小川剛生のレビュー一覧
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兼好にまつわる伝記的事実を見なおし、新たな兼好像を提示している本です。
兼好の名前が広く知られるようになったのは正徹の証言以来のことであり、風巻景次郎による研究もこの証言に依拠しています。しかし著者は、兼好が久我か徳大寺の諸大夫であったという証言には根拠が乏しいとしてこれをしりぞけ、一方で風巻が採らなかった兼好が滝口の侍品であったという証言を重視しています。
つづいて著者は、金沢流北条家の氏寺である称名寺にのこされた史料などを検討し、兼好が武士や公家とどのようにかかわっていたのかを明らかにしています。こうした議論を経て、著者は兼好を「隠遁者」とする従来の解釈をくつがえし、「都市のうちに生活 -
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<目次>
第1章 兼好法師とは誰か
第2章 無位無官の「四郎太郎」~鎌倉の兼好
第3章 出家、土地売買、歌壇デビュー~都の兼好Ⅰ
第4章 内裏を覗く遁世者~都の兼好Ⅱ
第5章 貴顕と交わる右筆~南北朝内乱期の兼好
第6章 破天荒な家集、晩年の妄執~歌壇の兼好
第7章 徒然草と「吉田兼好」
<内容>
『徒然草』と言えば超有名だが、作者は教科書でも表記が揺れている。「吉田兼好」「卜部兼好」「兼好法師」。その謎も解けた。金沢流北条氏に仕え、鎌倉と京都を行き来(鎌倉末期、仕えた北条氏は六波羅探題だったから)。そこで短歌の人々と交わり、南北朝期の歌壇で活躍した「卜部兼好」(遁世して兼好法