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Posted by ブクログ
官僚時代のエピソードに、政治家「大平正芳」の一端を感じる発言がある。終戦が決まった数日後、同僚の宮沢喜一に向かって、「これで日本は何も無くなってしまった。これからどうやって日本人を食わせるか。外地から帰って来る人も多いだろう。何百万人が餓死しなければ生きられないかもしれない。すべてが止まってしまった今の日本では、鉄道だけがとにかく動いている。この鉄道を担保にしてアメリカから金を借りる手はないだろうか。」待ち受ける苛酷な現実を前にしながらも、この気概と志。成長から衰退に向かう日本に向けてネガティブな意見が飛び交っているが、敗戦直後と比べれば遥かに現在の方が恵まれていると思うし、打つ手が無いわけではない。本書は大平の言葉に潜む思考・思索を通して、彼の目指した戦後保守とは何だったのかを考察する。そこには歴代の政治指導者たちとの関わりー政治指向が対峙した岸信介、池田勇人との軋轢、盟友田中角栄との固い絆、福田赳夫との対立、バルカン政治家三木武夫との確執等ーを彼らの掲げた政策と政治志向を交えながら、丁寧に書かれている。戦後政治史の概観を知る上での格好の書だと言える。大平が総理時代に提唱し企画したことは21世紀を視野に入れた構想であったこと。この慧眼ぶりを知るにつけ、昨今の政治家の言動をどうしても比較してしまう。あなたには「こいつの考えをちょっと聞いてみたいと思える政治家はいますか?」
Posted by ブクログ
子供ごころに首相として最初に認識した人物で、在任中に亡くなったという以外、あまりイメージは持っていなかった。たまたま、今年の夏休みに旧師を訪ねた際に、私の先輩にあたる、という由で話題に上った。カーターかキッシンジャーか(どっちか忘れた)が信頼を寄せていたとか、周恩来が褒めていたとか、人物的な評価があったというような話だった。また、首相も自民党顔の人に替わったところだし、普段はあまり読まぬ政治家の評伝を読む気になった。
讃岐の貧農(は少し言いすぎで中の上の農家だったようだ)の倅。政治家としては貧しい家庭の出身だが、奨学金で東京商大に進学して大蔵官僚を経て政治の世界に入る。
官僚時代に中国駐在を経験。その影響もあるかどうか、池田内閣での外相就任以降、政治家としてはわりあい外交での活躍が多かった。代表は角栄と組んだ日中国交回復。
鳩山、岸、福田が国家主義・戦前回帰派とすると、池田、大平は戦後憲法にも肯定的で、吉田茂の流れを汲む軽武装・経済重視の「保守本流」のラインとなる。
思索的な文筆家・理論家、政治倫理にはあまり拘らない良くも悪くも中庸を好む現実主義者の両面があった。
1970年代アタマには、今までは欧米へのキャッチアップでやれていたが、経済成長も曲がり角に来て「戦後の総決算」を唱えていた。これは大平に限らぬ問題意識。考えてみると40年後の今日でもその問題に答えは出ていないようだ。
70年代にわたって三角大福が総理の座を激しく争うわけだが、いったい何が争点なのかはよく分からん。積極財政・親中国の田中と緊縮財政・親台湾の福田くらいの色分けはある。でも政策はすり合わせで決まって、ポジションだけを熾烈に争う感がある。いま現在の政治も同じか。
政治の役割を限定的に捉えて権力の行使に抑制的だった。70年代のインフレ当時も、無理矢理物価を抑えるよりは市場重視の姿勢。はっきりしないが「小さい政府」派と言えるかもしれない。消費税導入でつまづいたのは皮肉。
こういう人、好きかも。
座右の銘「一利を興すより、一害を除くに如かず。」by耶律楚材
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