室生犀星のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
赤い金魚が人間の女の子となって、老齢の男性と交流する話…
と聞いて、読んでみたい!と思い室生犀星初挑戦。
表題作はじめ全5篇の物語なのだけれども、
特に「蜜のあわれ」は期待を上回る作品。
室生犀星の理想の“女ひと”像の結晶ということらしいのだが、
全篇対話形式で描かれる二人(?)のやりとり及び関係は
とてもエロチック。
いや日本語で、色っぽい。あるいは艶っぽいとするべきか。
森見登美彦の「宵山万華鏡」でも金魚というモチーフ自体が、
妖しい少女として描かれていたように、
文学的に描写されるのは、メス=少女が似合う。
また金魚としての命の儚さと、老齢の男性が避けられぬ死。
エロスとタナトスと言っ -
Posted by ブクログ
浦野所有。
◆以下、ネタバレ注意◆
作者の室生犀星が詩人であるという先入観のためか、全体的に詩的な雰囲気のただよう作品でした。詩というにはあまりにも長い、父娘ふたりの数十年の歩みをつづっているわけですけど、ほとんど直観的に筆を走らせ切ったのではないか? と思ってしまうほどストレートで、よどみなく、流麗な筆致でした。
また、抽象的な心理描写が多いことも特徴といえるでしょう。父と娘の会話も、核心のところまでは言葉に表さないですし、会話以外の部分(全体は三人称形式なのですが)でも、あまりにも細かすぎる心理描写はでてきません。それゆえ、父――平山平四郎――や、娘――杏子――ら、登場人物の表情や息づ -
Posted by ブクログ
少し前に、ヨナキウサギさんに『陶古の女人』を教えていただいて探していた。
見つけたのが、そちらを含めて『蜜のあわれ(「後記 炎の金魚」を含む)』『火の魚』『われはうたえども やぶれかぶれ』『老いたるえびのうた』の5作、解説・作家案内・著書目録が収録されたこの1冊。
『陶古の女人』もおもしろかったのだけれど(でも私はきっと一生、こんな風に物に耽溺することはないなぁ、よかれ悪しかれ)、『蜜のあわれ』が思わぬ拾い物だった(本当ならば刊行時のように『蜜のあはれ』の方がしっくりくる気がするのだが。新仮名にしないとならないのかなぁ)。
表紙の金魚の魚拓が見たかったなぁ。巻末の解説に表紙写真が付されている -
Posted by ブクログ
萩原朔太郎、室生犀星いずれも昭和前半期のビッグネームだが、これほどまでに深い友情で結ばれていたとは知らなかった。詩はほとんど読まないので、室生犀星が詩人として出発したことすら知らなかったし、『抒情小曲集』としてまとめられる詩を読んで朔太郎が感動し、ファンレター的な手紙を出して交わりを求めたことなど、本書で初めて知った。
本書では、犀星との交流や犀星論を語る朔太郎の文章と、犀星が朔太郎との交流や朔太郎の性格などについて語った文章、それぞれの詩集に寄せた序文などが収録されているが、お互いの性格が文章から窺われるところが読み比べていて愉しい。殊に朔太郎の犀星に寄せる文章が実に熱いのに対して、犀 -
Posted by ブクログ
室生犀星文学忌、犀星忌。
1918年の作品
小景異情 その2
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
この作品は、高校のたしか2年の現代国語の授業で扱われた。そして当時から詩は苦手という意識と たぶん教師にもそれを見抜かれていた事実。
まず、この詩は何処で読まれたかという問いに早々に一番に当てられた。
当然、あほ丸出しで「みやこ?」と答え、その後の授業は集中的な指導をいただき散々なものになった。
そうです、彼は故郷金沢で読んだ故郷との訣別の詩なのです。当時は、今のような情報はなく、国語便覧あたりが重要情報源。養子先の孤独な幼児期だの妾の子だの知り得るのはハードルが高かった -
Posted by ブクログ
金沢出身の詩人・小説家である室生犀星の作品集。晩年に書かれた短編5篇+詩1篇(+α)収録。室生犀星はまだ詩集しか読んだことがなかったので、小説作品を読むのは新鮮だった。
表題作のひとつ「蜜のあわれ」は、70過ぎの老作家と金魚の化身である少女の物語。全編が会話文のみで構成されており、モノローグというものが無い。奔放な少女(17〜20歳くらい? 口調はもっと幼い感じもする)に振り回されつつ受け入れる老先短い作家はどこか、老いた自分のことも、かつての若い自分のことも、両方受け入れられないように見える。
「われはうたえどもやぶれかぶれ」は、作者の肺癌闘病記。思い通りに動かない体や治療の苦しみを描き