琴坂将広のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ本帯に記載されている通り、古代から現在のAI、ロボティクスに至るまでの経営戦略論の進化を概観した一冊。膨大な引用がなされており、一読するだけでは中々その真意を正確に理解することは難しいが、各理論やパラダイムが何を背景に批判され、更なる発展を遂げて来たのかという一連の歴史が丹念に紐解かれている。
何よりも本書の特徴は、第6章から描かれている4つの新たな研究潮流であろう。外部環境分析 vs 内部環境分析という大きな構図は、既に1990年代に一定の完成を見た訳であるが、それらだけでは扱えない事象に対し2000年代以降様々な理論が提示されてきた。一方で、これら個々の理論は、時に実務家まで届けられつつも、これまでの理論体系の中でどこに位置づけられるのか、その全体像が語られることは多くなかった。また、先に現象の進化があり、どこか後追いする形で理論化がなされていたようにも感じられる(別に問題ではないのだが、批判的に見ると、実務家によって生み出された概念を援用したとも見える)。そこに切り込んだのが本書であり、新たな研究群としてミクロ的基盤 / 組織の多層的境界 / 非市場・制度 / アルゴリズムとロボティクスの4つを挙げる。現在、欧州ビジネススクールで博士課程に在籍している立場からすると、たしかに個々の研究潮流自体はまさに今も議論されているテーマばかりである。おおよそ、このテーマに沿う形で境界が引かれ、研究者がコミュニティを形成し、本書に記載されているような、あるいは以上の緻密な議論の磨き込みを行っている。その中では、決して分かりやすい訳ではない(一言では伝わらない)が、実務家にとっても重要な概念が提示されており、これを広めねばという使命感を感じる。
特に個人的な関心があるのは、ミクロ的基盤、その中でもStrategy-as-Practiceという研究潮流。日本語で書くと「実践としての経営戦略」ということになり、これまでの議論と何が違うのか?と説明が難しいのだが、この理論的な価値を正確に理解/説明するためには本理論の背景にある社会学(ギデンズ、ブルデュー等)を読み解く必要がある。一言で言ってしまうと、彼らが特に目指しているのは、ミクロとマクロの橋渡し。つまり、単に分析レベルを個人のpracticeにまで落としただけではなく、それがマクロのアウトカム(例:戦略方針、組織変革)とどう結びついているのか、更に言えばそのマクロな要因により個人はどのように規定されているのか、という再帰的な関係性を読み解くことを希求している。この両者の断絶は長年社会学の中でも指摘されてきたことであり、そこに解を見出すのは困難であるが、少なくともその困難性に取り組んでいる一流の研究者が存在する。と、近年の理論潮流の中でも未だ解明されていない調査課題はまだまだ残されている。勿論、AI / ロボティクスと経営戦略の結節点に見出されるアジェンダも追求していく必要はあるが、自動化 / 自律化が進んだ先で、再度「経営戦略とは何か?」という問いに先祖返りする気もする。その際に経営戦略の境界が再度議論され、またその地平からその時点で求められている或いは研究者が探求したい問いが見出され、更なるパラダイムシフトが起こるのだと期待する。
特に印象に残った箇所は以下
・重要なのは、これらの基本戦略が相互に排他的であると言う点である。ポーターは「stuck in the middle(どっちつかず)」の危険性を強く警告した。差別化とコスト優位を同時に追求しようとする企業は、どちらの優位性も獲得できず、結果として低収益に陥るという主張である(p.209)
・バーニーの重要な洞察は、戦略的資源市場が完全競争的であれば、企業が資源を取得するコストはその資源が生み出す将来価値とほぼ等しくなってしまい、結果的に超過利潤は得られないという点であった(p.263)
・オリバー・シボニーらは、行動戦略が経営実践を強化するための最も実り多い道筋は、個々の心の中のバイアスを「取り除く(Debias)」ことから、企業レベルで行動科学的に情報に基づいた意思決定プロセスとアーキテクチャを設計することへと焦点を移すことであると説得力をもって主張している(p.353)
・リレーショナル・レントとは、「交換関係において共同で生み出される、どちらの企業も単独では生み出すことができず、提携パートナーとの共同かつ特異な貢献を通じてのみ創造できる超過収益」と定義される(p.390)
・重要なのは、制度には公式制度(法律、規制、規則)と非公式制度(規範、文化、倫理)があり、両者が相互補完的に機能することである(p.454)
・バロンの「統合戦略」以降、非市場・制度戦略の理論は多様な方向へと発展を遂げ、実践的な戦略論として体系化されてきた(中略)この理論の核心は、企業が成功するためには、正当性の獲得と競争優位の確立という2つの相反する要求を同時に満たさなければならないという点にある(p.476)
・生成AIはまた、技術開発における「創発性」という新たな次元をもたらした。大規模言語モデルは、訓練データに明示的に含まれていない能力を獲得することがあり、これは研究者たちにとっても予想外の発見となっている(p.521)
