渡辺京二のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
渡辺京二氏が、来し方を振り返り、人生について語った一冊。氏の立ち位置は、従来の「右か左か」という見方では、まことにとらえにくいものだ。それが一番よく表れているのが、5「国家への義理」の章だろう。
著者は、「ナショナリズムからの卒業こそ戦後最大の成果」とし、「この一点はしっかりと保持していかなくてはならない」とする。その上で、人は社会の中でしか生きられない(というより「人」になれない)のであり、家族・友・隣近所・同僚…と、共に生きる人たちが同心円状に広がるその最後に「国民国家」がある以上、「自分はそれとは無関係だ」という態度はとれない、と考えるのだ。
「ですから、土壇場ではその仲間たちと運命を共にする。これが最低限の倫理になってくる」「それが自分の意に染まないことであっても、ぎりぎりの場面においては覚悟を決める。それが国家と向き合う人間としての心の持ち方だと私は考えます」
さらにその上で、「それ以上は必要ないでしょう」というところに、戦争を経験し、「国家」というものに翻弄された人の強い芯があるように思った。集団や国に対して、両義的な気持ちを持つのは当然のこと。二つの思いの兼ね合いをいかにすべきか、それだけがわれわれに与えられた課題であり、それこそが難しいのだと述べられていて、ここは非常に説得力があった。