村上啓夫のレビュー一覧
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ポアロもの。
この作品は、クリスティーの義兄から「もっと血にまみれた思いきり凶暴な殺人を」というリクエストに応えた、クリスティーからのクリスマスプレゼント(?)です。
クリスマスの夜。親族が一堂に会した富豪の屋敷で、当主のシメオン・リー老人の血みどろの死体が発見されます。室内は家具等が倒壊しすさまじい状態ですが、部屋のドアは中から施錠されていて・・。
この密室殺人の捜査に乗り出すポアロ。犯人は家族の中にいるのでしょうか・・。
謎解きと併せて、クリスティーならではの人物描写が冴えわたり、一族間の人間模様も楽しめます。
そして、本作品中通して“血”が絡んでいるな。という印象を受けました。“血液(血まみれ)”“血縁(家族)”“血筋(血は争えない)”等々・・。
ポアロの真相解説部分も二転三転の展開を見せて、もう食い入るように読みました。
真犯人は、明かされた直後は予想の斜め上を行く感じでしたが、前半から読み返してみると、“あー、確かに!”と納得です。いやぁ、今回もポアロ、お見事でした。
では、事件も解決したところで、メリークリスマス!! -
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クリスマスに慈悲を。
クリスマスに親類一同が集まった家で、老いた当主が血だらけになって発見された。手を下したのは家族なのか。ポアロはこの血みどろの事件をどう読むのか。
解説にもあるが、クリスマスを思わせるアイテムをちりばめた話である。密室に誰かが外からやってくるというのはサンタクロースだし、真っ赤といえばサンタクロースの服である——赤い服を着たサンタクロースはアメリカの産物だけど。クリスマスに家族が集合すれば、善意よりも苦痛や憎しみの爆発が起こるだろうとポアロは語る。そうなればクリスマスは殺人事件にもってこいの季節だ。
いかにも殺人トリックな作品なので、読み終わったときの満足感は十分。指し示された犯人もなるほどと思う。アリバイトリックはそこまでする必要があったのかなと思うが、まあ、もっと血を! という声に応えて書いた作品だと最初にあるので、そのしばりがあったからだと思えば。より洗練された作品を書いてきたクリスティーがあえてこういういかにもな殺人事件を書いたと楽しめる。血に飢えた方はぜひどうぞ。 -
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ネタバレ【再読】
偏屈な老富豪シメオンにより、クリスマスに集められた一族の面々。その夜、シメオンが何者かに惨殺される。部屋には鍵がかかっており、凶器も消えていた。事件の直前にはシメオンのダイヤが盗まれていたことも判明。
シメオンは死の直前に遺言の書き換えを仄めかしており、それが殺人の引き鉄となったと見られる。また屋敷には、シメオンの孫娘ピラール、シメオンの旧友の息子スティーブンも訪れていた。ポアロは、遺言の書き換えによって得をする者・損をする者、惨劇の時間にアリバイのある者・ない者などの観点で推理をすすめていく。
犯人は警視のサグデンだった。サグデンはシメオンの私生児だったのだ。
サグデンが部屋で何かを拾ったピラールの行動をなぜポアロに話さなかったのかという疑問をもった読者は多いと思うが、それこそが真相に繋がるものであるのが面白い。
●見どころ
・遺産をめぐる骨肉の争い
●名言
「わたしは、主人からけしかけられて獲物を狩り出しながら、その獲物がどうも気に入らないからといって、呼びもどされて、帰ってくる犬ではありませんよ!」 -
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【ポアロ】
クリスティの義兄からの、最近の作品が洗練されすぎてきて貧血症的になってきたとの指摘と、「もっと血にまみれた、思いきり兇暴な殺人を」という要望に応えて書かれた作品。
この指摘に「これでどうよ!」みたいな若干キレ気味なのか、いつものクリスティらしくない感じがする。
・血まみれ
・唯一の密室殺人
・トリック(全くクリスティらしくない笑)
義兄の要望に応えつつも、クリスティらしさも出しながら要望以上の作品にしてしまうクリスティはさすが!
