインがある路地で死の天使に会う。今は重要な発明の最中だと1ヶ月、死を延ばしてほしいと願う。三回延ばし、ある発明を完成させた。その発明に死の天使=悪魔は喜ぶ。
あの発明ですね。
「神を見た犬」修道士についてきた犬は、修道士が死んだ後、不信心な人々が住む村に降りてくる。そして村中を歩き回り、人々の行動を見つめるのだった。
お天道様はいつも見ている。
最初は面白かったものそれぞれ、書き記そうと思ったのですが、読み終わったら次を読みたくな -
Posted by ブクログ
短編集で不条理を描いたもの。星新一に系統は似てるけどそれをもっと文学的にしたような。人の持つ社会的心理から返って個人が苦しんでしまう様な様を描いたものが多い。
1. 天地創造。キリスト教ネタがいくつかあって分かりにくいものもあったけど、これはシンプルで、地球にある一切は神によってデザインされたとされるが、こんな裏話があったのではないかという話。作者がいかに人間を醜いと思ってるかが一作品目で分かる構成なのが良い。
2. コロンブレ。親や世間の謂れを真に受けて信じ込んでしまった為に人生を棒に振る寓話。
3. アインシュタインとの約束。偉人に勝手に性格をあてて描くのは何だか気持ち悪かった。
-
Posted by ブクログ
上手くいかないから不幸なのではない、貧しいから不幸なのではない、それだから不幸なのだと思ってしまう考え方が不幸なのだ。ブッツァーティの小説は読者に主人公の人生の最後に立ち会わせそれを問いかける物語だ。一元的な物の見方を否定し物事に違う観点を与える。10代の頃彼の長編「タタール人の砂漠」で頭をガツンとやられた。それと同じ感覚がこの短編集にも詰まっている。謎の怪物コロンブレに殺されまいと逃げ続けた男の話、護送大隊をたった一人で襲撃しようとする年老いた山賊の話。ラストですべての不幸が幸福に代わり、幸福が不幸に入れ替わる。この世界のことはすべて脳内で起きている。他人の視点は何の意味もない。自分の人生が
-
Posted by ブクログ
人間臭い、気軽な神が登場し、日常から非日常へと知らぬ間に誘われ、ときには残酷なオチをつける。
日本の読者なら、少し長い星新一を読んでいる気分になるのでは。
非常な日常観察力(グランドホテルの廊下、小さな暴君)、純粋な想像力の飛翔(呪われた背広)、人生の危うさ(マジシャン)という本を読む楽しさを思い出させてくれる本。すごくいい。
描写も非常に綺麗(神を見た犬、戦艦《死》)。
解説も気がきいている。
「映像的な幻想と現実とが交錯し、両者が入り交じった特有な世界における、はかなさや哀しさにみちた美。そこでは、現身の人間と死せる者とが別れの挨拶を交わし、実在の戦艦が幻の戦艦に攻撃をかけるのだ。」 -
Posted by ブクログ
おもしろい
「竜退治」が特にいい
この話の恐ろしさは竜を殺した人間に与えられる罰(死)ではなく
むしろ罰を受けずに済んでしまうこと
竜の叫びに対して沈黙で返す世界に向けられていると思った
未知の存在を徹底的に狩り尽くしてしまう人間の習性はこの地上の支配者としてふさわしくそしてとても醜い
列車とか行進とか、何かを目指して走り続けている話が多い
しかしそれらはすべて進路を間違えていて、今どこにいるのかさえわからない
このままでは目的地に辿り着かない、でも引き返すことも止まることもできない
そういう不安が強い人だったんだなブッツァーティは
「聖者たち」もよかった。
-
Posted by ブクログ
『タタール人の砂漠』で有名なイタリアの作家であり画家でもあるブッツァーティの短編集。『タタール人の砂漠』と同様、幻想的と評される作風で不条理さや不安感、安定のなさ、不思議、奇跡などを描く。それは現実的ではないがゆえに逆説的にリアリティをともなっている。本人はカフカ的と呼ばれることを嫌がっていたようだけれど、作風的にはカフカのようで、この世の何ともならなさを描くことに卓越している。
映画監督フェリーニとの映画制作も構想されていたようだけれど、実現はしなかったとのこと。フェリーニの作風も夢や幻想に仮託しながら無意識や奇跡などを描くものであり、親和性はあると思われるだけに実現しなかったのが残念。同時 -
Posted by ブクログ
ネタバレ小説というよりは、寓話集。というか昔話集、と言いたい趣きすらある。
というのもマックス・リューティの所謂「昔話3回」の方程式があるからだ。
またカフカに比されるのは作者としても不本意だろうが、しかたない、と「変身」および短編数作しか読んでいない者でも感じざるをえないくらい、カフカチック。
というか同じグラデーションに安部公房も星新一も筒井康隆もいて、その源流を仮に想定するならカフカと言わざる得ないくらい、カフカのすそ野が広いせい、なのだろう。
寓話的な短篇の中にあって、やはり個人的な好みは、比較的長めの小説的な数作だ。
「コロンブレ」「神を見た犬」はまだ寓意強めだが、「七階」「護送大隊襲撃」「