釘原直樹のレビュー一覧
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インドネシア・ガルーダ航空離陸失敗事件は聞いたことがあったが、集団の心理をよく表している好事例として改めて学ぶことができた。集団が残酷になり個人ではしないような決断をしてしまうことはよく分かっているものの、理論としてまとまっている本を読むことは初めてだった。ベストセラーのサピエンス全史には、人間が繁栄した理由に大規模な集団として行動できる特異性が挙げられていたが、人間という種が持つ特殊な集団での意思決定という行為に改めて注目してみると、今の官僚機構や政治がある程度機能していることはすごいことだと思う。数百単位で行動する生物とすれば、蟻や昆虫、ヌーや魚など?が挙げられるように思うが、意思決定の高度さで言えば、そんなに人間も大きく変わらないようにすら思った。とは言え、最近のJAL火災脱出事故などの集団の高度な行動劇を見ると、人間の可能性を感じさせてくれる。
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Posted by ブクログ
本書は、身につまされる本である。手抜きを無くすことにとどまらず、個人として、集団としてどうすれば生産性を向上できるかを解説している。
集団にとって手抜きが厄介なのは、それが周囲に感染っていくという特性を持つからだ。
手抜きとはなんであり、どうして起こり、どうやったら防げるのか?
本書では、その原因やメカニズムについて、数多くの実験や研究をもとに究明していく。
気になったことは以下です。
・ある会社では、会議が1日に占める割合は3割にも達している。非効率な会議の背景には、「社会的手抜き」のメカニズムが働いている
・集団のサイズが大きくなればなるほど、一人あたりの手抜きの量は大きくなる。集団の人数に比例してアウトプットが増大していくのではなく、手抜きのためにあるところでアウトプットは頭打ちになる
・サイバー手抜き。それは、メールやインターネットを仕事以外に使用することである。
・ブレスト、「3人よれば文殊の知恵」と思われていて、会議や話し合いの場が設けられ、合議で物事が決定される。
・ブレストの原則は4つ ①自由奔放 ②批判や評価をしない ③質より量 ④結合改善
・ブレストのよさは、5つ
① 自由な発想の妨げになっていたさまざまな規制を批判禁止のルールでとりのぞく
② それぞれ専門的な立場から参加していた成員が共通する目的をもった同じレベルの立場で参加できる
③ 会議にゲーム感覚で参加でき、成員間での絆が強くなる
④ 他人とのアイデアの結合、修正を促すことで発想の展開ができる
⑤ ルールが簡単で技術的に難しくない
・しかしながら、個人が事前考えた成果を集めた方がより優れていることが実証されている ⇒ ブレストの生産性はよくないといっている
① 集団作業を行うので、動機づけは低下する
② 調整困難 実行可能な案が優先されてしまい独創的な案は不当に評価されない
・ブレストの修正技法
① ブレーン・ライティング 6人のメンバーが3つづつ5分以内でアイデアシートに書き留め、隣に回す
② リバース・ブレスト 問題解決指向ではなく、問題解決を困難にする要因について考える
③ KJ法 カード作り⇒カードを眺める⇒カードの分類⇒カードを島にまとめて、島に名前を付ける⇒島をまとめて、再配置する⇒結果を発表⇒結果をもとに論議
④ 逐次合流テクニック 最初は2人で議論、結果をまとめる⇒新しいメンバーを入れて、改めて議論、納得したら結果をまとめる⇒さらに1名をあらたに加えて議論、納得したら結果をまとめる⇒これを繰り返していく
・リンゲルマン効果 個人のインプットの加算よりも、集団のアウトプットが小さくなること
① 動機付けの低下
② 調整の難しさ が生産性低下の原因
・社会的手抜き発生の要因
<外的要件>
① 評価可能性 個人の成績がわからなく、評価されない
② 努力の不要性 他者が優秀であったり、作業している人数が多いので、自分が努力してもムダ
③ 手抜きの同調 他の人が手抜きしているので、自分が努力しても、正直ものが馬鹿を見る
<内的要件>
④ 他者存在による緊張感の低下 緊張感が低下するため、パフォーマンスが低下する
⑤ 注意の拡散 他者と一緒に作業をしていると自分に注意が向かなくなり、自己意識が低下、目標も意識しなくなるため、生産性が低下する
・中国人ペア:面子が潰されたと感じた場合は、やる気をなくしてしまう、相方の能力が低い場合は手抜きはしない、高い場合は手抜きしやすい傾向がある
・日本人ペア:パーフォーマンスが相手より低下していくような状況では、相手についていこうと努力する