犯人当てもかなり凝ってて、これでもかと言わんばかりのてんこ盛り。
モリモリな感じが他の作品とは何となく違う。クリスマスだし、義兄も読者も王道ミステリーで喜ばせようというクリスティのサービス精神を感じた。
最後は連続ドラマの最終回のような感じで、読後感が良かった。
★3.5 -
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ポアロシリーズ17巻目。1939年の作品。
少し順番が飛びますが季節的にこちらにしてみました。
(このシリーズは再読も多いので、なるべく新訳で読もうと思っているのですが、2023年11月に川副智子による新訳版が出ていることにあとから気がつきました。)
章のタイトルが「第一部 十二月二十二日」、「第二部 十二月二十三日」となっている時点でもうワクワク。
クリスマスに一族が集まることでそれまでは隠されていた感情が表面化し、引き起こされる人間模様というクリスティーお得意のストーリー展開。
今回は若くて美しい娘さんより、美人ではないけれど上品で賢くて根性のある奥様方が素敵でした。
そして紳士たちは食堂でポートワイン、婦人たちは客間に移ってコーヒー、というのがいいよね。このわざわざ部屋を移動するという感じ。
残念ながらクリスマスは殺人が起こるのでクリスマスディナーは出てきません。
「あたしが本で読んだイギリスのクリスマスはとても陽気で楽しげなんですもの。焼いた干しブドウを食べたり、すばらしいプラム・プティングをつくったり、それからユール・ロックなんてものもあって……」
今回も犯人はまったくわかりませんでしたが(そもそもわかるように書かれていない)、登場人物たちがそれぞれの葛藤を胸に秘めながら交わす会話というのがもうおもしろくて一気読みしてしまいました。
『クリスマス・プティングの冒険』も読みたいなあ。
以下、引用。
あの年寄りが、あんなにたくさんの血をもっていたと、誰が考えただろう?
──マクベス
52
「もしわたしたちが過去を生かしておこうとすると、その結果はどうしてもそれをゆがめることになると思いますわ。なぜって、わたしたちは誇張した言葉で──まちがった遠近法でそれを見るからですわ」
「あなたは、大人の節度ある眼でそれを回想するかわりに、子供の判断でそれを見ようとなさるからですわ」
90
「ピラール──おぼえているんだよ──献身ほど退屈なものはないってことを」
136
ミドルシャー州の警察本部長のジョンスン大佐は、薪の火を打ち負かすものはないとの意見らしかったが、エルキュール・ポアロはセントラルヒーティングこそそれを打ち負かすものだと、信じていた。
200
エルキュール・ポアロの眼は(彼女の見るところによると)ずっと鑑賞的であったが、それは彼女の美しさに対してだけでなく、その美しさを彼女が効果的に利用していることに対する鑑賞でもあった。
233
「いいえ、くれなかったわ。でも、たぶんいつかはくれるだろう、と思いましたわ──もしあたしが親切にして、たびたびそばにいてあげれば。なぜって、年とった紳士は若い娘が大好きですもの」
343
「失礼しました、奥さん。身だしなみ(ラ・トワレフト)を心得ているイギリス婦人は、じつに少ないですよ。」
345
ポアロはため息をついた。
「あなたはそんな月並みの返事を、わたしになさらなければならないのですか?」
リディアは言った。
「わたくし、月並みな女でございますもの」
393
「世の中は女にはとても無情なものよ。だから、女は──若いうちに自分のためにできることをやっておかなければならないわ。女が年とって醜くなったら、誰も面倒をみてくれるものなんか、ありませんもの」
395
「あたしが本で読んだイギリスのクリスマスはとても陽気で楽しげなんですもの。焼いた干しブドウを食べたり、すばらしいプラム・プティングをつくったり、それからユール・ロックなんてものもあって……」
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せっかくのクリスマスだというのに
ポアロのマンションはヒーターが故障中。
大金持ちの老人から呼び出しを受けたのを幸いに
その屋敷でクリスマス・シーズンを過ごすことにする。
老人は南アフリカのダイヤモンド鉱脈で財をなしたものの
その遺産をめぐって命を狙われているというのだが…。
長年顔も合わせていなかった息子たちが揃い
外国に嫁いだ娘の忘れ形見まであらわれたその夜
ついに老人を悲劇がおそう。
うひゃー。
最後までいってから読み直すと
ここにも!あそこにも!
たくさん伏線が張ってあるじゃないのさ…。
心理的なトリックと物理的なトリックが相まって
いい感じにだまされたかな〜。