(少し上から目線と思えるようなことも書きます。不快に思われた方がいらっしゃいましたらごめんなさい)
一度教師として失敗してしまった主人公が人外だらけの学校でもう一度教師となり、生徒たちとの交流を通して人間として教師として生徒たちと成長していく物語。
生徒一人一人の抱える問題が丁寧に深堀りされて描
...続きを読むかれており、解決にも納得感があった。それぞれの生徒に対し作家が描きたいことがはっきりしていたのもよかった。加えてその深堀りの手法も安易に過去回想とかに頼らず、その場で主人公が経験することで知っていったところも読み応えがあった。また、それぞれの章には三題が決められていたが、物語に上手く溶け込んでいて違和感がなく作者の力量には舌を巻いた。主人公の人外を受け入れの早さもゲーム好きという要素のおかげで理由付けもなされていて小道具の使い方が上手かった。
ただ最初の方で設定を羅列するような形で並べたり、同僚には趣味がゲームだと言うのを躊躇ったのに生徒には何の躊躇いもなく言ったり、校長のセリフの語尾が大事なところでなくなるところがあったり、最初の自己紹介で主人公が人間が嫌いだと言った直後に人間が好きか聞かれていたりとといった細かな気になる点もあった。もしかしたら後書きで書いていたページ調整のために削った影響なのかもしれないが。
後、これは私の読解不足なのかもしれないが、主人公の成長に関しては上手く感じることができなかった。例えば教職に失敗して人間不信になる描写があるのに再び教職を選んでいるところ(もし再起という意味なら頑張ろうという意気込みの描写や生徒が人間じゃないところへの拍子抜け感が欲しかった)とか、過去に人間不信になっていたにも関わらずその過去が性格に対し影響を与えているように思えないこと(ただの地雷持ちのように感じられてしまった)、自分はコミュ障だと自己評価しているにも関わらずそういう風に思える描写がなかったりといった自己評価と実際の解離とか、生徒の悩みを助けた後で人間のことを見直すような描写がないとか、割と匂わせて引っ張っていた主人公の過去をあっさり自分の言葉で言ってしまうところとか、生徒の成長に重きを置いていたためか主人公に関して深堀りができていなかったように感じた。
それでもとても心地良い読後感で楽しめた。登場人物も魅力的でダレることなく読めた。今回卒業できなかった登場人物たちの続きや卒業生の日々の生活をもっと読みたくなった。最後のどんでん返しも伏線がしっかりと張られていて良い意味で裏切られた。個人的なことを言えばラノベが久々なためか主人公の年齢的にノリがきつい部分があり、年を取ったと実感した。次巻が出てもまた読みたいと思う。