・男性の方が、女性より手抜きしやすい
・同性同士のペアより、異性のペアのほうが、手抜きが発生しやすい
・自分以外がチェックしているなら大丈夫 ⇒ ダブルチェックが安全性を高めることにならないケースがある
・ルーチンスの水がめ問題 訓練すればするほど、いざというときに行動の柔軟性が失われ、訓練で想定した事態以外にうまく対応がとれなくなるというパラドクス
・会議や、講義のいねむり:その場にいることにより義務が果たされたという解釈
・プロスペクト理論 得しなくてもいいから損だけはしたくない
・腐ったリンゴに罰を与えるよりも、腐っていないリンゴを活性化するほうが効果がある
・共行動:他者と同じ作業をしているが他者との共同作業ではなく、かつ個人の成績が明確になる状態
・リスキーシフト:集団で話し合いをすると、一人で決断するときより、「報酬は高いが危険も高い行動」を選択しやすくなる現象
・共有情報バイアス:成員が個々に異なった固有の情報を所持しているにもかかわらず、個別の要件には深く議論されず、共通しているもっている限られた情報についてのみ議論され、全体の情報が十分に吟味されないため、極端な方向に向かうこと
・社会的補償:課題の重要性が高い場合、他者の能力が劣っているときにパフォーマンスが上昇すること。社会的補償が発生するのは
① 課題の重要性が高く、かつ、同僚の能力が低い
② 一緒に仕事をしている相方から当分逃れられない
③ 仕事を始めた初期に現れやすい 仏の顔も三度まで
④ 集団のサイズが小さい
・ケーラー効果:能力が低い人の動機づけの向上 山登りや、護送船団のように、集団の成果が能力の低い人のパフォーマンスによって左右されるとき、劣った人が頑張る現象。箱根駅伝で、ふらふらになりながらも、たすきをつなごうとする行為
・ケーラー効果は、能力差がありすぎても、ほとんどなくても効果は発揮されない。
・ケーラー効果は、女子の場合は、あまり重要でない場合でも発動するが、男子の場合は、重要な場合でないと発動しにくい。
・上方比較:自分のパフォーマンスが他者や集団の標準より低い場合、他者のパフォーマンスに近づくよう努力する行為
・社会的不可欠認知:自分の低能力のために、集団全体のパフォーマンスを下げているとき、それを避けるために、努力する行為
・人は上に追いつこうと努力するときよりも、自分のせいで他人に迷惑をかけられないと思った時のほうが動機付けは高まる。
手抜き対策
① 罰を与える ⇒ でも、与える側、受ける側、双方のとって効果は薄い ⇒ 罰は不安や無気力感、復讐心、疑念などネガティブな情動を触発し、意図せぬ悪い結果をもたらしてしまう
② 社会的手抜きをしない人を選考する ビックファイブ検査(外向性、情緒安定性、勤勉性、協調性、開放性)のうち、勤勉性、協調性に優れた人物を選考する
勤勉性 目的意識が高く、厳格、規律を守り、熱心で几帳面、意志が強く、注意深い
協調性 周りの人と協力して活動ができ、評価の有無にかかわらず、皆と一緒に活動を行える
③ リーダーシップにより仕事の魅力向上を図る
業務処理型 外発的動機 報酬の交換
変革型 内発的動機 リーダを理想的人物として尊敬 部下を鼓舞しやる気を出す 知的な面を刺激をする 個人に関心をもち、配慮する カリスマリーダ、独裁者のイメージ
④ パフォーマンスのフィードバック 即時フィードバックの原理 即座にフィードバックを行い、学習効率と学習者の動機づけを行う
⑤ 集団の目標を明示する
⑥ パフォーマンスの評価可能性を高める 監視 ⇒ プライバシーの侵害、信頼関係への悪影響
⑦ 腐ったリンゴの排除 早期発見早期処置 くわえて 割れ窓理論 ごみやラクガキに早期に対応 他者の目の存在を意識させる 目を書いたポスターを張るなど 集団の大きさを小さくする
⑧ 社会的手抜きという現象の知識を与える
・集団行動には、真面目な部分と、適当な部分がある 後者のほうが相対的におおきい
・集団の中の4つの役割
① ヒーロー 集団へ貢献し、多くの人から評価、尊敬をされている
② 小役人 努力をしているが評価されず、かえって蔑まれることがある
③ スケープゴード 努力もせず、人へ迷惑をかけている 多くの人から嫌われてている
④ マスコット 努力しないで人に迷惑をかけているにもかかわらず、多くの人から好かれている
・パレートの法則 2-6-2 、2-8 できる人は集団の2割
・できる人ばかりを集めても、パフォーマンスは向上しない ⇒ 集団には多様性が必要
もくじ
はじめに 人生は手抜きに溢れている
第1章 社会は手抜きに満ちている
第2章 「誰かがやるでしょ」の心理学
第3章 腐ったリンゴをどうするか?