・未来の戦略理論において最も重要な課題の1つは、人間、アルゴリズム、ロボットの3者が融合した戦略実行モデルの構築である(中略)従来、組織論と戦略論は比較的独立して発展してきた。しかし、3者を統合的に検討しようとすれば、両者の統合は不可欠である(p.556〜557)
・アルゴリズムとロボティクスによる新時代は、経営戦略研究にとって未曾有の挑戦であると同時に、理論が実践を先導し、実践が理論を深化させる好循環を生み出す稀有な機会でもある。この知的冒険への参加は、困難を伴うが、同時に経営学の新たな地平を切り拓く興奮に満ちた営みとなるだろう。私たちは今、経営戦略理論の新たな章の扉を開こうとしていると、私は考えている(p.562) -
Posted by ブクログ
▪️スタートアップでの重要指標「ユニットエコノミクス」=LTV顧客一人当たりの生涯収益−CAC顧客獲得コスト>0
赤字先行でも、一定期間後に黒字化する仕組みが必要。
《ココン》
▪️おそらく売れるだろう✖️。ユーザー視点で事業として成り立つか考える
《コーチユナイテッド》
▪️シャンプーマーケティングにおいて消費者インサイトの重要性を学んだ。
《メルカリ》
▪️ミッションバリューを浸透させるための「明るい宗教」→どうしても口に出すように。
褒める時にも「その取組み、〇〇(バリュー)でいいね」褒めるのが個人+企業
《ミラティブ》
▪️エモい(感情が動かされる)デーを作り、経営者の考えの共有を行う→心理的安全性を双方向で確保することが目的。
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Posted by ブクログ
ネタバレスタートアップの教科書的な一冊。
自分の中にある呪縛をといてくれた、感謝の念を抱いた一札。
メモ
・起業の出発点
自分軸とマーケット社会軸
・アイデアの見つけ方。
事例起点、課題起点、構造変化起点
・構造変化要因PEST LE
legal法律規制動向
environmental自然環境動向
・原体験がなければ起業できないわけではない。
原体験があるほうが自分ごとで考えられるが、こだわりすぎると範囲が狭くなってしまうデメリットもある。原体験がレアすぎるとビジネスとして成立しない可能性も。
・半年間徹底的に情報を追いかければ、原体験がなくてもその分野で働く人と渡り合える知識を蓄えることは可能。
・アイデア評価基準 code republic
誰の何の課題を解決しているか
スケールできるのか
既存のサービスに変わる新しいサービスか
ビジネスとして成立するか
数年後により多くの人に使われるものか
・市場選定の罠
対価不発 本気で金を払う人いない
細分化不足 全体は大きいが解決対象は小さい
・スケールできるか。
大きな市場選定のみならず、どれだけの規模まで成長可能か、事業特性を見極めて慎重に評価必要。
・プレスリリースのスケジュールを先につくり、そこにプロダクト開発をあわせていく
・ターゲットを絞り込めていればオフラインの施策も有効に働きうる。うまく競争をさけて顧客獲得を行おう。
・ユーザー獲得のための5つの問い
機能改善 ユーザーの求める根源価値を提供できているか
機能拡充 リーチを増やせるユーザーペインはないか
ターゲットを絞る ターゲットを明確化、絞り込みできているか
NonPaid活用 ありとあらゆるPR機会を活用できているか
独自手法の開発 誰も実践していない集客方法を探し続けているか
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Posted by ブクログ
ネタバレ経営戦略の実務と理論の架け橋となることを目指した挑戦的な本。
理論編においては網羅的に振り返られていることから、思考や各種議論の体系的な整理となり非常によい。
メモ
・技術による直接影響の大きなものは次の二つ
効率性の向上。不確実性の低減。
⭐️技術による間接影響の大きなものは競争優位の源泉となりうる資源能力知識の変化。特定の資源能力知識の優位を低減させる一方、技術の活用を前提とする資源能力知識の価値が高まる。
・技術が進化することはvrioの前提条件が変化するということ
・経営戦略の未来に訪れる三つの変化の可能性
経営における人の関与があらゆる階層で小さくなる
個品開発個品製造個品販売が普及する
直接の取引相手が必ずしも人間ではなくなる
・外部環境分析を中核としたポジションの議論と内部環境分析を中心としたパースペクティブの議論、そして、外部でも内部とも関連付け困難な戦略行動を取り扱うプロイの三概念がある。プロイはゲーム理論やヒューリスティックのような話。
・昔は小規模企業間取引であったが、独占による超過利潤を求めることが可能になると大企業が存在し、そこで軍事や国家運営ノウハウなどが活かされていくようになっていった。その後経営を測定し改善する科学的プロセスが反映されるように。しばらく管理する側とされる側という思想であったが、労働側も当然人間として意思があり、経営者は目標やビジョンによりこれを統合して方向付けしていけことが必要であるという整理がなされ出した。
・アンゾフによると多角化は4つの種類
水平型 近い事業領域に別の製品群。吉野家がはなまるうどん。
