五味川純平のレビュー一覧
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前巻の終盤、ソ連軍との激しい戦闘が勃発し、激闘の末に多大な犠牲を払った。梶はかろうじて生き残ったが、生き残ったあと、いかにして帰還するのかを下巻では描かれる。これまでとは対照的に、個人の意志によって一つ一つの選択をとり、選んだ末にどのような運命をたどるのかが今回の見どころである。梶は妻の三千子が生きていると信じることで、たとえ周囲からひどい仕打ちを受けたとしても踏ん張った。このように、愛する者の生死が不明であったとしても、生きてると信じることで、必死に生き抜こうとする様子は、なにか輝かしいものが感じられる。
しかし、本作を最後まで読むと、予想よりも不安な空気が漂う。梶は最終的に、本作の上巻、梶と三千子が共に過ごした住処の近辺まで到着した。しかし、その時点で、梶はまともに飲み食いせずに動き続けたことで、息絶える寸前であった。また、梶は村の住民に食物をあてにしたが、リンチにあった。最後は生死不明のまま、雪に埋もれて物語は終了した。
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前巻の終盤、主人公梶が憲兵隊との衝突が原因で、召集令状が届いて終了した。中巻では、梶が軍隊に所属して、その後、戦場に赴いて本格的に戦闘するまでが大きな流れである。
前巻に続いて、組織としての軍隊の存在が記述されている。そこでは、組織間での上下関係の厳しさ、また異性に対する異常な執着、妄想など、良くも悪くも人間の内面が垣間見える。そこでの暮らしはただ理不尽で、合理的な判断が通用しない。そのような状況下で、梶は初めは特に変わった様子はなかったものの、物語が後半に進むにつれて、軍隊の論理に飲み込まれていき、かつての上司のように、威圧的な雰囲気に至るのは印象的である。
自分はまともだと思ってたつもりが、いつのまにか組織の価値観に染まっていき、組織の論理で物事を判断する様子は傍から見て恐ろしい。人間が集団に所属すると、一人でいるときよりも理性が正常に働かないことは、この物語に限らず、現代の日本の組織に当てはまるのではないだろうか。 -
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ネタバレ日本企業および軍隊の原理が読み取れる小説。大日本帝国において、日本軍ほど絶大な権力、影響力を持った組織はなかった。そのような時代、満州の会社に勤める主人公の梶は、ある日、上司から採鉱現場へ行くようにと命令された。それを受けて、梶は妻の美千子とともに、採鉱現場に近い山場のほうへと引っ越す。そこでの現場の衝突や特殊工人の労働搾取など、現代の日本企業に通ずる記述が見られる。第2部の最後、梶が憲兵隊との衝突の末、召集令状が下るまでが今回のおおまかな流れである。
本作は主人公梶の心情、葛藤が特に注目すべきである。本のタイトルにあるように、人間が人間として、どうあるべきかという葛藤が何ともリアリティがある。日中戦争で泥沼化した時代、次々と召集が下った。そのような状況下で、日本の企業、組織の闇の面が見え透けるのが本作の特徴である。
本作の中盤から終盤にかけて、憲兵の特殊工人に対する凄惨な仕打ちに、梶は周囲構わず反抗した。特殊工人たちを人間扱いしないことに憤った梶は憲兵隊という巨大権力に立ち向かったが、正常な論理が通じない時代、そのような行動は国賊と見なされる。憲兵からの拷問を受け、やがて解放されるが、それが結果的に召集を招くこととなってしまった。このように、人道的に正しい行動を取ったとしても、それが巨大権力を相手にしてしまうと、その後痛い目にあうという事例がここから読み取れる。国家が本質的に暴力をはらんでいるということがよくわかる。国家とは、個人を簡単に抑圧できる恐ろしい存在である。 -
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ソ軍との激戦、それを免れ逃げる梶たち。梶の恐ろしいまでの殺人技術が彼ら敗残兵の命を救う。ただあちこちで会う関東軍の敗残兵や民間人。彼らが面した苦労はハンパなものではない、男も女も。田代や寺田など初年兵との絡みが相変わらず面白い。そして梶、まさかああゆう最期を遂げるとは…。
途中まで赤軍やチャイナ万歳な小説なのかと思っていたら結局は戦争に正義もなにもない、勝者と敗者があるだけなのかと思わせる展開になっていた。そして梶の背筋が底冷えする強さが凄い。ああなりたいもんだ。
付録の回想的略歴を読むとこの物語の基底にはやはり実体験があるよう。学校で読まされた語り継ぐべき戦争の物語は原爆や空襲で、日本軍も酷い事をしたって話だったけど、この小説こそもっと広く読み継がれていくべきだろう。 -
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過酷な軍隊生活、その中で自分の信念と弱さの間で葛藤する梶。ソ満国境に配備されて、新城の脱走や吉田のあっけない病死、小原の自殺(事故死)。そして病気に倒れて、徳永看護婦や当番に配された中尉一家との絡み。そして再度のソ満国境への配備、そこで再会する景山、梶が教育に当たった新兵。いよいよ日ソ開戦となってから関東軍の大混乱と体たらくぶり、軍の理不尽との対決。そしてソ軍が陣地へ前進してくるところで中巻は終わります。
それにしても人物の心情描写とかは相変わらず素晴らしい。寺田や田代、鳴戸なんて新兵たちもおもしろい。
結局戦争なんていかに賛美しようとしたってこんなもんでしょう。 -
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軍需産業で働く梶、徴兵免除を条件にチャイナの東北部の鉱山の労務部で働くことに。美千子との新婚生活と戦時下での鉱山での仕事をしていくなかで非軍事捕虜が預けられることに。この特殊工人と呼ばれた捕虜たちにヒューマニズムをもって接していこうとするが、現実に何かができるわけでもないのに最後まで”人”であろうとする矛盾・葛藤に面する梶。結局逃亡のかどで見せしめとして処刑されることになった特殊工人を救おうとして憲兵に捕らえられ拷問にかけられることに。そして出所した梶を待っていたのは免除されたはずの召集令状だった。
著者が実際に大連で生まれ育ち、1943年に召集されてソ満国境を転戦、捕虜となっており、おそらくこの著書も実体験に基づくところが大きいんかな。
戦時下とゆう特殊条件の下で権力がどう作用するのかとか、それに人はどの程度抗えるのか、極限の状態に追い込まれた捕虜の精神がどうなっていくのかとか、戦争に巻き込まれる一般人の悲劇、それから性の描写も生々しくていろいろ考えさせられること大であった。 -
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上中下巻の上をやっと読み終わりました。まだ先は長い。戦時中の話なので当然ですし作者自身もそう書かれていますが、昭和の雰囲気が濃厚。コンプライアンスや⚪︎⚪︎ハラなど皆無の時代。
主人公の梶は、満州の鉱山に事務職として勤務。反戦の気持ちを持ち、日本はやがて負けると思いながら、その思想ゆえに、周囲や上司との諍いが発生することも。
そんな中、職場で付き合っていた彼女と結婚し、鉱山への赴任と引き換えに兵役免除も手に入れ、幸せな結婚生活が開始。
と思いきや、妬みや軍国主義など様々な事件・陰謀に巻き込まれ、兵隊に取られてしまう。ここまでが上巻です。