福永文夫のレビュー一覧
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本書は、日本が1945年に敗戦してから、1952年にサンフランシスコ講和条約により主権を取り戻すまでの、7年間の政治の流れを解説する。連合国による占領は、連合国最高司令官マッカーサーによる占領であり、まず非軍事化・民主化、そして経済復興が図られた。それぞれのエピソードから、マッカーサーがいかに日本を責任ある民主主義の大国にすることを志向した主体的な統治を行ったかがわかった。一番のスペクタクルは間違いなく日本国憲法だろう。マッカーサーは、大日本帝国憲法からの改憲を迫られた日本の政治家のほとんどが主張した天皇主権案を押しのけて国民主権を強い、国際批判を避けつつ天皇制を存続させるためには戦争放棄を謳
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日本占領が米国の占領行政の成功例というよりも、あくまでも「貴重な例外」であるんだなと認識を改めた。そして、戦後処理では無く戦争中の軍事占領にはじまり、(その初期の数年間は)既得権益の維持以外何も考えないまま軍事占領が継続された沖縄の扱いはあまりにも酷いなあと同情した。(だが、現在の沖縄政界やマスコミの態度を正当化できるとは思わない)初期の民政局主導の民主化と後期のワシントン直轄の復興のいいとこ取りできたのは日本人にとってこの上ない幸いだったなと。(当時の日本人ががんばったのは承知の上で、敢えて『幸いだった』と思う。外部要因によるものが大きいので)そして、さらに言うと、ドッジ・ラインによる副作用
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獨協大学教授(政治学)の福永文夫(1953-)による戦後占領期の国内政治史の概説。
【構成】
序章 占領した者とされた者 東京・ワシントン・沖縄
第1章 敗戦と占領 非軍事化、民主化へ
1 日本降伏からGHQの成立へ
2 戦後政治の起動
第2章 占領改革と政党政治の再出発
1 日本国憲法の誕生
2 公職追放から新生会議へ
第3章 中道政権の軌跡
1 片山内閣の誕生 日米「改革派」連合の形成
2 動揺する中道政権 求められる経済安定
第4章 占領政策の転換 民主化から経済復興へ
1 中道政権の限界 片山内閣から芦田内閣へ
2 ドッジ・ライン 日米「保守派」連合の形成
第5章 サ -
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1945年10月のGHQの発足から51年9月のサンフランシスコ条約発効による独立回復までのGHQによる占領に関する新書。占領改革によって日本の「国体」が一方的に改造されて、GHQ謹製の日本国憲法を一方的に押し付けられたという「占領史観」が一部には根強いが、必ずしもそうではなく、婦人参政権の付与、労働組合法、農地改革などの改革は、戦前からの懸案であり、GHQに先んじて日本側からも改革が志向された。日米の合作で戦後史が始まったといえる。
①ワシントンとGHQ、またGHQ内の対立
マッカーサーの統治は「アメリカによる占領」として一枚岩に捉えられがちであるが、それは必ずしも正しくない。占領国の最高政 -
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官僚時代のエピソードに、政治家「大平正芳」の一端を感じる発言がある。終戦が決まった数日後、同僚の宮沢喜一に向かって、「これで日本は何も無くなってしまった。これからどうやって日本人を食わせるか。外地から帰って来る人も多いだろう。何百万人が餓死しなければ生きられないかもしれない。すべてが止まってしまった今の日本では、鉄道だけがとにかく動いている。この鉄道を担保にしてアメリカから金を借りる手はないだろうか。」待ち受ける苛酷な現実を前にしながらも、この気概と志。成長から衰退に向かう日本に向けてネガティブな意見が飛び交っているが、敗戦直後と比べれば遥かに現在の方が恵まれていると思うし、打つ手が無いわけで
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ネタバレ第二次世界大戦終結後、
連合国(実際はアメリカ)に占領された日本の政治史の本。
日本国憲法に関しては、
GHQにおしつけられたものだとする言説があるけれども、
そういう面はたしかにあるが、
