【感想・ネタバレ】兼好法師 徒然草に記されなかった真実のレビュー

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実は今興味があって『徒然草』を細々と読んでいるのだが、その作者である兼好法師について知っておこうと思い買った本。
しかし読んでみて仰天した。いつかのニュースか何かで、今の教科書では「吉田兼好」は使わずに「兼好法師」になっている、と見聞きしたのはうっすらと覚えていたんだけど、その理由はこれだったのか。詳細は読んで確認して欲しいけど、もし著者の説が正しいのだとしたら、よくもまあこんなデタラメをやったものだと逆に感心したくなったよ。たぶん500年以上にわたって日本人を騙して続けてきたのだろうから。
正直この件のインパクトが強すぎて、初読直後は中盤の兼好の人となりの記述が霞んでしまった感はあったんだけど、読み返すとこちらも資料に対する分析には説得力があるように思えた。兼好が生きた時代の状況もよく分かったし、知的好奇心を刺激してくれたという意味においても個人的には十分満足できた一冊。
新書はどれもこれくらいのレベルのものを目指して欲しいね。

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2024年03月17日

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ネタバレ

『徒然草』の作者・兼好法師の生涯を、同時代史料から多くの情報を抽き出すことで明らかにしていくという内容の本である。
自分の知識では『徒然草』の作者は「吉田兼好」なのだが、読み始めるや否や(6ページめ!)、自分が知るその出自、経歴が捏造でデタラメであると断ぜられたことに度肝を抜かれた!
捏造した張本人、吉田兼倶(1435〜1511)が五百年にわたって徒然草の読者を欺き続けたことは本当にすごいなと思ったが(悪い意味で)、わずかな史料からそのペテンを暴いていく著者のロジックの詰め方には感心させられた。
個人的に瞠目したのは、「金沢文庫古文書」発見のエピソード。「紙背文書」という史料の形式は知らなかったのだが(VHSに録画されたテレビ番組より、番組間のCMの方が映像史料として貴重みたいなものか)、不要となり典籍の書写に流用された書状が、ある時期には価値がなくて放置されていたからこそ、時代の息吹を現代に伝える貴重な史料になったということに感動するとともに、その紙くずに価値を見出した歴史学者(関靖)に学者のすごさを感じた。

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2020年07月26日

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 「〇〇は捏造だった」とか「通説は間違いだらけ」という類の言説は、たいてい学問的な論証の手続きを踏まえていない場合が多く要注意だが、兼好(吉田兼好、卜部兼好)の出自・経歴に関する通説を全否定し、後世の吉田家による捏造を明らかにする本書に関しては、史料批判の方法に瑕疵はなく、研究史を完全に刷新する画期的な成果である。兼好について、現行の辞書・事典類(日本語・日本文学、歴史学問わず)は必ず六位蔵人・左衛門佐の任官歴を記すが、少なくともこれは今後書き換えなければならないだろう。兼好像の変化に伴い『徒然草』や家集の位置づけも当然変わり、本書ではこれまで誤解されたり、等閑に付されていた問題に新たな解釈を示している。巷間の「シニカルな隠者」像とは異なる、身分流動的な出家者の立場を利用して公武間を遊泳する実務家としての姿が浮かび上がる。

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2018年09月27日

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巷間に流布する「吉田兼好」の出自・経歴を没後捏造されたものとし、同時代資料から丹念に情報を抽出することで、その実像へと迫る一冊。再構築されていく人物像も興味深いが、その背景となる当時の世相が面白い。

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2020年12月04日

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丁寧な論証で兼好法師についてのイメージを改めていただいた。
「新書」のボリュームに上手くまとめられ、読後も充足感が残る。

