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1945年の敗戦後、マッカーサーを頂点にGHQの支配下に置かれた日本。当初占領政策は非軍事化・民主化を推進、平和主義を追求した日本国憲法が花開く。だが冷戦が深まる中、日本を「反共親米」にすべく、政策は経済復興に転換される。51年、朝鮮戦争の最中に結ばれたサンフランシスコ講和条約は日米安保条約とセットの締結となった。本書は、21世紀まで続く「戦後体制」が創られた日本占領7年間の全貌を描く。
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Posted by ブクログ
本書は、日本が1945年に敗戦してから、1952年にサンフランシスコ講和条約により主権を取り戻すまでの、7年間の政治の流れを解説する。連合国による占領は、連合国最高司令官マッカーサーによる占領であり、まず非軍事化・民主化、そして経済復興が図られた。それぞれのエピソードから、マッカーサーがいかに日本を...続きを読む責任ある民主主義の大国にすることを志向した主体的な統治を行ったかがわかった。一番のスペクタクルは間違いなく日本国憲法だろう。マッカーサーは、大日本帝国憲法からの改憲を迫られた日本の政治家のほとんどが主張した天皇主権案を押しのけて国民主権を強い、国際批判を避けつつ天皇制を存続させるためには戦争放棄を謳うことが不可欠であると説いた。公職追放のありかたからもわかるとおり、戦前日本に回帰しかねない保守主義を強く憂慮し、吉田茂に不信感を持ち、社会党に入れ込んでいたようすも特に興味深かった。 何が起こるかわからない敗戦直後の日本には、様々な歴史の分岐があった。連合国による分断統治が行われる可能性も、英語が公用語にされた可能性もあったなか、読み進めていくうちに、それらの分岐が避けられ徐々に我々の知る現代日本に近づいていくさまは、とてもスリリングだった。 各キーパーソンの背景や当時の世界情勢にも触れながら、固有名詞の連続ではあるが平易な文体で淡々と時系列に語っていくさまは、とても読みやすかった。特に本書の工夫といえるのは、副題にあるように、東京・ワシントン・沖縄の3視点を並列化させた時系列の記述を行う点である。大権を与えられた東京のマッカーサーが、ときにワシントンの意向に抗い理想を実現させたことや、冷戦が東西の代理戦争としてアジアに場を移し、戦後日本に求められる立ち位置が徐々に変化していったこと、沖縄がしばらく「忘れらた島」として無策の統治を受けたことなども描いており、考えさせられる。本書の最終地点である1952年は、まだ沖縄が日本と分断されたままであり、その後どのように沖縄政策が移ろったのか、好奇心がくすぐられた。
日本占領が米国の占領行政の成功例というよりも、あくまでも「貴重な例外」であるんだなと認識を改めた。そして、戦後処理では無く戦争中の軍事占領にはじまり、(その初期の数年間は)既得権益の維持以外何も考えないまま軍事占領が継続された沖縄の扱いはあまりにも酷いなあと同情した。(だが、現在の沖縄政界やマスコミ...続きを読むの態度を正当化できるとは思わない)初期の民政局主導の民主化と後期のワシントン直轄の復興のいいとこ取りできたのは日本人にとってこの上ない幸いだったなと。(当時の日本人ががんばったのは承知の上で、敢えて『幸いだった』と思う。外部要因によるものが大きいので)そして、さらに言うと、ドッジ・ラインによる副作用を受けない時代に生まれ、改革の果実のみを受け取った世代に生まれて幸いだったなと。 そして、総合的に意味が無かったとは言わないし、日本人はそれを上手く使ってきた面が大きいとは思うが、それでもやっぱり素人が数日間ででっち上げた原案に基づく最高法規って何よ?とはやはり思う。