第4章 こうすれば手抜きは防げる
第5章 最善の手抜き対策はコレ!
エピローグ 「手抜き」にも役割がある
おわりに
参考文献
ISBN:9784883206407
出版社:三五館
判型:4-6
ページ数:208ページ
定価:1300円(本体)
発行年月日:2015年10月04日第4刷 -
Posted by ブクログ
「個人が単独で行った場合にくらべて、集団で作業を行う場合のほうが1人当たりの努力の量(動機づけ)が低下する現象」(p.ii)を「社会的手抜き」と呼び、「社会的手抜きと関連があるさまざまな社会現象を取り上げ、社会的手抜きの視点から分析」(p.239)した本で、具体的には「生活保護の問題、投票率、仕事中のインターネットの私的利用、八百長、集団浅慮、援助行動、カンニング、リスク行動、腐ったリンゴ効果、フリーライダー効果など」(同)を扱っている。
おれは教員をやっているから、もちろん個人の発達の課題とか、カウンセリングとか、そういうものにも興味はあるけど、むしろそれよりも学級経営や集団授業をする視点で、教員のどういう声かけや振る舞い、あるいはどういうメンバーが集団全体の雰囲気を作るか、ということにはもっと興味があるし、学びたいと思っている。この本はそういう期待に応えてくれるもので、教員として興味深い事例が多いということを感じた。以下、気になった部分のメモ。
まず「集団サイズと集団の生産性」(p.17)のデータが面白い。このグラフによれば5人までは生産性が上がるが、そこから先はあまり生産性が伸びていない。グループワークは5人まで、という感じだろうか。また、「社会的手抜きに対する集団の許容度が低下しはじめたと感じられた場合には、集団を分割してサイズを小さくするほうがよいであろう。組織サイズのスリム化は余裕のない組織ほど必要性が高いものと考えられる。」(同)ということもヒントになるかもしれない。でも手抜きに対する許容度って、どういう感じなんだろう?と思ったりもする。たださらに重要なのは「集団形成の初期に生産促進的圧力が加えられることによって、高い生産水準規範が形成された場合、監督者が退出しても高水準の規範が維持された。いっぽう、初期に規範水準が低い場合は、後半で監督者による圧力が加えられても、規範水準は低いままであった。このことから、いったん集団の中で社会的手抜きが発生すれば、場合によってはそれが暗黙の集団規範となり、その影響が長期間残ってしまうことが考えられる。そして、そのような状態になれば、集団を解体しない限り、回復させるのはかなり困難であるかもしれない。」(p.24)という部分は、教員だったら聞いたことはあるだろう「黄金の3日間」とか、初めに見せしめを作るとか、後から緩めるのは簡単、とかいったフレーズやエピソードと合致するもので、やっぱりそうだよな、と思う。そして話と直接関係ないが、心理学の授業で習ったかもしれないが、TATという「絵画統覚検査」(p.61)を、高校の英語のライティングの課題で応用することはできないかなあ、とか思った。ちょっと調べてみたい。次に、与える課題をチャレンジングにした方が生徒が食いつく、というのもあるが、これも当然ながら「認知欲求が低い被験者は挑戦的な課題であろうがなかろうが社会的手抜きを行った」(p.65)ということだから、やっぱり色んな課題からオプションで選択できるようにする、というのが理想だろう。そして、よく「ブレーン・ストーミング」は集団のファシリテーション技術の文脈で扱われることが多いが、これも「相互作用集団よりも名義集団のほうが、アイディア総数だけでなく独創的なアイディア数も多いということが明らかになった」(p.81)ということで、つまり「単独でアイディア出しの作業を行ったあとに相互作用集団と同じ人数である4人をランダムに集め」(p.80)た方が、うまくいくらしい。その後のpp.84-5ではアイディアの量ではなく質に関して、「実行可能性」と「独創性」という対立する概念が出てくるが、これを生徒に示して、ブレーン・ストーミングの後、実行可能で独創的なものに近づけるために、アイディア同士をつなげたり、模倣したりして変えていく、という方向を示すことがいいのではないかと思った。