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2020年02月06日

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兼好法師という人物が、実際にはどんな人だったのか。徒然草や歌集や手紙などから、その実相を現すように書かれています。また、帯にありますように、「吉田兼好」という名前で呼ばれるように何故なったのか。その真実も知ることができて、面白く読ませていただきました。肉親との手紙のやり取りから見えてくる社会的な立場。朝廷の内実を知ることができた訳。そして歌人として名を上げたこと。
今の世に徒然草の作者として伝わる「吉田兼好」という人間は、実在してはいなかった。兼好法師は実在していて、十分に人間的に魅力ある人物像であったこと。徒然草を読むのでしたら、その作者について良く知って読むのと、そうでないのでは全然違う。私たちの知っていることとは全然違うということを。勉強になりました。

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2018年11月15日

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兼好法師なのか吉田兼好なのか、はたまた卜部兼好なのか、中学生のときから、わかったつもりになってスルーしていた問題であって、今頃このようなテーマが研究書になるのかと驚いた。あらためて、わかったつもりになってそのままになっている問題は多くあるのだなと実感した。私にとっては中世の時代じたいがあまり頭に入っていない。思えば勉強もそんなにしてこなかった気がする。この当時のお坊さんのあり方(俗世を離れて仏道修行に励むというお坊さん像だったが、出家した名前は歌集に載るということで出家する人たちの存在)には驚きである。

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2018年02月08日

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 兼好は、なぜ「吉田」ではないのか。
 また、「世捨て人」としてとらえることの思い込み。
 
 どんな古典であっても、まだまだいくらでも新しい研究は可能であることを明示した一冊。
 
 
 
 

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2017年11月23日

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兼好にまつわる伝記的事実を見なおし、新たな兼好像を提示している本です。

兼好の名前が広く知られるようになったのは正徹の証言以来のことであり、風巻景次郎による研究もこの証言に依拠しています。しかし著者は、兼好が久我か徳大寺の諸大夫であったという証言には根拠が乏しいとしてこれをしりぞけ、一方で風巻が採らなかった兼好が滝口の侍品であったという証言を重視しています。

つづいて著者は、金沢流北条家の氏寺である称名寺にのこされた史料などを検討し、兼好が武士や公家とどのようにかかわっていたのかを明らかにしています。こうした議論を経て、著者は兼好を「隠遁者」とする従来の解釈をくつがえし、「都市のうちに生活し、法律や経済とも積極的な係わりを持つ、新しいタイプの人間」としてえがき出そうとしています。

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2020年04月20日

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「徒然草」の作者である兼好法師の出自や経歴を丹念に追った労作。
兼好法師に関する後世の文献には頼らず、同時代の信頼できる史料等から兼好法師の姿を明らかにしていく。

その結果、吉田家を出自としたという通説までも真っ向から否定する。後世になって、吉田家が自らの家系に有名人である兼好を意図的に組み込んだという。
ということは、俗に「吉田兼好」と呼ばれた通称さえも正しくない、ということになる。
兼好法師という超有名人でも、名前さえも正確にわからないんだから、時の流れというのは恐ろしい。

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2019年01月28日

Posted by ブクログ

<目次>
第1章  兼好法師とは誰か
第2章  無位無官の「四郎太郎」~鎌倉の兼好
第3章  出家、土地売買、歌壇デビュー~都の兼好Ⅰ
第4章  内裏を覗く遁世者~都の兼好Ⅱ
第5章  貴顕と交わる右筆~南北朝内乱期の兼好
第6章  破天荒な家集、晩年の妄執~歌壇の兼好
第7章  徒然草と「吉田兼好

<内容>
『徒然草』と言えば超有名だが、作者は教科書でも表記が揺れている。「吉田兼好」「卜部兼好」「兼好法師」。その謎も解けた。金沢流北条氏に仕え、鎌倉と京都を行き来(鎌倉末期、仕えた北条氏は六波羅探題だったから)。そこで短歌の人々と交わり、南北朝期の歌壇で活躍した「卜部兼好」(遁世して兼好法師)が実態のようだ。また唯一神道の吉田兼倶はかなりの食わせ者で、「吉田兼好」は彼のでっち上げらしい。

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2018年02月07日

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