1945年から52年まで7年間におよぶ日本占領期の歴史。 当時の沖縄がどんな状況にあったかについてかなりページを割いており,役立つ。 占領期に日本の政治家がいかに主体的に行動したかも従来のイメージよりも強調されているように思われる。とくに片山哲とか芦田均とか西尾末広とか。中道から左派勢力の動きは...続きを読む非常に大事。 地味と言えば地味だが良書。
獨協大学教授(政治学)の福永文夫(1953-)による戦後占領期の国内政治史の概説。 【構成】 序章 占領した者とされた者 東京・ワシントン・沖縄 第1章 敗戦と占領 非軍事化、民主化へ 1 日本降伏からGHQの成立へ 2 戦後政治の起動 第2章 占領改革と政党政治の再出発 1 日本国憲法の誕...続きを読む生 2 公職追放から新生会議へ 第3章 中道政権の軌跡 1 片山内閣の誕生 日米「改革派」連合の形成 2 動揺する中道政権 求められる経済安定 第4章 占領政策の転換 民主化から経済復興へ 1 中道政権の限界 片山内閣から芦田内閣へ 2 ドッジ・ライン 日米「保守派」連合の形成 第5章 サンフランシスコ講和 占領の終結 1 講和への道 全面講和か単独講和か 2 米軍駐留容認と朝鮮戦争の激化 3 二つの条約締結へ 講和と日米安保 終章 占領と戦後日本 GHQ-SCAPによる日本占領は1945年8月から1952年4月までの6年8か月に及んだ。この間の多岐にわたる政治・行政改革が、独立後の日本に多大な影響を及ぼしたことは広く知られている。 本書の特色は以下2点である。 1点目:本土-沖縄を対比させながら、占領期の地理的な多面性を描き出したこと。 2点目:政治史の中心を吉田茂および自由党(民自党)単独ではなく、中道政権(片山・芦田政権)の二軸で描いたこと。 占領政策を米英ソ中を中心とした国際政治の中で位置づける場合、沖縄に対する米国軍部の主張は当然外すことはできない。著者と同じ五百旗頭門下のエルドリッヂが『沖縄問題の起源』で論じたテーマである。 しかし、一方で、沖縄で展開された軍政の内容を紹介するというのは、政治外交史・国際政治史の視点からは外れることが多い。本書ではこれを本土の占領政策と対比させることで、アメリカ政府の本土-沖縄への対応の違い、本土-沖縄間の経済復興状況の違いを際立させる。沖縄の記述量が著者の目的に対して十分であったのかは意見が分かれるところであろうが、本土が「間接的」に占領されていた意味を改めて考える機会にはなった。 2点目の特色であるが、これはあとがきでも触れられているように、著者が戦後初期の中道政権に強く興味を持っていることの表れであろう。民政局のホイットニー、ケーディスを中心にして、社会党政権への期待とテコ入れが強く行われていたことは周知の事実であるが、著者は民政局-社会党政権を「日米「改革」派連合」と呼ぶ。 中道政権への期待の中身は、政治的中立(保守反動への抑制と共産化への牽制)と経済安定施策の実行であった。本書では、組閣後すぐにインフレに対応できなくなり支持急落のきっかけとなった点、傾斜生産方式は第一次吉田内閣を引き継いだものである点、に言及しながらなぜか片山政権の経済政策については及第点を与えている。(評者にはやや甘い評価に見える)。 この改革派連合のほころびをめぐり、労働政策を中心に論じているのは、核心をついているだろう。当時の労働運動は1946年2月にゼネストを敢行しようとした官公労が中心であり、彼らの労働権を規定する公務員法、そしてその後の政令201号の制定はGHQの労働政策の転換点であり、国内占領政策における民政局の影響力の陰りを象徴するものであった。そして、支持基盤である労働組合の足並みがそろわないなか、中道政権は動揺し、再び吉田茂が首班指名されることとなる。強烈な痛みを伴うドッジ・ライン実行にあたって、安定した「日米「保守派」連合」が組まれることになる。 サンフランシスコ体制への架け橋として占領期を論じるのであれば、第5章のボリュームでは物足りない気がするが、国内世論の分裂と、安保締結によって得たもの失ったものが簡潔に紹介されている。