神田憲行のレビュー一覧
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「聖の青春」は私のオールタイムベスト3の一冊。
森さんは、村山聖さんの人生の伴走者だった。
「聖の青春」でも、森さんはプロとしては強い方ではないと言及されていたが、村山さんの後も何人もの弟子がいて、糸谷さん始め、高名な棋士も多い。
それが門外漢からすると不思議だったが、いろいろ謎が解けた。
著者の神田さんは、あとがきで将棋をがっつり取材するのは初めてだったと書いているが、素人にもわかりやすく、取材相手に敬意を持って取材されているのが伝わってくる。
おもしろかった。
石本さんが森さん宅にうかがったとき「先生、めっちゃ喋ってるな、と思ってたら、全部ヨウムの金太郎が喋ってたんですよ」が良かった。
棋士って人々は、本当にマレビトだ。
そこに惹かれる。 -
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ネタバレ社会人になってから麻布を知った人の書いた本で、外から麻布がどのように見えるかがわかって面白かった。
麻布出身者の書いた本で麻布についても書いたものを読んだことがあるが、他の中高一貫校との対比がされているものの、各校の持つカラーの一つとして麻布の独自色が示されているだけで、それぞれの突出の程度がわからなかった。
公立校で育った筆者から見て数ある首都圏の一貫校の中で突出した特徴を持っていたからこそ俎に乗った、ということがわかった。
現代の麻布に取材したものだから自分の時代とは違うところもあるだろうが、一番印象的だったのは、麻布の教員が実によく生徒個々人に気をかけているということ。言われてみればそうに違いない。
対照的に、「似たような私立校」が問題行動をとる生徒を退学にするという話が引用されていて、それには衝撃を受けた。それは粛清ではないか?
そして、「麻布卒」でやって行けるだけの教養を授けるという方針に納得する。
その一方、進学成績と人間形成の「二兎を追え」と言われたのは意外であった。進学は「やりたければやれば」と放任されていたように感じていたから。 -
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村山聖の師匠としても知られる森信雄は、棋士として華やかな実績を残した人物ではない。棋戦優勝は新人王戦の1回のみ。順位戦での昇級は一度もなく、竜王戦も最高は5組。しかし、プロになった弟子の多さでは群を抜いている。
弟子の証言を通して「なぜ」を問うのがこの一冊。多くのプロ棋士がまず競技者であることを重視し、見込みのある者しか弟子に取らないのに対して、森は本人が希望すれば基本的に弟子に取るというのは要素として大きいだろう。
そこの「なぜ」に対して、森の「勝負根性」の不足は見出せる。何がなんでも相手を負かせてやろうという勝負師ではなく、他人を真剣に思うことができる。内弟子も経験し、ひどく怒られた経験もある山崎隆之は「それだけ人に怒れるということは、他人に対して熱を込められるということです」と指摘する。
単に「弟子を多く取る」だけでなく、人を思えるからこそ多くの弟子が育つのだろうと感じた。 -
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自由と自立について考えさせられます。とても面白かったです。
書籍のタイトルからして、自分とはまったく接点がなさそうでした。僕は東京の中学・高校の受験事情や学校自体ほとんど知りません。
どうやら中高一貫の私学で、東大への進学率も高い男子校。しかしながら、他の進学校の生徒とはすこし異なる質を持った生徒が多いようだということが読み始めて分かってきました。
進学校なのに部活を推奨、文化祭は多額な予算管理も含めて全て生徒たちが主導し、中身は盛大でもちろん一般開放。運動会では競い合う組ごとのリーダーがそれぞれのカラーに髪の毛を染めて統率をしている。クラスはとにかく汚くてゴミの山に埋もれてることも。はたから見ると学級崩壊ではないか?と疑われるほど。
何よりも生徒一人一人の「個」性が強い。そして彼らはつかみどころの無い雰囲気を醸し出すなかに、つねに緊張感を持って生きている。。。著者は麻布学園の教師、生徒、OBへの取材のなかで、他の進学校の生徒たちとの違いに気付き始める。 -
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ネタバレ東大進学者も多い進学校として知られる「麻布学園」が、いわゆる進学校というだけではないことが分かる。中高一貫の6年を通じて自由と自主自立の人間教育を追及し、生徒と教師が6年のスパンで向き合い、さまざまな個性が認められていることが印象的だった。それは入試の段階から校風に魅力を感じた優秀な生徒が集まり、進学のための学力よりも総合的な知力を引き上げるようなカリキュラムが行われ、学園祭などの生徒の自主的な取り組み、髪や服装、遅刻なども生徒の自主的な考えを尊重しているなかで培われたものだろう。そうした中でも考える力の低下や受験勉強重視の親の考えなど、時代の変化を受けて、それでも受験も人間教育もと二兎を追う姿勢に信念を感じさせられた。
