金井利之のレビュー一覧
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直截的というか、身も蓋もない表現で「行政」という複雑怪奇な存在の本質に迫ろうとする好著。以下は特になるほどと思った箇所(引用ではなく要約)
・与党政治家も野党政治家も、党派的選好を持った「一部の奉仕者」にすぎない。政権党に忖度する日本の官僚は著しく政治的中立性を欠いているが、万年与党の価値判断以外が政権・与党政治家によって示されることはないため、そのことが自覚されることはない。 pp.41-42
・国会と内閣が立法した内容を自治体が執行することで、国政では形骸化している立法権と行政権の分立が国・自治体をまたいで成立する。 p.59
・日本国憲法の世界観は、平和的生存権・自由権>民主主義> -
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本書は、先日北大公共のシンポジウムにも来て頂いた金井利之先生の『自治フォーラム』での連載を単行本化したものです。
内容としては、「民主主義体制のなかの非民主主義的主体」である自治体行政と住民との実践的な関わりに焦点を当てたものとなっており、取り上げられるトピックも近年住民が関わることの多い自治基本条例・総合計画・行政改革・行政評価に絞って論じられています。今回は後者の2つに興味を持って読み進めました。
第3章では、「行政改革」がテーマとして取り上げられています。
まず、著者は行革のスタイルを①人件費の削減等を内容とした減量型行政改革、②旧来型の行政システムにメスを入れる行政経営システム改革、 -
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まず、本書のページ数は378ページと、一般の新書の2倍近いボリュームである。
情報量もそれに負けておらず、専門書と同様のレベルと考えて差し支えない。入門書と思い購入して面食らった衝撃は忘れられない。
とかく外から見えにくい「行政」を、行政を受ける側の目線から丁寧に詳述しているため、分量の多さの割には頭の中で具体的にイメージしながら読み進めることができる。
内容は申し分ないのだが、やはり新書の手軽さは捨てがたく、もう少しスリムなものがほしいという願望はどうしてもまとわりつく。
行政の内部事情について、深く腰を据えて学びたいという方におすすめする重厚な一冊だ。 -
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日本の行政を支配、外界、身内、権力の4つの視点から概観。理論的、学術的に語っている部分もあれば、明治以降の行政の歴史、高級官僚の生態、日米関係などリアルなパワーバランスに迫った項目もあり、ボリュームの割に飽きさせない。
特に面白かったのは、①日本の戦後行政をアメリカ『本国』による代行支配として捉えていること。政府には異論もあろうが、ある意味スッキリした理解。②地方公共団体や警察に関する中央と地方の明治以来の関係と歴史。地方は地方自治が基本かと思ったら、明治には町村に限られ県や市には官選知事や市長がおり、郡も国による支配の名残だった。③官僚制の戦前と戦後の異同、特に継続性(軍だけが異なる)、④ -
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人口減少⇒地方消滅⇒地方創生と新聞・マスコミを賑わしている。社会学者と政治行政学者の激論で、国家権力と地方政府、住民の関係性が炙り出されていた。
第1章 「国―自治体ー市民」の構造を問いなおす
1「地方創生」で自治体は困り果てる
2「震災復興」で何が起きているのか
3「地方創生」は地域への侵略である
第2章 いかにして地域政策は失敗するのかー原子力発電所事故から見えるもの
1国と地域はどのようにズレていくのか
2県と地域はどのようにズレていくのか
3市町村と地域はどのようにしてズレていくのか
第3章 地域にとって国家とは何か
1アシメントリー(非対称)としての権力
2国策の構造 -
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自治体内の行政職員などを「民主主義体制のなかの非民主的な主体」ととらえ、市民や市民の付託を受けた首長や議員がどのように非民主的な主体をコントロールするかを論じた本です。
特に自治基本条例・総合計画・行政改革・行政評価を取り上げ、自治体行政学の理論と事例研究により構成されています。
伝統的な政治学・行政学の関心事項である政府の暴走をいかに民主主義が抑止するかという観点があり、いま実践がなされている「新しい公共」などの動きを整理するには至っていませんが、今後「官から民へ」の流れが継続的に拡大すれば、民主主義体制のなかの非民主的な主体は自治体職員ではなく委託先の民間企業やNPOに拡大します。この動き -
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ネタバレよくも悪くもかなり尖った1冊。
政府・行政批判の側面が大きい。
読んでいて「確かにな」と思う点もあるが、それ以上に国批判が軒を連ねている。
読んでいて少々気に障る点もあるが、それは個々人の好みだろう。
個人的に学んだポイントは以下。
・離島や過疎地域のインフラコストだけ取り上げて中央にこい、というのは選択と集中というよりも排除
・学問は政治的になる。資金がないと研究ができないから。そのため国に乗っかる。
・地域の人口増加=正義、は負け土俵。ほとんどの自治体が負ける。
・地域振興のためにプレミアム商品券を配る。例えば5000円で6000円分。その差額の1000円は税金から来ている。要はプレミアム -
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コロナ禍にまつわる現在の現象に、とにかく名前がつけられ、整理・分類がされている。「あるある」感はある。また、構造的にどうしてこうなってしまったのかがわかり、「あぁ・・・」という感じは得られる。
状況に当てはめた納得感はある。ただ、「それでどうすればいい?」というのは、現象を分類して名前をつけても答えが出るものではない。どの対策も、一長一短である。
たとえば、この本では最後に、目指すべき方向性の一つに「包摂」を挙げている。感染者等は徹底的に保護すべきであり店名や行動履歴等を公表すべきでないというが、濃厚接触者を特定し、感染のおそれがあるグループを把握するのは、当事者と第三者両方の安全に有益なこと -
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住民自治の充実のためには、住民も住民代表としての議員も、自治体議会をどのように取り扱うのか、すなわち自治体議会の取扱が問われているという問題意識の下、自治体議会の取扱のために、自治体議会の実態を冷静に見つめ直し、自治体議会の機能強化を目指していくための考察を行っている。自治体議会を巡る論説の主流となっている二元代表制論を批判し、機関としての首長あるいは議会がそれぞれ代表なのではなく、首長・議員・副首長などが寄り合って議論をする≪討議広場(フォーラム)としての議会≫こそが住民代表機関であるとする討議広場代表制論を提示した上で、議会運営、議員提案条例、議会と予算を中心とする政策、議会と議員、議会事
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多少ボリュームはあるが、日本の行政に関する概観を述べており、読みやすい。
特に印象に残った点を述べるとするなら
・民主主義における行政の役割:民衆→政府→行政→民衆…というループがあるということ。そして、身内からの支配によって民衆が納得するのだから、行政が時折反発を受けるのは、このループがうまくいっていないということ。
・省庁共同体によって行政の内部が動いているということ。
の2点である。
またこの本の中で筆者は度々「主権」という言葉に疑問を呈している。それに関しては詳しくは述べられていないが、この本の中で読み取れる範囲では、支配・被支配という強い関係性が現れてしまうからという理由で筆者が -
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地方創生の正体というテーマで、2人の立場の異なる学者が討論の形で進める形態。
東北大震災の国と自治体の動きを見ながら、これからの地方創生の在り方に警鐘を鳴らします。
どのような政策をとろうと財源を国が見ている以上、本当の地方が主導となるような新興策は困難。とはいえ、これをどう打開すべきかは、結論が出ない。ちょっと消化不良な印象でした。
・現在は「選択と集中」路線→この路線は排除を生む
排除は依存から来ている排除であり、国民の国に対する依存が生んでいる
→地方では、外から変なものを持ち込まれたときに抵抗できない体質を作り出している
・国と自治体の関係性(型)は、戦後一貫して変わっていない