近年の旧安保締結に関する研究は日米関係だけでなく、米英関係、ソ連、中共、国府など関係各国の動向を絡めることで多面的立体的な叙述を目指しているように見えるが、本書では日本側の講和準備の記述が過半である。 これを日本国内政治史という切り口で概観するという点で、本書のように手軽に読める新書が出るのは大変喜ばしいことであるし、その目的を達するだけの記述がなされている。本書のあとがきに即して言えば、「憲法体制」がいかに構築されたという点は十分に書かれている。その一方で、米ソ冷戦、とりわけ米国の東アジア戦略の中での位置づけという点は記述が淡泊であり、戦後体制のもう一つの軸である「安保体制」構築の持つ意味の訴求という点ではやや弱いか。
1945年10月のGHQの発足から51年9月のサンフランシスコ条約発効による独立回復までのGHQによる占領に関する新書。占領改革によって日本の「国体」が一方的に改造されて、GHQ謹製の日本国憲法を一方的に押し付けられたという「占領史観」が一部には根強いが、必ずしもそうではなく、婦人参政権の付与、労働...続きを読む組合法、農地改革などの改革は、戦前からの懸案であり、GHQに先んじて日本側からも改革が志向された。日米の合作で戦後史が始まったといえる。 ①ワシントンとGHQ、またGHQ内の対立 マッカーサーの統治は「アメリカによる占領」として一枚岩に捉えられがちであるが、それは必ずしも正しくない。占領国の最高政策決定機関としてワシントンに極東委員会が設置されていたが、極東委員会は憲法改正など日本の政治形態の基本的変更は含んでおらず、マッカーサーと憲法改正問題で激しく対立した。またGHQ内の抗争として民政局とG2の対立がよく取り上げられるが、民政局と経済科学局も対立していたようだ。 ②象徴天皇制と戦争放棄 当時の極東委員会は天皇制の廃止を求めていたが、マッカーサーは、天皇の存在が占領を円滑に進めるために必要と考え、天皇制の存続を求めていた。天皇制の存続は当時の幣原喜重郎首相と吉田茂外相の希望であり、また彼らは日本の再軍備を当時は望んでいなかった。幣原・吉田とマッカーサーの考えが一致した結果として天皇制の存続と戦争放棄がバーター交換されたのが実情のようだ。 ③ドッジ・ラインー「中間安定論」から「一挙安定論」へ 戦後の経済環境においてインフレが大きな問題となった。経済再建を巡っては2つの意見があり、インフレ抑制に主眼を置き一挙に安定実現をめざす「一挙安定論」と、引き続き生産増大に重点を置き、徐々にインフレ克服を目指す「中間安定論」との論争が展開されていた。当時の芦田内閣とそれを支持するGHQは「中間安定論」をとっていたが、ワシントンは「一挙安定論」に傾いており、中間指令のかたちで「経済安定九原則」を日本政府に実施させるようGHQに伝達している。それに伴い、ワシントンからジョゼフ・ドッジが来日、いわゆる「超緊縮財政」のドッジ・ラインが行われた。最近、ある本の中で「GHQが日本に緊縮財政を押し付けた」という趣旨のことが書かれていたが、「緊縮財政」はワシントンがGHQの頭越しに日本に押し付けていたものであり、説得力のある史観であるとは全く思えない。 他のレビューで書かれてあるとおりに、記述は淡々として面白みに欠き、副題は「東京・ワシントン・沖縄」であるが、沖縄のことはあまり書かれていない。そこが欠点だが、記述は概ね公平で内容は幅広い。これを読んでおけば大体の占領史の流れが理解できると思う。
確か日経新聞で好評だったから買った、のだと思う。 淡々とした事実の並びから、アメリカの都合と支配層の性善説と、日本の天然ぶりがよく見える。公職追放の影響度は甚大も、敵対的買収された先の管理職層がクビになったと考えれば全くおかしくない。それで堂々返り咲く鳩山家の生命力こそ異常。 もうひとつ、本書の...続きを読む特徴は沖縄の状況についても淡々と併記していること。2013年に現安倍内閣が定めた「主権回復の日」。本書では「サンフランシスコ講和条約が発効した4月28日、日本から分離された沖縄は、この日を「屈辱の日」として記憶することになった」。そりゃ沖縄の人は怒るわ。
