高橋英夫のレビュー一覧

  • 暢気眼鏡 虫のいろいろ 他十三篇

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    ネタバレ

    いやあ、これはよかったなあ。読めてよかった。貸してもらってこれを今読めたのが最高に運がいい。
    二作目の芳兵衛から、完全に作品の中に入った。p54-55の夫婦の会話(これは灯火管制)がすごくいいなあとなり、ここまでの三作がまず繰り返し繰り返し読みたくなる作品なのは間違いない。
    虫のいろいろの好きなところは、いろいろな虫の特徴と、人間の性格を照らし合わせて主人公が自分とも重ねるところで、解説にも書いてあったけれど、尾崎一雄のそういう思考を覗きやすい作品でもある。
    ここまでで大満足なのに、後半の蜂についての話がまたよかったなあ。家のそばの自然をよく見、よく書かれている。そういえば振り返ると松風もかな

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    2021年08月06日
  • 偉大なる暗闇――師 岩元禎と弟子たち

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    滄海遺珠。後半よりも前半のほうが好み。偉大なる暗闇は、暗闇のままでなければならない。偉大なる暗闇を偉大なる暗闇として我らその残り香を感じるのみ。以て瞑すべし岩元禎。でかした原勝郎! 遥かなる粟野観音像。

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    2012年11月07日
  • 暢気眼鏡 虫のいろいろ 他十三篇

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    やはりベストは『虫のいろいろ』。額のしわで一匹の蠅をつかまえながら(くしゃおじさんに匹敵)、そこから確率論、宇宙の有限or無限まで話がいって、最後は「うるさくなったのだ」というサゲ。笑える。

    続く「蜂」の連作もよい。対象即自己。『城ノ崎にて』を落語にするとこんな感じか。

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    2013年07月14日
  • 暢気眼鏡 虫のいろいろ 他十三篇

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     曲が終わった.すると蜘蛛は,卒然といった様子で,静止した。それから,急に,例の音のないするするとした素ばしこい動作で,もとの壁の隅に姿を消した.それは何か,しまった,というような,少してれたような,こそこそ逃げ出すといったふうな様子だった。――だった,とはっきりいうのもおかしいが,こっちの受けた感じは,確かにそれに違いなかった。
     蜘蛛類に聴覚があるのか無いのか私は知らない。ファーブルの「昆虫記」を読んだことがあるが,こんな疑問への答えがあったか無かったかも覚えていない。音に対して我々の聴覚とは違う別な形の感覚を具えている,というようなことがあるのか無いのか。つまり私には何も判らぬのだが,こ

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    2009年10月04日