経営戦略の実務と理論の架け橋となることを目指した挑戦的な本。
理論編においては網羅的に振り返られていることから、思考や各種議論の体系的な整理となり非常によい。
メモ
・技術による直接影響の大きなものは次の二つ
効率性の向上。不確実性の低減。
⭐️技術による間接影響の大きなものは競争優位の源泉となり
...続きを読むうる資源能力知識の変化。特定の資源能力知識の優位を低減させる一方、技術の活用を前提とする資源能力知識の価値が高まる。
・技術が進化することはvrioの前提条件が変化するということ
・経営戦略の未来に訪れる三つの変化の可能性
経営における人の関与があらゆる階層で小さくなる
個品開発個品製造個品販売が普及する
直接の取引相手が必ずしも人間ではなくなる
・外部環境分析を中核としたポジションの議論と内部環境分析を中心としたパースペクティブの議論、そして、外部でも内部とも関連付け困難な戦略行動を取り扱うプロイの三概念がある。プロイはゲーム理論やヒューリスティックのような話。
・昔は小規模企業間取引であったが、独占による超過利潤を求めることが可能になると大企業が存在し、そこで軍事や国家運営ノウハウなどが活かされていくようになっていった。その後経営を測定し改善する科学的プロセスが反映されるように。しばらく管理する側とされる側という思想であったが、労働側も当然人間として意思があり、経営者は目標やビジョンによりこれを統合して方向付けしていけことが必要であるという整理がなされ出した。
・アンゾフによると多角化は4つの種類
水平型 近い事業領域に別の製品群。吉野家がはなまるうどん。
垂直型 自社の調達先、販売先に進出。ユニクロのSPA開始、ドトールコーヒー栽培など
集中型 自社製品と近い製品群への多角化。ダイソンがモーター基軸にヘアドライヤー
集成型 中核事業の競争力を背景に一見無関係に見える事業に参入。イオンがメディカルモールへ。楽天が旅行や書籍を取り扱うなど
・BCGマトリックスは製品イノベーションが限定的で大量生産が生まれる標準品が産業の中心であった時代を前提に設計されている。縦軸には競争の概念が抜け落ちており、横軸には標準品の前提がある。
・ファイブフォースは経済全体の成長が停滞する中、事業ポートフォリオ組換えでなく、産業を精緻に分析して理解する必要性が高まる中、産業構造理解に基づき、自社打ち手を戦略的に検討する必要がある中生まれたもの。
・ファイブフォース分析、ほんとうはそれぞれの市場参加者の具体的な行動を左右する要因を可能な限り定量的に捉えたものである必要がある。よくある間違い
産業の定義が広すぎるか狭すぎる。
要因だけが単純列挙されており厳格分析されてない
全ての要因を平等に扱い、重要要因を深掘りでにてない。
結果と原因の混同
単年数値のみ用いて業界変化トレンドを無視している
一時的あるいは周期的な変化と真に構造的な変化を混同している
戦略的決定のためでなく、業界魅力度を判断しようとしている。
・roaの差異要因、産業効果は2割しか説明できてない可能性。
・競争が激しくなるとともに産業構造からの議論でなく、内部資源に立脚した分析が求められた。
・コアコンピタンスとは広範かつ多様な市場への参入可能性をもたらすもの。最終製品が顧客に提供する価値を向上させるものであり、他社には模倣が困難な技術やスキル、その融合体を示す。
・特に評価される可能性が高い資源は無形資源。有形資源は市場交換しやすいため競合も入手しやすく、産業構造変化や技術革新で価値を失いやすいと考えられる。異質性がたかく固着しやすい資源は企業が持つ無形の独自性に価値を見出すことになる。
・欧米経営戦略教科書での定石
外部環境理解 PESTEL 5F シナリオ分析
内部環境理解 資源ベース理論、知識ベース理論、ダイナミックケイパビリティ
競争優位源泉決める 差別化、コスト優位、イノベーション 競合関係がカギ
・スタートアップで用いられるKPIの例
顧客関連指標 顧客獲得コスト、顧客定着率、顧客生涯価値、SNS拡散率
UIUX関連指標 タスク成功率、タスク所要時間、検索ナビゲーション比率、エラー発生率
財務関連指標 LTV/CAC比率、CAC回収期間、バーンレート、ランウェイ
外形情報 アクティブユーザー数、ページビュー、流通・決済総額
・規模の大きい組織や変化のスピードの早い環境の企業ほどKPIも短期でその意義を失い、単なる数値報告に成り下がる傾向あり。
・リーンスタートアップの要点
事業モデルに紐づく仮定や前提条件を構造化して理解すること
創業初期は仮定や前提条件の検証へ注力すること
検証に対し顧客を巻き込み、市場でそれを行うこと
・新興企業、段階的に全社戦略が事業戦略から独立する。成長の過程で新興企業はその特性を失い、成熟企業へと変化する。成熟後も創造性を失わない企業が組織の永続性に近づいていく。
・国際展開におけるジレンマは統合と適合。単一にすると複雑性低下して運営コスト下がる一方現地の特殊事情に対応できない。
・地理的な距離に関係するコスト、現地環境に不案内であるためのコスト、現地の環境特性により生じるコスト、母国の環境特性により生じるコスト。
・三つの要素が他国市場参入を左右する
所有の優位、立地の優位、内部化の優位
・国外市場で得られる付加価値
販売量増加、コスト削減、差別化、産業魅力度、リスク平準化、知識資源能力獲得
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