池尾和人のレビュー一覧
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私自身、大学時代は経済学を専攻していましたが、経済学は教える人の資質や思想によって学生の理解度を大きく左右すると思っています。物理学のような自然科学ですと、真実は1つであとは教え方の巧拙によって学生の理解度が変わるというタイプのものですが、経済学は先生の教え方の巧拙だけでなく、その先生の思想(どんな経済理論・思想を信奉しているか)も学生の理解度に影響を及ぼします。その先生の論理展開にピンと来ない場合、学生は不幸な一学期を過ごすことになるわけです(そして学生の直感の方が実は正しいと言うことも往々にしてある)。
その意味では、学生時代に池尾先生に経済学を習っていたら理解度もずいぶん高くなっただ -
Posted by ブクログ
内容的には全て消化できたとは言いがたいが会話形式ですすむので取っ付きやすい。
第一講 なぜ日本はデフレに陥ったのか
第二講 マクロ経済学の新しい常識
第三講 ゼロ金利制約と金融制約
第四講 金融緩和と為替・財政政策
第五講 アベノミクスの現在と将来(2013/6月時点)
インフレ率=予想インフレ率ーαx(現実の失業率ー自然失業率)
自然失業率とは需要と供給が一致しているにもかかわらず求人と求職のミスマッチが原因で起こるもの、短期ではインフレ率と失業率には右肩下がりの相関があると言う所までが前提だ。アベノミクスの金融政策と言うのは金融緩和により予想インフレ率を高めるというもので、これができれ -
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「金融」に関する入門的な解説書。
新たな知見を得られるというよりも、既知の知識を体系的に整理し、深めることができた、という点でたいへん有益でした。
[新版]への改版時期がサブプライム問題に端を発する世界的金融危機と重なったこともあり、「金融取引」「銀行システム」「金融政策と中央銀行」といったプリミティブな金融論だけでなく、「資産価格とそのバブル」「金融機能の分解と高度化」「金融規制監督」といった極めて現代的なテーマにも紙幅が割かれています。
「日本の企業統治」という、一見「金融」とは直接関係にないテーマも取り上げられているのが興味深かった。
そこで解説されているのは、市場か規制かという近視眼 -
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「換言すると、むしろバブルはバブルと分かっていても止められない、プロの投資家はバブルと分かっていてもゲームから降りるわけにはいかないという指摘がある。」
金融について初歩的なことが書かれた本。
ただし、優しくはない。
リーマンショックにより、証券化がよろしくないものであると認識されるようになった。しかし、証券化が問題なのではなく、その適切な利用ができない、あるいは、しないのが問題なのだ。使い方次第で人を殺める自動車を考えると分かりやすい。
証券会社が影の銀行になることで、証券化のリスクが高まった。しかし、リスクを犯すことが利益に繋がる以上、それが適当な行動だと思われる。 -
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「学生の頃からお金について学ぶべきだ!」みたいなのはそこら中で聞く論だが、じゃあ何をどのようにどうやって教えるべきか。そもそも現代の金融を正しく理解できている大人はどれだけいるのだろうか。ということで下世話でありがちなサブタイトルをつけるとすれば、『今さら聞けない社会人のための金融入門』
教科書としては高校か大学の一般教養レベルだろうか。金融取引とは現在のお金と将来のお金の交換であるというところから始まり、金融機関が持つべき審査能力、市場に必要な抑止力、銀行の機能である決済と信用創造、金融政策と日銀の役割など。そして後半では日本のバブルを例としたその生成と崩壊の解説や、サブプライム危機を例と -
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「講義」と「質問」という形をとっているせいか著者のこれまでの著作に比べると本書は格段にわかりやすい。
「アベノミクス」により、日本にはいまようやく「失われた20年」からの脱出ができるかのような期待と不安が漂っているように思えるが、本書は実に冷静に「アベノミクス」による現状と将来を語っている。
マスコミのいい加減な予測や、エコノミストの中途半端な評論と違い、著者の見方は実に冷静であり、説得力もある。
「あえて大胆な推測を述べると…成功を収める…可能性は1~2割程度…悪い金利上昇…1~2割程度。逆に言うと当面は7割程度の確立で資産価格の大きな変動は見られても、実体経済面ではそれほど劇的な変 -
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ネタバレ現代の金融について、主に学術的な見地から解説した本である。
構成としては、
・金融取引
・銀行システム
・金融政策と中央銀行
・資産価格とそのバブル
・日本の企業統治
・金融機能の分解と高度化
・金融規制監督
となっている。
特徴的なのは、学術的な見地の解説も多い一方で、現実とのギャップや、そのギャップに対する解説が多いことである。実務とのズレ(世界的に共通のものもあれば、日本独特のものもある)を明確にすることに加え、それをどのように理解したらよいか、解説しているのは貴重であると感じた。
企業価値に「従業員余剰」という将来的に従業員に帰属する報酬の現在価値(数値化できない企業特殊的な技能