それから、「ルーチン化の呪縛」(pp.112-3)の話は、おれの前の仕事と関連する話題だったから、これも面白かった。つまり「訓練すればするほど、いざというときの行動の柔軟性が失われて、訓練で想定した以外の事態が発生した時に対応行動がとれない」(p.113)というのは、「訓練業界」にはバランスが難しいところ、ということだと思う。いざというときの行動は、結局は個人の資質なのか、とか。スポーツにおける社会的手抜きの話は、スポーツに興味のないおれにはあんまり面白いと思わなかったが、「チームの凝集性を高めることが集団競技の動機づけの低下を防止することに効果がある」(p.155)というのは、当然だが、実験ではその凝集性を高めるために「相互理解、関係構築、協働、コミュニケーション、目標設定、リーダーシップ、役割の明確化と需要、チーム規範といったテーマのもとで、研修訓練を2日間(正味12時間)にわたって行う」(同)ということをやったらしいので、学級開きから早い段階でこういったテーマで道徳の時間に意識的に仕掛けていくというのは割と大事なことだと思った。それと同時に、「応援は主観的には選手のパフォーマンスを向上させると思われている(選手自身も思っている)が、現実はそのようにならず、逆に応援は、どちらかといえば選手のパフォーマンスを阻害する傾向が強い」(p.176)という。だからと言って応援しなくていい、とも言えないし、普通の学級だったら応援という行為によって集団の凝集性を高めるという効果を重視した方がいいのではないかと思った。ただ最も教員として気に留めないといけないのは「腐ったリンゴ効果」かなあ、と思う。はっきり言って、どういうクラスを担任しても、言葉は悪いが「腐ったリンゴ」的な人物がいる、あるいは集団の中では(不幸にも)そういう役割になってしまう人物がいるものだと思うし、そういう人物を矯正しようというのは、おれの力不足のせいもあって、なかなかうまくいかないし、むしろリスクの方が多い。「やる気がない人に罰を与えていることが集団成員にわかるようにすることより、高い目標を設定して集団成員に示すことのほうが社会的手抜きを防ぐためには効果的であることがわかった。」(p.195)ということだそうだから、これは実践する価値があると思う。それから「プロスペクト理論」という、「利益の増大は主観的価値の増大(プラス方向)をもたらすが、主観的価値はすぐに頭打ちになってそれ以上伸びなくなってしまうのに対して、損失の増大は主観的価値(マイナス方向)の増大につながり、損失の増大に伴って主観的価値はますますマイナス方向に急激に増大する」(p.189)というのも納得。何かの本で、人が店の行列に並ぶのは、それに並ばなかったことによって損したという気分を味わいたくないから、というのを読んだ気がした。そして「社会的手抜き」の反対は「社会的補償」らしいが、それこそ「無用の用」(p.207)ということで、「同僚や上司の無能さを嘆き、それを支えている自分がいかに苦労しているかを語ることは、しばしば見られるが、これは社会的補償を表明していることにほかならない」(p.208)、つまり「無能な同僚の存在は周りの人の自尊心と動機づけの向上や維持に貢献している可能性もある。」(同)ということで、これもずーっと思っていたことだけど、納得。最後に、「優れた他者の情報を知らせること」(p.221)について、短期的には効果があるものの結局集団全体の士気を下げる、というから気をつけないといけない。「リーダーは情報の提示によって競争心をあおるのではなく、個人の貢献が集団全体にとっていかに重要かという『社会的不可欠性認知』を高めるような仕方で情報提示を行うべきであろう。そのために能力が低い人に対しては他者が従事しないユニークな仕事を担当させたり、集団全体の目標やそれを達成すれば得られる報酬を明確に提示するといったことも考えられる。」(p.221)という部分は参考になった。