垂直型 自社の調達先、販売先に進出。ユニクロのSPA開始、ドトールコーヒー栽培など
集中型 自社製品と近い製品群への多角化。ダイソンがモーター基軸にヘアドライヤー
集成型 中核事業の競争力を背景に一見無関係に見える事業に参入。イオンがメディカルモールへ。楽天が旅行や書籍を取り扱うなど
・BCGマトリックスは製品イノベーションが限定的で大量生産が生まれる標準品が産業の中心であった時代を前提に設計されている。縦軸には競争の概念が抜け落ちており、横軸には標準品の前提がある。
・ファイブフォースは経済全体の成長が停滞する中、事業ポートフォリオ組換えでなく、産業を精緻に分析して理解する必要性が高まる中、産業構造理解に基づき、自社打ち手を戦略的に検討する必要がある中生まれたもの。
・ファイブフォース分析、ほんとうはそれぞれの市場参加者の具体的な行動を左右する要因を可能な限り定量的に捉えたものである必要がある。よくある間違い
産業の定義が広すぎるか狭すぎる。
要因だけが単純列挙されており厳格分析されてない
全ての要因を平等に扱い、重要要因を深掘りでにてない。
結果と原因の混同
単年数値のみ用いて業界変化トレンドを無視している
一時的あるいは周期的な変化と真に構造的な変化を混同している
戦略的決定のためでなく、業界魅力度を判断しようとしている。
・roaの差異要因、産業効果は2割しか説明できてない可能性。
・競争が激しくなるとともに産業構造からの議論でなく、内部資源に立脚した分析が求められた。
・コアコンピタンスとは広範かつ多様な市場への参入可能性をもたらすもの。最終製品が顧客に提供する価値を向上させるものであり、他社には模倣が困難な技術やスキル、その融合体を示す。
・特に評価される可能性が高い資源は無形資源。有形資源は市場交換しやすいため競合も入手しやすく、産業構造変化や技術革新で価値を失いやすいと考えられる。異質性がたかく固着しやすい資源は企業が持つ無形の独自性に価値を見出すことになる。
・欧米経営戦略教科書での定石
外部環境理解 PESTEL 5F シナリオ分析
内部環境理解 資源ベース理論、知識ベース理論、ダイナミックケイパビリティ
競争優位源泉決める 差別化、コスト優位、イノベーション 競合関係がカギ
・スタートアップで用いられるKPIの例
顧客関連指標 顧客獲得コスト、顧客定着率、顧客生涯価値、SNS拡散率
UIUX関連指標 タスク成功率、タスク所要時間、検索ナビゲーション比率、エラー発生率
財務関連指標 LTV/CAC比率、CAC回収期間、バーンレート、ランウェイ
外形情報 アクティブユーザー数、ページビュー、流通・決済総額
・規模の大きい組織や変化のスピードの早い環境の企業ほどKPIも短期でその意義を失い、単なる数値報告に成り下がる傾向あり。
・リーンスタートアップの要点
事業モデルに紐づく仮定や前提条件を構造化して理解すること
創業初期は仮定や前提条件の検証へ注力すること
検証に対し顧客を巻き込み、市場でそれを行うこと
・新興企業、段階的に全社戦略が事業戦略から独立する。成長の過程で新興企業はその特性を失い、成熟企業へと変化する。成熟後も創造性を失わない企業が組織の永続性に近づいていく。
・国際展開におけるジレンマは統合と適合。単一にすると複雑性低下して運営コスト下がる一方現地の特殊事情に対応できない。
・地理的な距離に関係するコスト、現地環境に不案内であるためのコスト、現地の環境特性により生じるコスト、母国の環境特性により生じるコスト。
・三つの要素が他国市場参入を左右する
所有の優位、立地の優位、内部化の優位
・国外市場で得られる付加価値
販売量増加、コスト削減、差別化、産業魅力度、リスク平準化、知識資源能力獲得
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Posted by ブクログ
ネタバレ「経営学とは、実学と社会科学(理論)という2つの側面を持つ学問であるが、この間には大きな断絶がある。」
これは従来の経営学における議論でも度々指摘されてきた事実であるが、この断絶を埋める方法について言及した書物は多くなかった。本書の目的は、この両者の橋渡しをすることであり、実務家、研究者の両者にとって示唆に富むものである。
本書の内容は、そもそも「経営学とは何か」という問いから始まり、理論としての経営学の変遷、実学としての経営学の変化、そして最後に未来の経営がどのように変化するのか、著者による主張がなされている。
個人的に本書の価値であると考えるのは、理論変遷、実学の関心の変化などを読み解く際に、それがなぜ変化したのか、当時の社会変化をもとにその変遷のプロセスまで言及されていることである。
個々のフレームワーク、理論に関して詳述している書物は多いものの、それらがどのように結びついているのかという部分まで踏み込んでいるものは少ない。この点においても、本書は何度も読み返したくなる一冊であると言える。
両者の議論をカバーするため、本書は約500ページに渡る。
やや長いという印象を受けるかもしれないが、明快な語り口で議論をされているため、冗長であるとは感じない。
特にビジネスパーソン、研究を志す学生などにとって、両者の考え方、関心、議論の変遷を理解し、自身の立場から経営に携わる際の思考の軸となるだろう。