山本圭のレビュー一覧
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「感情の政治学」などでも射程に入れられることの少ない「嫉妬」という感情は、個人的なものではなく、政治や社会生活と関わっている
良性嫉妬と悪性嫉妬という分類。本書では、嫉妬の定義を曖昧にすることを避けるため、前者を憧憬とし、別物として扱う(37)
ヒュームを引きながら
「ロールズの見立てでは、公正な秩序だった社会において人々はそれほど嫉妬に狂うことはないとされていた。しかし、このような見通しには様々な疑義が呈されている。さらに格差の減少は、嫉妬の減少に必ずしも到るわけではない。」(184)
民主主義・平等の理念が、逆説的に嫉妬を生む
「しばしば差異の縮小が嫉妬の爆発を招くとすれば、現代の嫉妬がより陰険なものであることは疑いえない。」(229)
「嫉妬の完全に禁止された社会は、どんな差異も許さない息苦しい社会となる可能性が高い。平等と差異[、、、]が交差する地点こそが嫉妬の故郷であるとすれば、民主社会はこの感情の存在を受け入れる必要がある」
嫉妬とは「民主主義と同じ土壌から生まれた双子」、「デモクラシーに不可避の情念」(231)
「嫉妬」はアイデンティティを見つめ直す契機になりうる(235) -
Posted by ブクログ
妬み、嫉み、恨み、辛み。
ルサンチマン、他人の不幸は蜜の味…
私たちの社会生活において日々出会う感情だが、合理的・理性的な人間像を基本とする社会科学の主流においては自分を引き上げることよりも他人を引き下げることを望む負の感情は適切に扱うことが難しかった。
とはいえ、文学では主要なテーマの一つでもある嫉妬について、思想家たちはあれこれと論じてきた。本書ではそうした嫉妬論を概説したり、「自慢や誇示」についての思想を追って嫉妬に別の角度から輪郭を与えたりする。基本的に嫉妬は負の感情であり、良い面はほとんどないというのが、多くの思想家たちに共通しているところだが、最後に著者は負の感情であったとしても、嫉妬をなくすことはできないし、完全に無くしてしまえばいいものでもないと言う。嫉妬の源泉は対等性(自分とまったく異なるものに嫉妬はしない)と差異であり、この二つは民主主義の源泉でもあるからだ。民主主義の理念と嫉妬の情念は光と影のようなものとして付き合い方を考えていく必要がある。
社会の中に嫉妬を解消するための仕組みや機会を織り込むマクロレベルの対策も、ミクロレベルで一人一人が対処していく対策も(著者は半端に比較して嫉妬するのではなく、比較から無理に降りるのでもなく、徹底的に比較するのが良いと言う)、どちらもやり続けていくことが重要だという。はてさて。 -
Posted by ブクログ
前半(3章途中まで)はほとんど過去の著名人の著作物から引用し、嫉妬に関して言及を行っている。
後半は現代の SNS 等に関わる嫉妬の話を展開していく。エピローグでは嫉妬にどう向き合うかについて解説しているが、基本的には嫉妬がなぜ発生してしまうのかについて解説している。
平等・公正が進み、比較できるから嫉妬が生まれるという理論は面白い。平等と差異のバランスの上で嫉妬が生まれるということ。ただそれが格差を認めるということになるとは思わないが。
要は言い訳ができる余地を残しておくことで、嫉妬につながりにくくなるはずなのに、現在は過度な自己責任論と SNS による視える化で比較せざるをえなくなり、社会全体の嫉妬が強くなっているのではないかと感じる。
難しいとは思うが、なるべく比較をなくして、自分の個性を強くしていくのが大事だと思う。個性的であることは唯一であると思うので。本書で述べられていた「多様であることで比較の軸を見えにくくする」という視点が面白かったので、これを心にとどめておきたい。 -
Posted by ブクログ
第二次大戦後、ある意味ではイデオロギーではあったが、ファシズム国家に対する民主主義国家の勝利と言われ、世界はいずれ民主主義国家が大勢を占めるだろうと言われてきたが、現代の世界をどう考えるべきなのだろうか。権威主義国家の台頭、民主主義の機能不全が叫ばれる中、元々が多義的である民主主義をどのように考えたら良いのだろうか。
本書は、ウェーバー、シュミット、シュンペーター、アーレント、ダール、ハバーマス、デリダ、ムフなどの思想を紹介しつつ、現代における民主主義について模索した試み。
後半になるほど内容が難しくなってくるが、いろいろ問題はありつつもやはり民主主義が大切だろうと考える者にとって、いろいろなヒントを与えてくれるだろう。 -
Posted by ブクログ
政治学の視点から、20世紀以降の民主主義観の移り変わりがまとめられています。教育学が専攻である私にとっては、少々難解でした。政治学に関する背景知識があると、読みやすいと思います。
また、この本から、民主主義の捉え方が多様であると気づけました。この多様な捉え方は、政治学だけではなく教育学(特に社会科教育学・シティズンシップ教育学)を専攻する人も知っていて損はないと思います。なぜなら、多様な捉え方を活用し、教育実践の内容・方法を分析することで、実践が目指すまたはもたらす社会の在り方まで考察可能になるからです。
例えば、シティズンシップ教育にて行われる、選挙への投票率上昇を目的とした実践について。この実践の結果、投票率が上がることは一見良いように思えます。ですがシュンペーターの民主主義観から捉えた時に、子ども達が「民主主義=選挙」と学んでしまったら、結果的に「競争型エリート主義」の社会に近づく可能性が高いと分かります。
シュンペーター以外にも、多くの20世紀以降の政治学者の民主主義観がまとまっています。彼ら彼女らの多様な民主主義観を習得・活用したい人にとって、この本はおすすめです。