教職課程とかで集団の心理について、あんまり習ったことがない気がするが、こういう知識は必須でやらないといけないことなんじゃないかなあと思う。同時に、たぶん経験則で書かれた教師向けのクラス・マネジメントの本の実践と一致する部分は多々あるので、経験を積めばこういう理論はもしかすると勉強しなくても後から補える、ということではあるかもしれない。「あとがき」で紹介されている『グループ・ダイナミックス 集団と群衆の心理』という本もぜひ読んでみたい。(22/01/28) -
Posted by ブクログ
【文章】
とても読み易い
【ハマり】
★★★・・
【共感度】
★★★★・
【気付き】
★★★・・
手抜きの要因
・低い評価可能性…「がんばっても評価されない」
・努力の不要性…「自分がやらなくもアイツがやってくれる」
・手抜きの同調…「アイツもさぼってるなら自分もさぼる」
・緊張感の低下…「いつも同じ作業ばかり」
ブレストは社会的手抜きが発生しやすい。
解決を探すのではなく、問題を悪化させる方法を探る「リバース・ブレイン・ストーミング」などが有効。
システムである人の集団から手抜きを無くすのは難しい。手抜きをする人も多様性の一部であり、それを意図的に排除してしまうとシステムが崩壊する可能性もある。 -
Posted by ブクログ
■社会的手抜き
個人が単独で作業を行った場合にくらべて、集団で作業を行う場合のほうが1人当たりの努力の量(動機づけ)が低下する現象を社会的手抜きという。
■社会的手抜きの原因
・「道具性」欠如の認識:「自分が頑張っても、それが集団全体の業績にはあまり影響しない」
・「努力の不要性」の認識:他の人がしっかり仕事をしているので自分が頑張る必要はない
・「評価可能性」欠如の認識:たとえ頑張ってもそれが他の人にはわからないので評価されない
…日常、指導的な立場にある人が緊急時でもリーダーシップをとることが明らかになった。上司は上司として、父親は父親として、その役割を果たそうとする傾向がある。よほどのことがない限り、責任が分散するとか、日常の役割を放棄して自己中心的振る舞いをすることはないようである。
■無意識での社会的手抜き
社会的手抜きやケーラー効果が意識的に行われるものか否かについては明確ではないが、これまでのこの分野の数多くの研究をレビューした結果によれば、自己報告と実際のパフォーマンスの相関は0.25しかなかった。これは社会的手抜きの大部分は無意識のメカニズムに基づいていることを示唆している。もしそうであれば、社会的手抜きの存在を意識化させれば、それを低減することが可能になると思われる。 -
Posted by ブクログ
集団での作業努力が個々人の努力量の総和よりも低下する現象「社会的手抜き」を、綱引きや居眠り、生活保護や投票に至るまで数多くの具体例を提示しながら、その対策について論じている本。
ここで明らかになるのは手抜きが、ただの怠惰だけではないということだ。
例えば、仕事中にインターネットの利用などのサイバー手抜きを行うと気分転換ができたり、士気の上昇などが確認されている。また、集団サイズが大きい場合において、手抜きに対する許容度が大きければ、社会的手抜きの悪影響を受けにくいといった報告もある。
このような手抜きの性質を筆者は、1.努力の不要性、2.道具性、3.評価可能性を挙げて説明を試みている。
1.努力の不要性は、個人のパフォーマンス(成果)が、集団の業績にどれだけ貢献するかどうかの指標である。ほとんど全体に影響がなければ努力の必要性を感じなくなる。
2.道具性は、個人あるいは集団のパフォーマンスがどれだけ報酬になるかどうか(成果や業績が報酬に役に立つか)の指標である。パフォーマンスの向上が報われないと感じると手抜きに繋がる。
3.評価可能性は、集団の報酬が個人の報酬につながるかどうかの指標である。全体が潤っても個人が貧しいままではモチベは低下する。
このように、手抜きにはある種の「合理性」が見て取れる。もちろん、社会的手抜きによる損失は存在し対策を講じられてきた。だが、逆にその社会的手抜きが、集団や組織を維持している側面も存在している。「手抜きの攻防戦」は今に始まったことではなく、今後も決着がつきそうにもない。
なら、手抜きの多面性を認めた上で、どう付き合っていくのか。それを考えるのが今後の課題である。