天皇制を象徴天皇としてでも存続するために世界から承認を得るのには、
戦争放棄、軍隊放棄といった決めごとを持つことが必要だったようですね。
いまの憲法は天皇制を救うため、
世界にたいして酷いことをした(侵略して虐殺虐待など)日本が、
限りなく譲歩して認めてもらったものだということでした。
そのために、ときの役人・政治家たちが知恵を絞っている。
また、官の憲法案より民(東大の教授ら)の憲法案のほうが、
今の -
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確か日経新聞で好評だったから買った、のだと思う。
淡々とした事実の並びから、アメリカの都合と支配層の性善説と、日本の天然ぶりがよく見える。公職追放の影響度は甚大も、敵対的買収された先の管理職層がクビになったと考えれば全くおかしくない。それで堂々返り咲く鳩山家の生命力こそ異常。
もうひとつ、本書の特徴は沖縄の状況についても淡々と併記していること。2013年に現安倍内閣が定めた「主権回復の日」。本書では「サンフランシスコ講和条約が発効した4月28日、日本から分離された沖縄は、この日を「屈辱の日」として記憶することになった」。そりゃ沖縄の人は怒るわ。 -
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昨今、本邦近代史の解説書は右か左に偏ったものが多い中で、中立的事実を淡々と記述した本書はむしろ占領下から現在へ続く日本の政治的動向を明らかにする。
護憲、護平和政党との自己宣伝が喧しい共産党は、戦後一貫して反米(=親中ロ)、反憲法の革命政党であった。(いつから護憲に変わったのか?)
社会党は内部のイデオロギー闘争により、不毛な分裂を繰り返す。
米国の占領政策は単に場当たり的なものだったが、悪気も反省もない。
朝鮮戦争勃発時の某米高官のコメント「(朝鮮戦争が)日本人を憲法九条による牧歌的空想から目覚めさせる」を始め、60年以上前と何ら変化のない状況に驚かされる。 -
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アメリカの占領政策を政府、国会、官僚、市民運動家はどう捉えたか。
終戦前は大政翼賛会という形ではあるが、紛いなりにも国会は存続していた。終戦直後彼らが引き続き国政を担ったが、当然ながら急進的な占領政策を受け容れることはできなかった。
一方で、農地改革の前提となる小作人の窮乏は戦前から農水官僚らによって認識されていた問題であり、婦人参政権も平塚雷鳥らによって主張された問題であったと言う点で、戦前からの懸案を占領を背景として一掃したに過ぎないという見方もできる。
しかし、リベラルな占領改革はそういった人々の常識を超えていた。農地改革はより徹底して行われ、大企業は解体されようとした。一連の改革は片山 -
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敗戦・降伏からサンフランシスコ講和条約までを対象とする「占領期」の通史としては、神田文人『昭和の歴史8 占領と民主主義』(小学館、1983年)以来久々の傑作。憲法改正や農地改革をはじめとする占領下の諸変革の立案・実施過程、冷戦の進行に伴うアメリカの占領方針の変容過程を具体的に示し、その間の国際関係、アメリカ本国と占領軍との関係、占領軍内部の抗争と日本国内の政治抗争との関係を過不足なく説明している。狭義の政治史にとどまらず、経済の変動や労働運動の動向にも注意している点も評価できる。
特筆するべきは、副題に「東京・ワシントン・沖縄」とあるように、従来の占領史では無視されるか、あるいは日本本土 -
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ネタバレ[ 内容 ]
戦後、「保守本流」の道を歩み、外相・蔵相などを歴任、一九七八年に首相の座に就いた大平正芳。
その風貌から「おとうちゃん」「鈍牛」と綽名された大平は、政界屈指の知性派であり、初めて「戦後の総決算」を唱えるなど、二一世紀を見据えた構想を数多く発表した。
本書は、派閥全盛の時代、自由主義を強く標榜し、田中角栄、福田赳夫、三木武夫らと切磋琢磨した彼の軌跡を辿り、戦後の保守政治の価値を問うものである。
[ 目次 ]
序章 「戦後の総決算」の主張
第1章 青少年期―人間と思想の形成
第2章 「保守本流」の形成―宏池会の結成
第3章 宰相への道―「三角大福」派閥抗争の時代
第4章 大平政権の