昨今、本邦近代史の解説書は右か左に偏ったものが多い中で、中立的事実を淡々と記述した本書はむしろ占領下から現在へ続く日本の政治的動向を明らかにする。 護憲、護平和政党との自己宣伝が喧しい共産党は、戦後一貫して反米(=親中ロ)、反憲法の革命政党であった。(いつから護憲に変わったのか?) 社会党は内部...続きを読むのイデオロギー闘争により、不毛な分裂を繰り返す。 米国の占領政策は単に場当たり的なものだったが、悪気も反省もない。 朝鮮戦争勃発時の某米高官のコメント「(朝鮮戦争が)日本人を憲法九条による牧歌的空想から目覚めさせる」を始め、60年以上前と何ら変化のない状況に驚かされる。
アメリカの占領政策を政府、国会、官僚、市民運動家はどう捉えたか。 終戦前は大政翼賛会という形ではあるが、紛いなりにも国会は存続していた。終戦直後彼らが引き続き国政を担ったが、当然ながら急進的な占領政策を受け容れることはできなかった。 一方で、農地改革の前提となる小作人の窮乏は戦前から農水官僚らによっ...続きを読むて認識されていた問題であり、婦人参政権も平塚雷鳥らによって主張された問題であったと言う点で、戦前からの懸案を占領を背景として一掃したに過ぎないという見方もできる。 しかし、リベラルな占領改革はそういった人々の常識を超えていた。農地改革はより徹底して行われ、大企業は解体されようとした。一連の改革は片山哲社会党政権時にピークを迎える。 これらの改革は長続きするものでもなかった。アメリカからしてもこの改革は十二分にリベラルであり本国の反発が増大した他、吉田茂を中心として日本からの反発も強くなる。結局サンフランシスコ講和=日米安保という形で、自民党「保守」政治が形成されていく。 思うに、占領改革とその後の逆コースなど保守反動は一体であった。占領改革は日本における政策の選択肢を広げ、その後吉田茂らによって取捨選択が為された。そうして戦後体制が作られて行った。 終戦直後、という今でも(今だからこそ)真偽不明の怪情報が飛び交う時代について、抑制的に描いた参考すべき著作。
敗戦・降伏からサンフランシスコ講和条約までを対象とする「占領期」の通史としては、神田文人『昭和の歴史8 占領と民主主義』(小学館、1983年)以来久々の傑作。憲法改正や農地改革をはじめとする占領下の諸変革の立案・実施過程、冷戦の進行に伴うアメリカの占領方針の変容過程を具体的に示し、その間の国際関係...続きを読む、アメリカ本国と占領軍との関係、占領軍内部の抗争と日本国内の政治抗争との関係を過不足なく説明している。狭義の政治史にとどまらず、経済の変動や労働運動の動向にも注意している点も評価できる。 特筆するべきは、副題に「東京・ワシントン・沖縄」とあるように、従来の占領史では無視されるか、あるいは日本本土とは完全別個に叙述されることが多かった沖縄の占領史を、本土の占領と並列的・同時進行的に叙述していること。これによって、「ポツダム宣言」に基づく特殊な間接統治であった本土の占領と、ハーグ陸戦規則に基づく直接統治であった沖縄の占領を対比することができ、沖縄の分離過程と占領政策の転換の関係が理解しやすくなっている。 近年の占領期関連の研究は、戦前と戦後の連続性を過度に強調して占領改革を過小評価したり、「戦後民主主義」への反感を投影した客観性を欠いた叙述であることもままあるが、本書は戦後日本の出発点として、制約や限界も含めて占領改革を正当に位置づけているのも好感が持てる。講和前後における在日コリアンの地位問題のような旧植民地にかかわる問題への言及が不足している点はマイナスだが、現状では占領期の歴史を学ぶ上でまず手にとるべき良書といえよう。
まじめに史実を語っている。教科書的。しかし、戦後の7年間という、劇的に変化した時代を語るには多くのページ数が必要だろう。このころの日本の首相や各大臣は大変な思いをしてやっていたのだろう。
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