14-199 -
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東京で男子御三家といえば、開成、武蔵、麻布だが、麻布は何かが違っているという気がしていた。よく分からないが、ガリ勉を格好悪いとみなし、都会的で大人っぽく、勉強以外に図抜けた得意分野を持っていて、その代わりに変な人が多いというイメージ。本書のタイトルは、そんな先入観に見事にフィットし、思わず読み始めた。
本書には、著者が今の麻布について2年ほどの取材を通じて知ったこと、感じたことが書かれているが、なるほどと思うことが多いと同時に、教員をはじめとする学校サイドがいかに生徒の成長や指導について心を配っているかということに気付かされた。生徒の自主性を尊重しつつ、すべての生徒のよいところを伸ばそうとするという姿勢に、学力向上だけでない全人格教育のある種の理想像が垣間見えて、やはり麻布は凄いと改めて思った。ちなみに、現役の麻布生を持つ親御さんに話しを聞いたら、本書を既に読んでいて、結構このとおりとのことだった。 -
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この本で麻布は変な学校という位置づけで、読んでみるとたしかにそうかもと思えます。進学校と思われているけれど、大学受験に特化しているわけではない、でも東大合格者数は50年以上トップ10入り。そういう意味で「変」なのだと思います。塾から見た麻布、卒業生が語る麻布、もちろん現役の高校生や教員(養護の先生含む)にも話を聞いていて、全体にバランスのいい構成という印象です。中学受験で始めているのは、そのほうがとっつきやすいからでしょうが、私としては少しマイナス評価。この本は麻布出身者が身近にいる人にお勧めしたいです。その人が通っていた麻布という学校を少しでも知ることで、その人自身を知ることにもつながると思います。
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中学入試のお勉強。名門私立ってどんなところなんだろう。。。公立中学、都立高校出身の私が知らない世界。
それにしても、麻布の校長はいいこと言いますなー。
・麻布の入試は三つの力を求めている
ひとつ目は、しっかりと勉強してきているか。…ふたつ目は多角的な視点をもって物事をとらえることができるか。…三つ目は論理力ですね。
・好奇心を育てる
子どもって先天的にみんな好奇心をもっていると思うんですよ。それが家庭環境のなかで、『これやりなさい、あれやりなさい』と言われている子どもは、自分の疑問をあと回しにする癖がつく。でも、逆に家庭でいろんなことをお父さんと一緒に調べている子どももいる。そういうことだと思うですよね。」
・国語科の目標は教養を身につけること
教養とは物知りという意味ではなく、今自分の身の回りで起きていることに対して、想像力を働かせながら、今の自分には何ができるのかとか、自分はそれをどうたらえるべきなのかとか、知の体系を洞察力と絡めて、人間存在を主体的に掘り下げる力という意味です。
・前提とされているものを疑うところから始めてみる
同僚で帰国子女の女性がいるんですが、彼女から『日本人で優秀とされる人はある制約条件下で最適な道はこれ、という議論が得意なのに、嶋田君はまずその制約条件とか前提をひっくり返そうとするよね』ってい言われて、ほうと思いました。
・氷上校長退任を前に終業式での最後の挨拶
それは具体的に言えば、人はなぜ大学に行こうとするのか。あるいは将来、何を職業として生きようとするのか。あるいはその社会は全ての人が幸せに生きる仕組みとしてこれでいいのか。よくなければ、そのために君自身は何ができるのか。などの問いを生徒諸君に発し、問いを生徒諸君と共有することでした。問いをもたなければ、答えを見つけようとすることもありません。そのようなことを普通世間の人が、「当たり前だ、訊ねるまでもないことだ」と考えていることに疑問を持つこと、その疑問につきあうこと、それが私の教師としての仕事だと腹をくくりました。
諸君、どうかとうとうと流れていて、抗する術がないような流れの中にあっても、しかし諸君自身の内なる小部屋を大切にしてください。諸君自身の内なる小部屋にあって、静かに目をつむる習慣を身につけてください。じっと目をつむり、そしてさらに目をつむる時間に耐えていると、必ずや諸君がとりつく杭がみえてきます。その杭がたとえ遠くにあっても、とりつくために流れに逆らって泳ぎきろうとする勇気が湧いてきます。私は今日限り校長の職を去ることになります。いつの日かまたお会いして、諸君がとりつくことができたそれぞれの杭を見せてもらいたいと思っています。