自分がコミュ障なので、本のタイトルに惹かれ購入しました。
本書は、コミュ障を社会学的に見るという趣旨の本です。
ところが、社会学的に見るとは、どういうことか明言されていなかったので、いまいちしっくりこないまま読み進めることになりました。
それは、あとがきに書いてありました。
社会学的に見るとは、要は斜に構えて社会現象を眺めるということのようです。
内容ですが、本書は、「コミュ障はこういう風にコミュニケーション能力を鍛えなさい」という本ではなく、確かに斜に構えて、「コミュ障の人におきる問題の真相はこういうことなんだよ」という考察がされています。
9章に分けられた各章の冒頭にコミュ障の人が抱えやすい問題と一言回答が書かれています。その意味するところが、まとめられているのですが、社会学的に分析するというアプローチは、明確に「じゃあ、こうすれば良いよ」という具体的なTodoを与えてくれず、メッセージがやや抽象的な感覚を受けました。
その点が、コミュ障の処方箋を求めている人にとっては、ずれを感じるところです。
ただ、それが悪いというわけではなく、コミュ障に対する分析を読みたい人にとっては、面白い本です。
コミュ障が実は感受性が高いあまりに相手の真意を判断しかねて、口が重いというのは、面白い分析だと思いました。
本書では、多くの学者や作家の発言を引用しており、著者の博識さに驚かされますし、勉強になります。
以下に例を挙げます。
・儀礼的無関心:相手のことを重んじてまったく知らなかったフリをする行為
・役割期待:人は役割に沿った演技をしている。それに対する他者の期待。
・エスノセントリズム:自国や自民族の伝統的な慣習や文化を価値あるものとみなし、他国や多民族の文化を低く評価してしまうこと。
本書は、コミュ障という悩みに反発的な対処をするのではなく、斜に構えて、斜め45度の思考で受け流すという方法を教えてくれます。一読の勝ちありです。